新橋駅を降りて、第一京浜に向かう。
烏森にはもう寄らない。新橋における立ち飲みラリーは一区切りがついたのだ。
ボクはひとり浜松町へと向かう。
ひっそりと暗いウインズを抜け、第一京浜に別れを告げた。
古い商店街のような通り。だが、もう今は往時の面影もなく、閑散としている。
だが、こういうところに立ち飲み屋が隠れていたりするから、チェックしておかなければいけない。
そんな期待も虚しく、商店街を抜けた。すると、よく知っている通りに出た。
自動車会館のある通り。
「そうか、ここまで来てしまったか」。
もはや、浜松町に片足を突っ込んでしまった。
ここから近い立ち飲み屋はあそこしかない。
「北前海鮮問屋 三番船 ハ印」。
かつて、訪問した際、1階が立ち飲みスペースになっていることを知り、再訪を誓ったお店である。
あれから約5年。ようやく約束を叶えられるときがきた。
この変わった名称の居酒屋が北前船の船主の子孫がオーナーであるということを、ボクはつい最近知った。
だから、北海道や秋田、山形の食材が並ぶ。
雰囲気のある扉をガラリと引き、1階の立ち飲みコーナーに足を踏み入れる。
白木のカウンターに、頭上には庇。背後には日本酒などの一升瓶が並ぶ。雰囲気がいい。気分がいい。
一軒家を改造した居酒屋は2階、3階がお座敷である。
誰もいない1階にポジショニングし、生ビール(480円)を頼む。
店長と思しき人はボクよりも若そうだ。
料理を見るだけで楽しい。
「北海道産!鮭のルイベ」(700円)
「身欠鰊」(480円)
それに「きりたんぽ」や「比内地鶏」など、山海の珍味が続く。
そうそう、ご当地グルメで一躍有名になった「横手焼きそば」(700円)は前回訪問時にいただいた。
目玉焼がのった焼きそばにボクらはしばし沈黙した。
北海道、秋田の珍味がメニューを彩る様子は見ているだけで楽しくなってくる。
本日のお刺身から、マグロブツをいただいた。ブツとは思えないボリュームと値段。
なんとも太っ腹な盛り方だろう。
生ビールをやっつけて、日本酒に切り替えた。
「飛良泉」。
肴は「出羽のじゅん菜」で。
関東地方の人間には北前船の認識は薄かもしれない。
北海道から日本海を通り、上方を目指したというこの船について、関東人のDNAにはほとんど刻まれていない。
だから、実のところ北前船と言われてもピンとこないのだ。
だが、その船の実態を調べると、大変興味深いものがある。
富山の昆布文化や、京都のだし文化の生成は北前船の存在なしでは語れないのではないだろうか。
したがって、和食を豊かなものにしたという点で北前船が演じた役割は大きかったといえるだろう。
現代に現れた北前船。
このメニューを見ただけで、かなりワクワクしてしまうのは自分だけではないだろう。
店長の方と談笑しながら飲むお酒。
ついつい、日本酒をおかわりして、浜松町の夜は過ぎていく。
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