7月19日、衝撃的な事実が明るみになった。2011年に原発事故を起こした福島原発の事業主である東京電力が、事故の収拾にあたった約2千人の作業員に甲状腺癌の危険が見つかった、と公表したのである。これは福島原発の事故現場で作業にかかわった全作業員数の約10%にあたる。
東京電力は19,592名の作業員(うち東京電力社員3,290名、下請け企業の作業員16,302名)に対し健康診断を実施。そのうち1,973名の甲状腺が通算100ミリシーベルトを上回る放射線量にさらされたことが確認された。複数の疫学的調査によると、100ミリシーベルト以上の放射線を浴びると癌が発生することが証明されている。
しかしこれらの被ばく作業員のうち、世界保健機構(WHO)が情報を入手したのは522名にとどまっている。WHOはこれら522名のうち178名に癌の危険があると指摘したが、日本の厚生労働大臣はこうした結論に疑問を投げかけ、東京電力に調査をやり直すよう指示を行った。今年の6月には福島県内に住む12人の子どもたちに甲状腺癌が見つかり15人に甲状腺癌の疑いが指摘されたが、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)のアレン・ラヌ専門家が指摘するとおり、
「日本政府は福島原発事故による健康被害の状況を明らかにしていません。」
昨年12月には、福島原発での事故処理にあたる下請け企業「ビルドアップ」が作業員らに線量計を鉛のカバーで隠し線量を少なく見せかけるよう要求していたことが明るみなった。高線量の事故の収集現場で作業を担う作業員の健康と安全を守る規則が反故にされている。