某文藝評論家の先生に誘われて、同人のグループに入ってから半年経った。
常時見える人はいつも7,8人だが、年齢も職業もいろいろ。
書くものもエッセイだったり、時代小説やラノベだったり、これだけは死ぬまでに書くと自分に課していたり、それぞれ志や書く分野が違うけれど、大いに刺激を受ける。
因みに今、私が書いているのは伏線を張り、オチを考えるのが楽しいけれど、それが反面辛くもある、初めてのミステリー。
男性を主人公にしたのだが、この男の情けなさやダメさ加減をもっと書き込むようにと、いろいろ批評された。
あ~~、難しい。
帰りの電車でご一緒した同好のおじ様が、さかんに鞄の中を探し回っている。
いつものごとく、妄想癖の私。
付け文(古っ)でもされたらどうしよう?なんて思っていたら(嘘、笑)
鞄の中から出てきたのは、中勘助の「銀の匙」だった。
「今、注目の本ですが、是非読まれると良いですよ」と渡されたので早速お借りすることにした。
この本を教材に使ったという灘高の先生の話題は有名だ。
そういう流行り物には手を出さない私だが、結局1日で読んでしまった。
この本の価値を最初に認めたのは、夏目漱石とか。
内容は27歳の中勘助が、少年時代の記憶を基に文章を綴ったもの。
古い茶箪笥の引き出しに入っていた銀の匙がみつかり、それが欲しいと母親に願う。
母親は、何故銀の匙が引き出しに入っているのかと話し始める、中勘助の自伝的小説。
それにしても、まるで細密画を観ているように、子供の心理やその世界を描く緻密さには、その時代を知らない私なのに、懐かしい感情がいつしか湧きあがってくる。
今、そこで目にしているように情景がそのままが描かれ、読み進めば進むほどリアルさに感動してしまう。
近頃、子供の頃が懐かしくて…という、ちょっとお疲れ気味の大人にお勧めの本です。