見たとおり

2013年02月27日 | diary

母の物忘れが加速中。
それが年齢のせいと解ってはいても、何度も同じことを言われたり聞かれたりすると、私のストレスは頂点に達する。

今日も「せとか」という名前のみかんを買った。
食後に母に勧める。
母「これ美味しいね。なんというみかん?」
「『せとか』という品種のみかんよ」
5分も経たないうちに
「これ何というみかん?」
私「一番上に『せ』という文字がつく名前のみかんよ」
私はまたかと思いながら、意地悪さをふくんだささやかな抵抗を。
母「??」
私「せとかよ。~~~。1回口に出して反芻してみたら。何度も答えるのはもう嫌!」
それなのに、1分も経たないうちにまた同じ質問。

私の眉間の皺が、いちだんと深くなった一瞬だった。
確かに、今回のせとかは瑞々しく、感動するほど甘味たっぷりで美味しかった。

そのくせ、母は事件やニュースには私より詳しいのだ。
母の頭の中はどうなっているのか?

ふいに、私はその柑橘の名前をきっかけに、子供時代の古いエピソードを思い出した。

子供の頃は、誰でも見るもの聞くものすべてが珍しく新鮮なのだ。
そんな私は「これなぁに?あれはどうして?」と様々な場面でくどいほど母に訊いた。
すると、母は決まって「見たとおりよ」とイイカゲンに答える。
最初はちゃんと答えていても、だんだん面倒くさくなるのは解るけれど…

そのうちに、これは何?と尋ねた幼い私が「これは、見たとおりでしょ」と自分で答えるようになったとか(苦笑)

何度も同じことを聞く母に、今度こそ「見たとおり」と答えてみようと思っている私がいる。

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ライフ オブ パイ

2013年02月19日 | movie

映画って観だすと、何故か次から次へ観たくなる。

昨日は「ライフオブパイ」を。

その前は熊のTED。
う~~ん。TEDは前評判も良かったし、何しろ予告編が最高に面白くて・・・
しかし、何故か実際に観ると面白さが半減している。

というのも、いつも思うのだが、映画の中のウリのシーンを予告やCMで観てしまうと、本編で観たときにそのシーンを知っているので、面白さや感動がイマイチになってしまう。
そう感じるのは私だけ?

            

この「ライフオブパイ」は、不思議な感覚を与えてくれる映画だった。
それが私の第一印象。
権威あるブッカー賞をとった原作だとか。

今回はあまり知識をいれずに、観てみたいと言う感覚に頼ってみたのは正解だった。

パイというのは主人公の名前の由来で、円周率のパイということ。

台詞の中に哲学を、宗教を、人生の意味を、そして生きるということに想いを馳せてしまう映画だった。
すべてのシーンが、何かを象徴しているようで、観ながら解釈をしている自分があった。

2Dと3Dで公開されているけれど、3Dは吹き替えなので2Dで観る。
こればかりは俳優の生の声で台詞を聞きたい。
しかし、3Dでもちょっと観てみたかった。
それに何しろ、CGだかVFXだと分かってはいても、動物や自然が画面に訴えてくる迫力が圧巻。
今までに観たことの無い感覚の映画で、素直に感動した。

 

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やはり紙の本

2013年02月12日 | 小説

電車内でタブレットなど電子書籍で読書をする人を多く見かけるようになった。
今日も、隣席の人が読んでいるタブレットをつい横目で…
実は私もちょっと興味があったし、楽譜にも便利だろうなと思ったり。

ただ、実際に使用している人の意見や感想はどうなんだろうと思い、検索してみた。

本を読むときに活動する脳の部位が、本とタブレットでは異なる気がする
脳の部位?
読み返したいところがすぐ見つからない、紙だと読んだところが膨らんでいたりして…
う~~ん、確かに。

結局、読んだ気がしない…そんな意見が一番多かった。
紙の本に慣れてしまっているから、電子書籍に慣れてくればどうなのかとは思うけれど。

しかし、私はやはり従来の紙の本が好き。
書棚に好きな本が並んでいるのを眺めるのも好きだし、手軽に手にとれるところも。
そして、その本を買った頃の自分を思い出したり、痛んだ表紙を愛おしく思ったり。
厚い本のしおり紐の位置が、少しずつ動いていくのを目にするのも達成感が。
私は好きな本は、何度も読み返す。
その時に、本や読みたかった箇所をちゃんと目や指先が覚えている、その感覚が私にとって大事なのだ。

 

 

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デルヴォー「夢をめぐる旅」

2013年02月11日 | art

           

埼玉県立近代美術館に、ベルギーの画家P・デルヴォーの「夢をめぐる旅」を観にいく。

ベルギー絵画は好きだ。
特にクノップフ、アンソール、ロップスそしてデルヴォー。

シュールレアリストとしての称賛を受けながらも、決して彼らの仲間になることは無く『一匹狼の画家』と言われたデルヴォー。
しかし、子供の頃から母親に支配、抑圧を受けそれが彼の人生に強い影を落としていた。
つまりマザコン?
恋人とは別れさせられ、意に沿わない結婚をさせられたり、それゆえ、デルヴォーは抱えていた不条理さをその絵の中に描いたのかもしれない。
デルヴォー自身こう言っている。
「私は現実を、ある種の夢として描き出そうとしてきた。事物が本物らしい様相を保ちながらも、詩的な意味を帯びている、そんな夢として」

       

私がデルヴォーの絵に惹かれるのは、彼の絵の前に立つと、まるで夢判断でもするかのように、絵の中から何かを汲み取ろうとしてしまう自分への興味もあるのだ。
観る者のすべての眼差しをとらえて離さない…そこが深遠な絵と言われる、デルヴォーの描く夢の世界の魅力だと私は感じる。

       

 

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