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「ミナミカワ」の雰囲気にいたたまれず、ボクは店を出た。
まだ飲み足りなかった。
よし、もう1軒行くか。
天神橋の街の雰囲気はよかった。
下町っぽさが残る落ち着いた風情である。
ちょっと歩くと、早速酒場が見つかった。
店の入口近くに陣取った集団が、「乾杯!」をしているがみえる。
立ち飲みではなかったが、ちょっと洒脱な雰囲気が魅力的に映った。
入ってみようと思った。
カウンターに通され、ボクは椅子に腰かけた。
大阪らしくない整然とした店だった。酒肴も工夫がされた気取ったものを用意しているようだ。
東京だったら、ひとりでは絶対に入らない店。
メニューを見る。
「板わさ」(280円)に「ねぎみそ」(380円)。
蕎麦屋か?しかし、値段はそんなに高くない。
「とり肝の山椒煮」(280円)
「烏賊なめろう」(480円)。
どれも上等じゃないか。
これは日本酒だな。
しかし、日本酒のメニューを眺めてもさっぱりピンとこない。
そこで、お店の人に相談をした。
「からい酒をください」
そうして、選んでもらったのが、「ど辛」。
そのまんまじゃないか。
一升瓶を見せてもらう。
「セクスィー山本酵母」と書かれている。
日本酒界の沢村一樹さんなのか。
あてをどうしようか。
メニューを繰る前に単独で書かれたおすすめのメニューを見つけた。
「黒毛和牛すじ肉の塩煮込み」(480円)。
これが、この店「にこ」名物なのだという。
ご丁寧にメニューにはイラストで盛り例が描かれている。
煮卵が強烈なインパクトを与える。そういえば、「ミナミカワ」の煮込みにも卵が入っていた。これが大阪の煮込みの伝統なのか。
「ミナミカワ」で煮込みを食べ損ねた。ここでそのリベンジをしよう。
酒も煮込みも本当においしい。
塩味の透明スープ。出汁は鶏出汁か。すっきりしていて、爽やかである。繊細で、大阪らしくない味わいだったが、「ど辛」の辛さとほどよく調和して、それぞれの旨みが増す。
すごい。
あっという間に1合を飲み干し、次の酒を選んでもらった。
「澤屋 まつもと」。
これも辛口の純米。
あては「とり肝の山椒煮」。
おいおい、またしても酒とあてのハーモニーがすごい。
互いを引き出す、それぞれの味わい。計算づくなのか、それとも偶然なのか。
しかも、あてにひと手間入れているのに、この値段。
恐るべし、「にこ」。
ここは1回の来店だけでは理解できない。
2回も3回も通って、全てのあてと酒の調和を愉しみたい。
久々に出会った大ヒットの居酒屋だった。
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