十津川警部 「2月14日、あなたが焼津市の某自動車店で取材を終えたのが午後5時5分。それからあなたは、㈱Iサカの社員のクルマでJR焼津の駅まで送ってもらいましたね。駅に着いたのは5時17分くらいでしょうか。
それから、あなたは駅の券売機に向かい、東京行きの新幹線の手配をした。首尾よく6時11分に静岡を発着する『ひかり420号』の指定席が取れた。
さぁ、そこであなたはどうしようか、考えた。駅の窓の向こうには大衆酒場らしきものが見える。そこで、一杯やって新幹線に乗ろうか、と。しかし、今あなたは焼津駅にいる。静岡駅まで在来線に乗っていかなければならない。沼津行きは5時30分。静岡駅までの所要時間は12分だから、充分その電車で間に合う。だが、そのもう一本後の電車は5時59分。つまり、ひかり420号に乗るためには、5時30分の電車に乗らなければいけないわけだ。
5時30分まで残り時間は正味10分強。ホームまで行く時間も考えれば10分くらいだ。そこでまた、あなたは考えた。焼津で一杯やるより、静岡に賭けてみないか、と。つまり、5時30分の電車に乗れば、静岡駅に着くのは、5時42分。ひかり420号の発車まで29分も時間がある。だから、あの日あなたは焼津ではなく、静岡駅で降りて『生さくら海老』を食べたんだ」
熊猫 「馬鹿言っちゃいけませんよ。たった29分で居酒屋を探して、『生さくら海老』を食べられると思っているんですか?わたしは静岡駅に詳しい訳でもない。知らない土地で、そんなに都合よく店を見つけることができるんですかねぇ。しかも、あの日は強い雨が降っていた。そんな豪雨をついてまで、居酒屋を探す馬鹿がいますかねぇ」
十津川警部 「しかし、あなたはまさしくその馬鹿だ。定刻通りに在来線は静岡駅に着いた。時刻は5時42分。急いで改札を潜り、あなたは西口に出てみた。雨足は相変わらず、強かったが、傘を指して居酒屋を探した」
熊猫 「あの日、わたしは取材で静岡に行っていた。取材の日は荷物が多いんですよ。カメラに鞄。これらは、そんなに軽いもんじゃない。それを左手に持ち、傘を右手に差して、居酒屋を探す。こんな行動は尋常じゃない」
十津川警部 「だが、あなたはそれを実践した。そして、静岡駅を出てからものの見事に、一軒の居酒屋に辿りついた。あなたの素晴らしい嗅覚で」。
熊猫 「そんな都合よく店があるもんですかねぇ」。
十津川警部 「店の名前は『賎機はん兵衛』。この店の名前に覚えがありませんか?」
熊猫 「知りませんねぇ」。
十津川警部 「ともかく、あなたが在来線を降りて『賎機はん兵衛』に着くまで、その間、たったの3分ですよ。つまり店に入ったときはまだ5時45分だった。店に入ってあなたは、入り口手前のカウンターに座っている。それだけ、あなたは綿密に計算して、『生さくら海老』を食べようとしたんだ」。
熊猫 「ひかり420号に乗るためには、遅くとも6時5分には出なければならない。たとえ、往路で3分しかかかっていないと言って、復路で同じ時間に静岡駅に戻れるとはかぎらない。そうすると、実質、居酒屋の滞在時間は20分だ。しかも、注文して、『生さくら海老』が実際に供されるまでまた時間がかかるはずだ。その間、5分は見積もっていい。更には、お勘定だ。1分で住むときもあれば、お店が込んでいて時間がかかるときもある。注文、食べる、お勘定、を15分で済ますことは不可能だ。
十津川警部 「この日は大雨だった。そして時刻はまだ6時前。お客はあなたの他には一人しかいなかった。お店は空いていたんですよ。だから、『生さくら海老』は注文から2分くらいで出てきているんです。しかも、『生さくら海老』はその日のお薦めメニューだった。だから、準備も早かったそうですよ。5時47分には既に『生さくら海老』はあなたの目の前にあったはずだ。18分もあれば、食べて飲むことも充分可能だろう」。
熊猫刑事 「・・・・・」。
