栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

日本酒は悪酔いする?

2008-12-07 13:36:22 | 視点
 昨朝、西日本一帯は降雪したようだ。
福岡市内でも10時前後、降雪が見られたので、喜び勇んで外に出て写真を撮ろうとしたが、すぐやんでしまった。
 最高気温は7℃。道行く人もしっかり防寒対策をし、首を縮めて通り過ぎるなど、急な冷え込みに皆さん戸惑っているようだった。

 こんな夜にはやはり熱燗が欲しくなる。
温かい飲み物なら焼酎のお湯割りでもいいようなものだが、体の温まり方というか、温まった後の冷え方が日本酒の方が遅いように感じる。

 やはり燗を付けた日本酒を盃で呑むのがいい。
適度に体が温まっていく。
ところが最近、日本酒はあまり人気がない。
人気があるのはどこに行っても焼酎だ。
岡山県や広島県など本来、日本酒文化だった地域でさえ、最近は皆、焼酎を飲む。
これには少々ビックリする。

 日本酒嫌いは特に女性、若い男性に多い。
女性に嫌われた商品は流行らないというのが通説だから、日本酒の売り上げが右肩下がりで下がっているのは当たり前だろう。
 しかし、日本酒にしてみれば、いわれなき嫌われ方で、なぜ嫌われるのか理解できないに違いない。

 そこで、日本酒は嫌いという女性に理由を尋ねてみた。
「日本酒は悪酔いするから」
これが返事だった。
 二日酔いの頭の痛さを一度でも経験した者なら、もう二度とあんな経験はしたくないと思うのはよく分かる。
 かくいう私も昔は日本酒嫌いだった。
あんなものは絶対飲みたくない、と思っていた。
実際、家でも外でも日本酒は飲まなかった。
それがいまではすっかり日本酒ファン。
おいしい日本酒を買っては家で呑んでいる。

 では、なぜ日本酒嫌いから日本酒大好きに変わったのか。
実はこの変身は一夜にして行われたのだ。
ある時、居酒屋で知人に日本酒を勧められたが、「日本酒だけは勘弁してくれ。悪酔いする。旨くない」と断った。

 すると知人いわく。
「君が呑んだ日本酒はサンゾウシュで、本当の日本酒ではない」
なに「サンゾウシュ?」「本当の日本酒ではない?」
たしかに2級酒で、特級酒はほとんど呑んでないからな~。
だけど「サンゾウシュ」って何?
訳の分からないことを言う奴だ。

 その後の友人の説明で「サンゾウシュ」は「三増酒」と書くということが分かった。
三倍に増やした酒ということだ。
酒の水増しである。
ただ、水を加えて薄めた訳ではなく、他のものを加えて容量を増やしたのである。
他のものとは醸造用アルコール、糖分など。
これが二日酔い、悪酔いの元だったのだ。

 しかし勝手にそんなものを加えて容量を増すのは誤魔化し、違反ではないか、と思うが、きちんと認められた正規品というから驚き。
 詳しい説明は省くが、日本酒が大きく変わったのは戦後で、物資不足のために醸造用アルコールや糖分などを加えて「水増し」することを法律で認めてしまったのだ。
 戦後すぐの時代は工業用アルコールを酒の代わりに呑んで体を壊した人が結構いたらしく、それなら原材料(米)も不足しているし、と醸造用アルコール他を加えることを認めたわけだ。

 戦後長く、この制度のままできたが、昭和50年代の酒税法の改正で、等級制から品質表示制に代わり、従来の特級、1級、2級という表示は廃止。
代わりに導入されたのが吟醸(純米吟醸)、純米、本醸造という品質分類。
価格は吟醸、純米、本醸造酒の順で安くなっている。

 問題は本醸造酒で、醸造用アルコールが加わえられたものがこの名称になっている。
価格も安く大衆酒である。(正確にいえば、本醸造酒がすべて大衆酒とは限らず、価格の高いものもある)

 いずれにしろ、二日酔い、悪酔いの原因物質は醸造用アルコールである。
つまり純米酒あるいは純米吟醸酒を呑んでいる限り、翌日スッキリ、悪酔いはなしなのだ。
 ところが、いまだに日本酒は悪酔いするという昔の感覚、噂が残っているから、日本酒呑まず嫌いという人が多い。

 とはいえ、私は外ではほとんど日本酒を呑まない。
その理由はいくつかあるが、そのうちの一つは本醸造酒を出されることが多いからだ。
 特に宴会などで出される酒は皆、本醸造酒。
これをガンガン呑むから翌日は頭がズキズキして起きられないということになる。

 日本酒を呑むときは純米酒かどうか確かめて、あるいは純米酒を指定して呑めば、絶対悪酔いはしないので、これからの季節、日本酒をおいしく味わって欲しい。



白ワインのようにさわやか「ちくご亀游(きゆう)1.8L」 白ワインのようにさわやか「ちくご亀游(きゆう)1.8L」
池亀酒造の純米吟醸酒