今となっては信じられない話だが、東京ディズニーランドの開園時、「お弁当の持ち込み禁止」がひとつの争点になっていた。
「お弁当持ち込みダメなんだって」「なんで?」「信じらんねぇよ」っていう感じである。
ボクらの世代(昭和40年代生まれ)より前の人間にとって、こういう場所に行くときはお弁当を持っていくことが前提にあったのだなと改めて思う。
あれから30余年、その牧歌的な時代はとうに過ぎ去り、TDLはもちろん、行楽には「お弁当なし」が当たり前の時代になった。お弁当問題はまぁいい。だが、今のボクにとって、ビールが飲めないことが大問題である。
だから、38回もTDLに行っているのに、どうもあのねずみの国が好きになれないのだ。
だが、ディズニーシーにはお酒がある。
楽園にお酒があるのとないとでは、気持ちの入り方が全く違う。
禁酒法の世界とそうでない世界。もちろん前提は楽園。規制と秩序の世界観。
ボクらはその実験場にいるのだ。
ボクにとって、今回が3回目のディズニーシー。ボクは必ずここで一休みをする。
「ミゲルズ・エルドラド・キャンティーナ」。
ロストリバーデルタのメキシカンフードの店だ。
なにしろ、広い。だから、いつ行っても席には余裕がある。
「トルティーヤチップス」(420円)に、キリン生ビール(580円)を飲みながら、1階の川べりで優しい風に吹かれていれば、気分はもう旅だ。
コロナビールもあるが、ボクはそれを好まない。
どこからか、楽隊の音楽が聞こえてくる。ちょっとした喧騒もここでは心地よい。
ビールのもらい方が面白い。
通常の会計でビールを頼むとコインがもらえる。そのコインを持って、会計の対面にある小屋に行くと、ビールを引き換えてくれる。
そのコインがまた嬉しい。なんか、お宝をもらった気分で。
近年、居酒屋がテーマパーク化していると思う。
駄菓子屋風のレトロをテーマにした店から、忍者屋敷風、監獄風、最近ではウルトラマンの怪獣がいる居酒屋など。
だが、その予定調和の疑似体験酒場とディズニーリゾートは違う。
このテーマパークに入ってしまえば、それは全てリアルなのだ。
壮大なリアル。それはロールプレイングのゲームの中にいる自分に似ている。
だから、この店の風雨に晒された感じの店構えも、それはフェイクではない。
リアルなのである。
伝説の黄金郷なんて本当にあるのだろうか。
そんなものはなくてもいい。
ボクにとっての黄金は、黄金色に輝くビールに他ならないから。
テリヤキポーク・タコス(590円)が食べたくなった。
もちろん、ビールをおかわりしよう。