十津川警部 「お店の中では、河島英五さんの『酒と泪と男と女』が流れていたそうだ。あなたは、それを聞いて少ししんみりとビールをあおっていたそうだね。お店の方からも証言がとれている。あの日、あの時、あなたは、『生さくら海老』を間違いなく食べているんだ!」
熊猫刑事 「くっくっくっくく」。
「警部、素晴らしい推理だ。そうさ、オレはあの日、間違いなく、『生さくら海老』を食べているよ。そして、警部の推理の通りさ。だが、実際に『生さくら海老』を食べる時間は18分もなかったよ。オレは6時に店を出て、新幹線のホームに急いだんだ。途中、駅前の信号待ちにひっかかったりして、時間をロス。結局、ひかり420号にはギリギリで乗ったんだ」。
十津川警部 「何故、そんなことしたんだ」。
熊猫刑事 「我慢できなかったんですぅ(号泣)。次の日が米子に出張だったために、早めに帰京したくて、だから早い時間の新幹線に乗ろうとしたんですけど、どうしても『生さくら海老』が食べたかったんですぅ。うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
十津川警部 「在来線と新幹線の乗り換えの僅か20分の犯行か。『生さくら海老』も罪深い食べ物だな」。
それから、あなたは駅の券売機に向かい、東京行きの新幹線の手配をした。首尾よく6時11分に静岡を発着する『ひかり420号』の指定席が取れた。
さぁ、そこであなたはどうしようか、考えた。駅の窓の向こうには大衆酒場らしきものが見える。そこで、一杯やって新幹線に乗ろうか、と。しかし、今あなたは焼津駅にいる。静岡駅まで在来線に乗っていかなければならない。沼津行きは5時30分。静岡駅までの所要時間は12分だから、充分その電車で間に合う。だが、そのもう一本後の電車は5時59分。つまり、ひかり420号に乗るためには、5時30分の電車に乗らなければいけないわけだ。
5時30分まで残り時間は正味10分強。ホームまで行く時間も考えれば10分くらいだ。そこでまた、あなたは考えた。焼津で一杯やるより、静岡に賭けてみないか、と。つまり、5時30分の電車に乗れば、静岡駅に着くのは、5時42分。ひかり420号の発車まで29分も時間がある。だから、あの日あなたは焼津ではなく、静岡駅で降りて『生さくら海老』を食べたんだ」
熊猫 「馬鹿言っちゃいけませんよ。たった29分で居酒屋を探して、『生さくら海老』を食べられると思っているんですか?わたしは静岡駅に詳しい訳でもない。知らない土地で、そんなに都合よく店を見つけることができるんですかねぇ。しかも、あの日は強い雨が降っていた。そんな豪雨をついてまで、居酒屋を探す馬鹿がいますかねぇ」
十津川警部 「しかし、あなたはまさしくその馬鹿だ。定刻通りに在来線は静岡駅に着いた。時刻は5時42分。急いで改札を潜り、あなたは西口に出てみた。雨足は相変わらず、強かったが、傘を指して居酒屋を探した」
熊猫 「あの日、わたしは取材で静岡に行っていた。取材の日は荷物が多いんですよ。カメラに鞄。これらは、そんなに軽いもんじゃない。それを左手に持ち、傘を右手に差して、居酒屋を探す。こんな行動は尋常じゃない」
十津川警部 「だが、あなたはそれを実践した。そして、静岡駅を出てからものの見事に、一軒の居酒屋に辿りついた。あなたの素晴らしい嗅覚で」。
熊猫 「そんな都合よく店があるもんですかねぇ」。
十津川警部 「店の名前は『賎機はん兵衛』。この店の名前に覚えがありませんか?」
熊猫 「知りませんねぇ」。
十津川警部 「ともかく、あなたが在来線を降りて『賎機はん兵衛』に着くまで、その間、たったの3分ですよ。つまり店に入ったときはまだ5時45分だった。店に入ってあなたは、入り口手前のカウンターに座っている。それだけ、あなたは綿密に計算して、『生さくら海老』を食べようとしたんだ」。
