労働基準法第39条の定めによれば、年次有給休暇(以下、本稿では「年休」と略す)は、まず6か月後に発生し、その後1年ごとに発生していくものとされている。
ところが、実務においてこの条文通りに運用しようとすると、採用日が異なる従業員それぞれについて年休発生日も異なることになるので、年休管理が煩雑になってしまう。そのため、全従業員一律の基準日を設けてその日に一斉に年休を発生させることとしている会社も少なくない。
しかし、この「基準日方式」は、事務の簡略化とミス防止に一定の効果があるものの、気を付けなければならない点もあるので注意を要する。
まず、労働基準法が定める条件を下回る(労働者にとって不利になる)ことは許されない。例えば、年休発生基準日を「4月1日」としている会社において、前年9月1日に採用した従業員については、本来3月1日に10日の年休が発生するべきところ、基準日到来まで間もないからと言って「発生させない」とか「2日だけ発生させる」などとするのは、違法だ。
また、年休発生基準日を設けると、初回年休発生までの期間が6か月より短くなることが考えられるが、その場合に「出勤率8割以上」という条件を付するのは労働者にとって不利となるので、算定期間中はすべて出勤したものとみなさなければならないこととされている(平6.1.4基発第1号)。
とは言え、そういう扱いにすると、「まだ勤怠状況がどうなのかも分からない採用したばかりの新入社員にも、自動的に年休が発生することとなってしまう」という懸念もあるだろう。これを解決するには、「初回の年休発生についてだけは法定通り6か月後とし、その後については基準日を用いて発生させる」という方式がお奨めだ。
なお、年休発生基準日を設けた場合は、その旨を就業規則等に明文化しておく必要がある。
そして、基準日方式の導入が従業員にとって不利益変更とならないようにしなければならず、そのため、導入初年度に限っては、次年度年休を前倒しして発生させるしかないことも、承知しておきたい。
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