ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

嗚呼モントクレア

2008年08月06日 | お家狂想曲
8年前の春、マンハッタンで初めてサラリーマンになる旦那と、初めて英語でピアノを教えることになりそうなわたし、
そしてティーンエイジ直前の不穏な息子達2人と2才の三毛猫は、ここモントクレアに引っ越してきた。

築170年のお屋敷の、堂々としながらもどこかチャーミングな風貌と、屋敷をぐるりと取り囲むように植えられた日本紅葉の老木に一目惚れ。
わたし達の呑気な店子生活が始まった。

美しい山並みという意味合いが込められたモントクレアは、その名の通り、緑豊かな美しい町。
教育と芸術にガンガン力を注ぎ、パトロールを強化して安全宣言を高らかにやり遂げ、
充実したレストランには、よそから大勢の人達が集まってくる。
そしてマンハッタンへのアクセスの良さ。調子がいい時だと、家の玄関からマンハッタンのど真ん中までものの20分もかからない。
直通電車やバスも充実している。

そんな町はどんどん評判を呼び、地価も物価も評判とともに上がり続け、お金持ちが寄り集まってきた。

わたしの生徒の親にもお金持ちの人が多く、家には家事専門、子守り専門のお手伝いさんが数人いて、
子供達は毎日複数の習い事やスポーツに通ってクタクタ、送り迎えをする母親もクタクタ、
なので出張レッスンをするわたしは、親同士の口コミで歓迎してもらえた。

屋敷の1階の住み心地は快適。2階に住む大家さん夫婦との関係もすこぶる良好。
日本での借家生活では大家に恵まれず、散々イヤな目に遭ってきただけに、親切で陽気な2人には感謝しっ放し。
向こうは向こうで『あんたらみたいな良い人達が店子になってくれて最高!』と、
昔遭った店子災難を百物語っぽく話してくれる。
彼らは、部屋付きの電気器具が故障したら、即修理を手配し代金を支払ってくれる。
ドアや窓の修理、ゴミ出し、落ち葉掃き(これが半端な量じゃないのだ)、雪掻き、みんな任せなはれ~とばかりにやってくれる。
旦那の失業&鍼灸学校期間の3年半の間、家賃の支払いは辛かったけど、
8年前に決められた額は据え置きのまま、1セントだって値上がりしていない。

ティーン時代を無事に終え、息子達は、ありがたくもクソ高い学費をふんだくる大学に在籍し、
旦那は3年間の修行と勉強を終え、鍼灸師として3年目を迎えた。
わたしも、時々生徒に英語を直してもらいながら、30人近い生徒を教える毎日。ピアニストとしてこの町でデビューも果たした。
それもこれも、店子であったからこそできたことやったと、家を買うことになって初めて分かった。

この町の家と税金は高い。ものすご~高い。
モントクレアはお金持ちが住み着ける町。
彼らは、毎年新車が1台買えるぐらい(2万ドル~3万ドル、それ以上も)の税金を、
ほんまは払いとうないけど払たるんやで~と、
渋滞でノロノロ運転が続いた挙げ句、しっかり高速料金を払わされるドライバーみたいに、眉間に少しシワ寄せながらも支払う。
彼らももちろん嬉しくないやろうけれどね。
でもそれは、わたし達にとっては、嬉しいとか嬉しくないとかいうレベルの問題じゃなくて、それでは生きていかれへんねんっ!という問題なのだ。

大好きな町モントクレア、
君は近くて遠い、愛すべき町


コメント
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