熊猫 「ひかり420号に乗るためには、遅くとも6時5分には出なければならない。たとえ、往路で3分しかかかっていないと言って、復路で同じ時間に静岡駅に戻れるとはかぎらない。そうすると、実質、居酒屋の滞在時間は20分だ。しかも、注文して、『生さくら海老』が実際に供されるまでまた時間がかかるはずだ。その間、5分は見積もっていい。更には、お勘定だ。1分で住むときもあれば、お店が込んでいて時間がかかるときもある。注文、食べる、お勘定、を15分で済ますことは不可能だ。
十津川警部 「この日は大雨だった。そして時刻はまだ6時前。お客はあなたの他には一人しかいなかった。お店は空いていたんですよ。だから、『生さくら海老』は注文から2分くらいで出てきているんです。しかも、『生さくら海老』はその日のお薦めメニューだった。だから、準備も早かったそうですよ。5時47分には既に『生さくら海老』はあなたの目の前にあったはずだ。18分もあれば、食べて飲むことも充分可能だろう」。
熊猫刑事 「・・・・・」。
十津川警部 「お店の中では、河島英五さんの『酒と泪と男と女』が流れていたそうだ。あなたは、それを聞いて少ししんみりとビールをあおっていたそうだね。お店の方からも証言がとれている。あの日、あの時、あなたは、『生さくら海老』を間違いなく食べているんだ!」
熊猫刑事 「くっくっくっくく」。
「警部、素晴らしい推理だ。そうさ、オレはあの日、間違いなく、『生さくら海老』を食べているよ。そして、警部の推理の通りさ。だが、実際に『生さくら海老』を食べる時間は18分もなかったよ。オレは6時に店を出て、新幹線のホームに急いだんだ。途中、駅前の信号待ちにひっかかったりして、時間をロス。結局、ひかり420号にはギリギリで乗ったんだ」。
十津川警部 「何故、そんなことしたんだ」。
熊猫刑事 「我慢できなかったんですぅ(号泣)。次の日が米子に出張だったために、早めに帰京したくて、だから早い時間の新幹線に乗ろうとしたんですけど、どうしても『生さくら海老』が食べたかったんですぅ。うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
十津川警部 「在来線と新幹線の乗り換えの僅か20分の犯行か。『生さくら海老』も罪深い食べ物だな」。
何かに追われてるようなツラして、
まっしぐらにあの店に入ってったもん。
俺、とりあえずは一応声かけてみたん
だけど、まるで耳に入ってなかったもん
ね・・・。
ただ、面白い人なんだってねあの人。
あの時の事について、小説だかなんだか
書いたんだって?それがまた、なんか
面白いらしいじゃねーの。
俺も読んでみてーなー。ま、普段は小説
なんか読まないんだけどね、俺。
ただ、俺がそこに出てるかな、なんて
思ってさ・・・。
刑事さん知らない?俺が出てるかどうか。
ビール2杯飲みながら、全部で6品というとろろ懐石を食べ終え(お店の人をせっついて最後に出されたデザートで既に残り10分)、
その後ロータリーでお土産もダッシュでもらいに行き、
ダッシュで改札へ行き、
ギリギリ新幹線に乗る・・・
という事を、1時間でやった阿呆がここに居ります・・(笑)。
犯行当夜の様子は参考になりました。
容疑者の凶行が、これでおおかた立証された格好です。
できれば、法廷でも証言頂ければ幸いです。
なお、小説については、分かりかねます。
そうした記録があれば、裁判にて使用されるものと思われますので、開示請求してみてはいかがでしょうか。
まき子さんのお話しは覚えています。
読者の皆様、
http://tkyw.jp/archives/002302.php
を参照下さい。
静岡は何故か大忙しのようです。
てっきり、そのまま中国でGW過ごすのかと思っていましたよ。
文中にもありますが、実際「生さくら海老」を食べた時間は10分くらいだと思います。
焦って食べると、味もなにも分かりません。もうこんなことはコリゴリです。
自分は家でくすぶってます!
わたしはゴロ寝ウィークだったよ。
確かに、わたしも中国では生もの食べたことないなぁ。
ちなみに、町の食堂で鶏肉の食べ物を注文したとき、厨房の奥の方でトリノ断末魔をよくきいたよ。
鶏は新鮮なんだよね。