「もう一軒行こう」となって、N屋さんは大通りを素早く横断した。後を尾いていくと、店のにたたずむ女の子と交渉している。早いなー。
「いくらで飲み放題なの?」。
ガールズバーか。
自分、この手のお店って、自分のお金で行ったことがない。楽しくないんだよねー。若い子は話しが面白くなくて。そりゃ、20代の頃、初めて行ったキャバクラは楽しかった。40代になって、とある人に連れて行ってもらったら、ちっとも楽しくなかった。
「○○円でいいかな?」。
N屋さんが交渉すると、女の子は「聞いてきます」と言って店に消えて行った。しばらくすると、戻ってきて、「OKです」と言った。その子の後に続いて、我々も2階に上がった。
席につくと、「何を飲まれますか?」と尋ねられた。
N屋さんは、「母乳!」と答えた。一瞬、女の子は引いた感じがしたが、彼女らは笑ってやり過ごした。
「母乳はママにならないと出ないから。自分は牛乳で」と今度は自分の番。冗談のつもりで言ったが、女の子は「置いてないんですよー」と気怠そうに言った。すると、N屋さんは、「ひとっ走り買ってきてよ」と返した。N屋さんにお金を渡され、女の子は出て行った。
やがて、その子は帰ってきて、お釣りをN屋さんに渡そうとしたら、「とっときなよ」となった。そして、自分は牛乳を飲むことになったのだ。
N屋さんはことあるごとに女の子にチップを渡した。女の子たちはその都度、大喜びをした。N屋さんは手慣れていたし、女の子らをやたらと褒めた。女彼女らはその度に嬉しそうにした。
今日の飲み会はN屋さんなりのメッセージなのかなと思った。仕事ばっかりしてないで、たまには遊べよと。遊んで息抜きするのも仕事だぞと。で、遊ぶときはちまちましないで、楽しく遊べというメッセージ。
N屋さんはことあるごとにこう言っていた。
「自分の話術が錆びないように、時々キャバクラに行ってテストしてる」。コンサルをするN屋さんにとって、それは重要だし、社会の動きをガールズバーで知ることだってある。
1時間はアッという間に過ぎ、N屋さんは時間を延長した。
女の子たちは2人ともいい子たちだった。最近の20代の子はいい子ばかりだなと思う。ルールを守らないのは老人ばかりで、我々の世代も決して褒められたものではない。
自分は相変わらず、牛乳を飲み続けた。適度に酔いが覚めていくのが分かる。あまり、自分は盛り上がれなかったが、居心地はよかった。
N屋さんがいくら支払ったのかは知らない。でも、たまにはこういうのもいいのかなと思う。そんな夜だった。
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