この4月1日から障害者雇用促進法が改正施行された。今般の改正は、障害者差別解消法(平成25年法律第65号)の施行と相まって、「障害者差別の禁止」と「合理的配慮の提供義務」の2つが大きな柱とされている。
まず、「障害者差別の禁止」については、
(1)労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない(改正法第34条)、
(2)賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない(同第35条)こととされた。
なお、労働能力などの適正な評価によって採否を決定したり賃金等に差異を設けたりすることや、著しく労働能力の低い者について都道府県労働局長の許可を受けて最低賃金額より低い賃金を設定すること、あるいは、積極的差別是正措置として障害者を有利に取り扱うこと(ポジティブアクション)は、ここで言う「差別」には該当しない。
さて、企業経営者にとっては、「合理的配慮の提供義務」の方が問題となりそうだ。
労働者の募集及び採用について、障害者から申し出があったら、均等機会確保の支障となっている事情を改善する措置を講じなければならず(改正法第36条の2)、採用後は、施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない(同第36条の3)。
誤解しがちだが、これらは、「努力義務」ではなく、「義務」とされる。罰則規定こそ無いものの、都道府県労働局の指導や勧告の対象であり、また、トラブルに発展した場合には義務を果たしていないことだけで訴訟において不利になるので、甘く見るのは危険だ。
ただし、これに関しては、「事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」という例外規定が設けられている。
過重な負担であるかどうかは、次の6要素を総合的に勘案して判断される(厚労省『合理的配慮指針』より)。
①事業活動への影響の程度
②実現困難度
③費用負担の程度
④企業の規模
⑤企業の財務状況
⑥公的支援の有無
建物の改築を要するもの等は事業主の負担が過重と言えそうだが、軽微な段差の解消とかソフト面での配慮であれば、実現できそうなことも多いのではなかろうか。
ソフト面での配慮の具体例としては、出退勤時刻等の勤怠管理を柔軟に運用する、業務指示に筆談やメールを利用する、会議資料をデータ化する(文字を拡大したり、音声ソフトで読み上げさせたりできる)、困っているようだったら声を掛ける、といったことが挙げられる。
障害者への合理的配慮は、法的義務である以上に、CSR(企業の社会的責任)の一環としても考えなければならないことかも知れない。
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