新規学卒社員の配属先については、採用内定を出した時点では、未定であるか、あるいは、決めていたとしても本人には告げていないのが通例だ。そして、特に大企業にあっては、入社時には仮に「人事部付」などとしておき、一定の研修期間を経た後に(その間に適性を見て)正式な配属先を決める会社が多いようだ。
ところで、基本的に、会社は、新入社員の配属先を決定する権限を有している。これについては、就業規則等に明文化されていれば間違いないが、仮に記載が無かったとしても、「人事権」は、「経営権」の一環として一般的に認められているところだ。
とは言うものの、会社は、それが「権利の濫用」として無効とならないよう、注意を払う必要もある。
最も気を付けたいのが、「内定の時点で配属先を告げていた」というケースだ。求人票に業務内容や就業場所を書いている場合は元より、面接中にこれらを期待させる発言があった場合などは、職種限定または勤務地限定の労働契約が成立したと見られ、本人の同意なくそれと異なる配属を命じることはできない可能性もある。
過去の裁判例では、採用面接時に本人が申し出た勤務地限定の希望を当時の採用担当者が承諾していたことをもって配転命令が無効とされたケース(大阪地判H9.3.24)等がある。
また、その配属命令を受けた新入社員にとって甘受できないほどの大きな不利益がないかどうかも考慮に入れておかなければならない。
ことに、子どもの養育と家族の介護に関しては、育児介護休業法第26条により配慮が義務づけられているので、注意したい。「新入社員だからこれらには関係ないだろう」との先入観を持つことは危険だ。
無論、人選に妥当性が無い場合もしくは不当な動機や目的が有る場合(労働組合活動をしたことや公益通報を行ったこと等を理由とするもの)は論外だ。
いずれにしても、配属命令は、「適材適所」もしくは「適正なキャリアパス」の観点から合理的であるべきであり、加えて、訴訟対策としては、その根拠が明確に示せるような資料(例えば、「面接や研修における成績表」や「ジョブローテーションモデル」等)を用意しておくべきと言える。
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