栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

発言に一貫性がない渡部恒三氏だが、その発言から読めるものは

2010-08-21 22:06:17 | 視点
 政治家にふさわしくない人物というのはどの政党にもいるものだが、民主党では渡部恒三氏がその筆頭だろう。
 なぜかって? それは彼が政治的な問題でなにか発言したのを聞いたことがない、というのは言い過ぎにしても、マスコミが渡部氏の発言を取り上げる場合は必ず小沢一郎氏がらみ以外にないからだ。
 政治家ならもう少しまともな発言をしろ! と言いたくもなる。

 まあ、もとはといえば渡部氏を「黄門様」などと持ち上げたマスコミが悪いのだが、この人物、本当に民主党議員なのかと疑いたくなる。
 というのも、「小沢憎し」の一点のみで発言しているものだから、どうかすれば民主党の弱体化、分裂を画策しているではと疑いたくなることさえある。

 しかし、発言をじっくり聞いていると民主党内の動きも分かってくる。
例えば7月15日のBS番組収録で「9月に小沢君、堂々と立候補したらいいんじゃないか。菅君も堂々とやれ」と発言。続けて「負けた方は勝った方に全面的に協力する。これが民主主義政党」と。

 それが今日(8月21日)は「小沢氏は出馬すべきではない」と、発言を180度引っ繰り返した。
「首相がコロコロと代われば世界から日本が信頼されなくなる。菅首相が頑張ることが日本のためだ」
「首相になると検察は小沢氏を起訴できなくなる。彼が今、首相になるというのは、悪いことをした人間を政治がかばうことになる」
 とまで言っている。

 こうした発言を国会議員がするとは見識を疑ってしまう。
以前にも書いたが、法の原則は「推定無罪」である。
何人も起訴され、有罪判決を受けるまで「無罪」というのが法の原則である。
これが守られなければ国民は安心して生活できない。
 例えば最近問題になっているのが電車内の痴漢事件。
逮捕された時点で(被告でもないのに)犯人扱いされ(マスコミ報道でも)、本人の人権はゼロになっている。
 中には長い時間をかけて無実を訴え、無罪判決を受けた人もいるが、その場合でも「犯人扱い」されたことで退職に追い込まれたり、その後の人生を台無しにされている。

 いわんや小沢氏にかけられた嫌疑は本当に「大悪人」か。
法治国家というのは良くも悪くも法に基づいて行われる国家体制である。
それを好きとか嫌い、いわんや悪人面だからというような感情で判断されたら、それこそ独裁国家と変わりなくなる。
にもかかわらず渡部恒三氏は常に感情で発言しているところが気になる。
 もし、渡部氏が「推定無罪」という法の精神を理解しながら、なお発言しているとすれば、彼の方こそ国会議員の職にとどまるべきではないだろう。

 さて、7月の段階で民主党代表選に「小沢君、堂々と立候補したらいいんじゃないか」と言っていた発言が、8月21日になると「小沢氏は出馬すべきではない」と変えた背景には何があるのか。
 考えられる理由はただ一つ。
菅首相の形勢が不利になったからだろう。
それまでは菅首相の続投と高を括っていたのが、代表選間近になり小沢擁立論が思いの外、数を増してきたことに対する危機感の表れととれる。

 う~ん。やはり菅さんの一番の問題は政策が見えないことだろう。
何をやりたいのか、この国をどうしたいのかがはっきり見えないのだ。
「あなたが首相になって何が変わるの」
「それは首相が替わったということだけです」では困る。

 国民が求めているのは「理念を持ち」、「リーダーシップを発揮」して、この国を導いていく首相である。
 残念ながらいまの民主党若手議員(現閣僚を含め)の中にこうしたリーダーはいない。