「きくのこ」を出ると、既に17時近く。今から、「光栄軒」に行けば、出遅れ必至。しかも、ある程度、お腹も満たされているし。だったら、もうあそこしかない。都合良く、京浜東北線で帰れるし。
ところが、嫌な予感は当たった。お店は開店していなかった。そうだった。この店は、こういうことが多々あった。いつもならば、ここで諦めて帰宅したが、この日はこれで収まらなかった。
「十条のお店に行くか」。
東十条から十条のお店まで、最短距離を通っても15分はある。ところが、自分は一度、東十条銀座までおりてから行った。つまり遠回したから、余計に時間がかかった。
十条店は営っていた。
そして店内は空いていた。4人の老人グループのみである。
適当なところに座った。小姐はいつかもいたグラマラスな若い女性だ。確か以前、なかなかオーダーを取りに来なかったから、業を煮やして店を出たことがあった。
実はこの日も、お客さんは少ないのに、なかなかオーダーをとりに来なかった。またかと思っていると、ようやく来た。またもやすんでのところだった。
「ホッピー」白と「餃子」を頼むと、小姐は「はい。お待ち下さい」と言った。その声は意外にも優しかった。
「ホッピー」を飲みながら、ぼーつとしていると、老人グループの会話が耳に入ってきた。彼らは、かつての会社の同僚らしい。自分が育てた部下が、現在の会社を背負って立っていることに不満と不安を口にしていた。彼らはとにかく、声が大きかった。店内は静かだったし、テレビがついている訳でもないから、もっと小さく話しても聞こえるだろうに。だから、話しが丸聞こえだった。ある老人が、もう一人に、スマホの話題をした。
「それ、機種は何?」
すると、尋ねられた老人は、「au」と答えた。尋ねた老人は、それで納得したのか、それ以上、追求してこなかった。
「餃子」が運ばれてきた。グラマラスな小姐は物腰も丁寧で、好感が持てた。悪い娘ではないし、むしろいい娘じゃないか。
「餃子」はパリッと仕上げられていて旨い。東十条店の「餃子」は、脂が多すぎて、ベチャッとしている。同じお店で、近隣なのに、こんなに違うなんて。あっという間に平らげてしまった。
さて、本来ならば、ここで〆なのだが、実はお腹がいっぱいになりつつあった。だから、最後は炒飯でもなければ、ラーメンでもなく、「ピータン」にした。
老人グループはしばらく何も追加注文もしないまま、声を大にして話し込んでいる。店内が空いているからいいようなもの。これでは単なる老害である。スマホの機種をauと答えた老人は、現役時代、恐らくたいした実績はあげられなかっただろうと思う。多分、いい時代だったんだと思う。右肩上がりのいい時代。
2杯の「おかわり焼酎」を飲み干して、さて帰ることにした。老人グループを横目にして。
会計は千円ちょっと。
グラマラスな小姐は、ここでも丁寧に接客してくれた。前回はどうも自分の早合点だったようだ。
電話でも、20mは聞こえるんじゃないかと思うようなでかい声で話す。耳が遠くなって自分の声も良く聞こえないから、デフォルトの声がデカくなるんだと思うよ。
年だからしょうがないとは思うけど、やっぱうるさいし、品はないんだよなあ・・・。
確かに、耳が遠くなって、声が大きくなるというのはあるね。総じて、老人の声は大きいよ。
ただ、電話の声の大きさは一概にはそうとも言えないかな。
うちのお袋、40代の頃から、既に声が大きかったよ。また、お袋だけでなく、親戚も大きかった。
その要因は今も分からないけれど、自分なりに分析したことがある。
ひとつはテンションを上げないといけない人には大きい声にする。
もうひとつは、電話(他のマシンについても同様だけれど、)の特性を知らないから、大きな声でないと相手に聞こえないだろうという思い込み。
田舎もんだから、機械を信用していなかったというのもあるかも。
テレビのドラマとかで、家のインターホンが鳴ったら、自分の家のインターホンが鳴ったと思って出てたし。明らかに我が家の音と違うのに。
自分らもそうならないように気を付けようぜ、師よ。
あと、よく考えると俺も電話の時、声でかいかも・・・。
諸々気をつけるよ。
自分らも、もうすでに爺さんの領域だからね。普段の振る舞いには気をつけないとね。
知らず知らずのうちに声も態度もでかくなって、スーパーのレジで声荒げちゃうとか、ないようにしないと。
テレビのインターホン、自分はまだ大丈夫だよ。