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居酒屋放浪記 NO.0022 ~豊かな日本の食と深遠なる刻 <前編> ~「那由多」(所沢市東町)

2005-06-15 23:13:16 | 居酒屋さすらい ◆地方版
  「那由多」・・・。
  この一風変わった聞きなれない言葉に「極めて大きな数量」という意味があるだなんて知らなかった。広辞苑によれば「10の60乗」なんていう天文学的な数字も具体例として記されている。どうやら古代インドの梵語のようだ。ともあれ、とてもきれいな響きの言葉である。

 所沢駅西口を出て、退廃的な商店街を終わりまでゆく。その先のパチンコ屋の裏を抜けるとだだっ広い駐車場の向こうにぽつねんと灯る赤提灯。がらりと戸を開けると作務衣姿のよく似合う店主の林義孝氏が半年前に脱サラしたとは思えない居ずまいで迎えてくれた。

  店内は向かって右がカウンター、左は小上がり2つ。奥にも少々広い座敷が用意されている。元々、居酒屋だったお店をそのまま利用したという店内。カウンターなど林さん自ら修繕したという。少々、古臭い趣もあるが、落ち着いたいいお店である。

  カウンターの上にある保冷機には鯵が2尾。その隣の水槽にはどぜうが泳いでいる。いずれも今朝、東久留米の市場で仕入れたものとのこと。「初めて市場に行ったときは勝手がよく分からなくて。作務衣を着ていくようになってから、那由多の名前を覚えてもらい、いい食材を分けてもらえるようになったね」。脱サラ後の店を構えた苦労が偲ばれる。

  この日はとても蒸し暑く、いよいよ入梅も目前か、という気候。カラカラに干上がった喉が麦酒を欲している。チンチンに冷えたジョッキに注がれた生ビールは泡が細かく、入念に注がれたものだと一見して分かる。ご存知の通り、ビールの注ぎ方は意外と難しい。もっともサーバーの問題もあるが、なにより注ぐ人の真心に拠るところが大きい。ビールの淹れ方は、店を写す鏡といってよいだろう。

  お通しは「豆腐」。「何も付けずに食べてみて」という林さんの言葉を信じ、口にしてみると、うんうん、確かに甘い。醤油を垂らさずとも、しっかりとした味がある。豆腐そのものも簡単には崩れない。しっかりとした味に奥行きのある酒飲みにはぴったりの豆腐だ。

《続く》

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