自社の従業員に係る労務管理に関して会社が責任を負うのは当然のことだが、自社で雇っていない者との労務問題においても、会社の責任を問われることがある。
まず、法律上明文化されているものとしては、労働者派遣法第44条に定める「労働基準法等の適用に関する特例」が挙げられる。
これは、派遣労働者の雇用主は派遣元事業主であるところ、労働時間管理や安全衛生の確保などについては派遣労働者保護の実効を期する上で派遣先事業主に責任を負わせるのが適切であることから、労働基準法・労働安全衛生法・育児介護休業法等の一部については派遣先事業主を使用者とみなして適用することとしているものだ。
例えば、公民権行使の保障、安全衛生教育、ハラスメント防止策といったものは、派遣労働者に対しても派遣先が責任を負う。
そしてこのことは、損害賠償や安全配慮義務といった民事的な責任も伴うことも承知しておくべきだ。
また、下請け会社の社員に対しても、使用者とみなされるケースがある。
過去の裁判例を見ると、裁判所は「当該労働者の基本的な労働条件等について事業主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配・決定することができる地位にある場合には使用者に当たる」(最三判H7.2.28;趣旨を変えずに一部改変)という立場を採っており、限定的とは言え、その責任が無いわけではない。
今後、雇用形態が複雑化するにつれ、「雇用に準じた関係」にも労使関連の法令や判例が適用されることが多くなってくるのは容易に推察される。
「自社で直接雇用していなければ責任を負わない」とは考えるべきではないだろう。
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