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旅するランチ 010 - 過橋米線 - 「中国雲南酒膳坊 過橋米線」(千代田区外神田)

2014-03-26 22:32:03 | 旅するランチ

パパ友と話をしていた折、その人が雲南省少数民族の言語学者であることを知る。

その後、麗江の話題で盛り上がったことは想像に難くあるまい。

虎跳峡やトンパ文字、納西族の音楽会の話題はもとより、謎の漢方医、ドクター和の話を出したとき、パパ友は少し驚きの声をあげた。

「麗江を知っている人もあまりいないのに・・・」。

少しだけ嬉しくなった。

 

そのパパ友から教えてもらったのが、この店である。

ボクが懐かしそうに、昆明で食べた米線の話をしたところ、この店を教えてくれたのだ。

会社から10分弱で行けるロケーションということで、早速行ってみた。

 

米線とは米粉で作った麺であり、熱々のスープが特徴の、いわゆるラーメンである。

ボクは神戸発の船で出会った日本人から、教えてもらった昆明の有名店でそれを食べて以来、昆明滞在中は毎日そこに通った。

本当においしかったのだ。

スープは鍋いっぱいにはられ、湯面は油で覆われている。この油はスープの熱を閉じ込めるためにあり、そのスープにハムや野菜といった具材を自らぶちこむ。

熱々のスープに具材はほどよく煮込まれる。これが、雲南の名物「過橋米線」である。

スープは深い味わい。魚系や豚骨の臭いがしないので、恐らく鶏がらからだしをとっていると思うのだが、あっさりとしているわけではなく、鶏と、また別なだしのダブルスープと思われる。

実はこのスープが秀逸だった。丼ではなく、大きな鍋状の器になみなみ入ったスープをボクはほとんど残らず飲んだと記憶している。

昆明の駅から北に向かう大きな交差点の角にあったあのお店、今でもあるのかなとふと懐かしく思う。

「ミーシェン、イーバイな」と日本人イントネーション丸出しの者に普通に接してくれた店の人には今も感謝である。

 

さて、末広町の交差点をやや西に行ったところにある「過橋米線」に入り、店名と同じ「米線」を頼んでみたものの、正直、ボクが昆明で食べたものとは見た目も味もかなり違っていた。

スープの油の量、具材の種類、そして何よりもスープの味が違っていた。

ボクの記憶の中にある「過橋米線」がどんどん美化されてしまったのか、それともこのお店の「米線」が日本人用にアレンジされているのか、正直なところ分からない。

だが、味は確実に異なる両者であったと思う。

 

しかしながら、パパ友の教えてくれたこのお店の「米線」がおいしくなかったというわけではない。

丸麺の米線の喉越しは最高で、スープの味とマッチしている。

スープは鶏がらベースで、スープの濁り具合から豚骨も加えられていると感じる。やや塩辛いのが気にかかるが、日本のラーメンとは異なる独特の味わいだ。

 

これをすすりながら、ボクはあの昆明での日々を思い出していた。

日本人がいないドミトリーで、ボクは朝目覚めると決まって公園広場で行われている早朝の太極拳を見に行き、ボクも参加させてもらった。少し、お腹が減ってくると、近くのベーカリーでコーヒーとパンを注文し、その店の2階で侃々諤々議論するじいさんらの集団を横目で見ながら、贅沢な朝食を食べた。

なにしろ、それまでの2ヶ月間、中国でパンとコーヒーを食べさせてくれる店をボクは見たことがなかったのだ。

そうして、その後街をあてどなくぶらつき、昼ごはんに、例の「過橋米線」をゆっくりと食べ、息を吹き返すと、ボクはまた昆明の街に繰り出すのだった。

 昆明の市場は本当に痛快だった。

見たこともない生きた動物が売っていたり、闇商売する男どもが、公安の姿を見るやいなや、くもの子を散らす勢いで逃げていったり、「熱狗」とはホットドッグのことだが、実は本当に犬の肉でできたしろものではないかとボクは店の屋台の周囲をうかがったりした。

市場をうろつき、宿に帰ってくると、ボクはおもむろに短波ラジオの日本語放送を聞き、この時分に放送する大相撲中継を聞き入るのだった。

史上初めての兄弟対決による若貴の優勝決定戦が行われたのはこの頃のことで、ボクもラジオの前で妙に興奮したのを覚えている。

 

ともあれ、これらの思い出は、「過橋米線」の味とともに、ボクの記憶に刻まれることとなった。

それと同時に、雲南での淡い、まるで古傷が少し疼いてしまうような淡い恋を思い出してしまう。

 

ボクにこの店を教えてくれたパパ友は昨日の3月25日、1年間のサバティカルに入り、家族とともに日本をあとにした。

研究のため、香港へ向かったのである。

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2 コメント

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いいねえ (ふらいんぐふりーまん)
2014-03-28 18:21:06

雲南省。俺も行けば良かったよ・・・。

山歩きが趣味となった今なら、トレッキングとかもガンガン楽しめるだろうなあ。

米線というのは初めて聞いたけど、ビーフンとも違った雲南特有の麺なんだね。一度食べてみたいなあ。

しかし、そんなマイナーな麺が食べられる店が東京にあるのはすごいね。さすがだよ。

そして、これまたかなり珍しいと思われるお仕事である、雲南省少数民族の言語学者の方と、師が出会うという不思議・・・。

こういうことがあると、旅をして良かったと思うよね。

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Unknown (熊猫)
2014-03-28 22:49:15
師よ。
まだまだ、これからも行くチャンスがあるはずだよ。
雲南は絶対行こうぜ。

さて、米線だが、ビーフンの麺とも違うよ。強いていえばマロニーっぽいとでもいおうか。
けれど、マロニーはじゃがいもの澱粉が主原料というから、全く違うものではあるけれど、のど越し感と見た目はそんな感じだ。

世界は不思議に満ちていると思う。
まだまだ知らない食べ物がいっぱいあるんだろうね。
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