彼岸明けの日、菩提寺のある川越に出かけた。
母の49日法要、そして納骨が終わり、私の生活も落ち着きを取り戻しつつある。
母はこれといった病もなく、自然に任せた静かで穏やかな旅立ちだった。
市内の介護施設に入所して3年だった。
「家に帰りたい」が口癖だった。 私は、母のその声を思いだすと、今でも切なく複雑な心境になる。
反面、家に帰れば今度は向こうに帰りたいと言うのだが… …
最期の1か月はほとんど寝ていることが多かった。
しかし、会いに行くと私のことはわかるらしく、瞳を閉じたまま私の名前を呼ぶ。
誰もが一日一日と、老いに、そして死に向かって行く。
母が他界したことをきっかけに、近頃はそういうことを考えてしまう。
それが終活とよばれるものなのだろうか。
テレビなどでも、これでもかというくらい終活を取り上げる。
私の周りでも、身の回りの整理を始める友人が増えた。
ここにきて、友人たちも姉弟やお義母さまを送る経験をしている。
まだ差し迫ってはないけれど、残される家族のことを考えると動けるうちに整理をしておかなくちゃねと、皆口にする。
私も、そろそろ腰を上げるべきかなと思い始めている。