厚生労働省が不適切な調査データを用いていたことをきっかけに、「働き方改革関連法案」から「裁量労働制の適用拡大」に関する項目は削除された。これは、現行の労働基準法で一部の職種に対して認めている裁量労働制について、その適用対象職種を、
①課題解決型提案営業(例えば「顧客ニーズに応じた新商品の開発・販売」等)、
②事業運営に関する事項の実施管理とその実施状況の検証結果に基づく企画立案等を
一体的に行う業務(例えば「全社レベルの品質管理計画の立案」等)
にも拡大しようとしていたものであった。
そもそも、「裁量労働制」とは、文字通り、業務の遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねるものであるので、会社(上司)は、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、具体的な指示をしてはならないこととなっている。
しかし、現状を見れば、これを正しく理解できていない(あるいは、知っていながら悪用している?)会社も多い。そこで、現行の裁量労働制に関して誤解されやすい点を、いくつか具体例を挙げて解説してみたい。
① ミーティングに出席させることはできるか
時間を決めてのミーティングに出席を命じることはできない。もっとも、そのミーティングに出席しようがしまいが、成果に影響が出たなら、それを評価の対象とするのは可能だ。
② 休日出勤を命じることができるか
労働契約(労働協約や適法に制定された就業規則を含む)に根拠規定があれば、休日出勤を命じることができる。もちろん、その分の休日勤務手当は支払わなければならない。
また、「休日の振替え(出勤日と休日とを入れ替える)」も、根拠規定があれば理論上は可能だ。「理論上は」というのは、振り替えられて出勤することとなった日(元の休日)の出退勤時刻を会社が指示することができないので、実務的には意味が無いかも知れないという意味。
③ みなし労働時間(労働したものとみなされる時間数)は誰が決めるのか
現行の「専門業務型裁量労働制」では過半数労組または過半数代表者との労使協定により、「企画業務型裁量労働制」では労使委員会の決議により、すなわち労使が話し合って決めることとなっている。 必ずしも法定労働時間(週40時間)とするべきものではない。
本来、裁量労働制が正しく運用されれば、労働者は自分のペースで自由かつ効率的に働くことができ、また、“時間”でなく“成果”によって正当に評価されることで、従事者自身の納得感も高まる。実際、それで働きやすくなったという実例も多く見聞きしているところだ。
会社は、「残業代を支払わずに済む」などといった“よこしまな”考え方ではなく、真の“生産性”を高めるために、この制度の活用を考えるべきだろう。
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