ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

2015年10月29日 | ひとりごと



一本の木と同じくらいすてきな詩に ぼくは一度も出会ったことがない
ジョイス・キルマー  (December 6, 1886-July 30, 1918)

自然を愛し戦争に反対したキルマーは、皮肉なことに、第一次世界大戦に歩兵として従軍し、スナイパーに狙撃され、31歳の若さでなくなる。
アメリカ国籍だが、自らは詩的文化の歴史を背景に持つ、アイルランド人として生きた。
詩人ジョイス・キルマーが、この詩を書いたのは1913年で、
ニュージャージーの彼の家の近くにある樫の木に、インスパイアされて書いたものと言う。
キルマーは、第一次世界大戦に従軍し、フランスに赴き陸軍軍曹として戦死した。
4年後、ラスバックが詩に合わせ、曲を書いた。


"Trees"

I think that I shall never see
A poem lovely as a tree.

A tree whose hungry mouth is prest
Against the sweet earth's flowing breast;

A tree that looks at God all day,
And lifts her leafy arms to pray;

A tree that may in summer wear
A nest of robins in her hair;

Upon whose bosom snow has lain;
Who intimately lives with rain.

Poems are made by fools like me,
But only God can make a tree.

(Joyce Kilmer)


『木』

一本の木と同じくらいすてきな詩に
ぼくは一度も出会ったことがない

木はやさしい大地の胸に吸いついて
流れてくる恵みをのがさない

木はずっと天を見上げて
腕をいっぱい広げて祈りつづけている

夏になればツグミたちがきて
巣のアクセサリーで木の頭を飾る

木は雪を深々とかぶったこともあるし
だれよりも雨と仲よく暮らしている

詩はぼくみたいなトンマなやつでも作れるが
木を作るなんてそれは神様にしかできない
(アーサー・ビナード&木坂涼共訳)




なんだか、うちのカエデの爺さんのことのようで、嬉しくなってしまった。



自然は人間を必要としないけれども、人間は自然を必要としている。
なのに、次から次へとぶっ壊していく人たちに、
わたしたちはもう、ストップ!と言わなければならない時がきているのではないかな。
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より良い未来やシステムを模索する人たちに→アイスランド『無血の市民革命(鍋とフライパン革命)』

2015年10月29日 | 日本とわたし
この、極めて優れたドキュメンタリー映画を、翻訳し、さらには映画の画面に沿うように字幕を入れてくださったブーゲンビリアさん。
その時の様子を、ご自身のブログ『ブーゲンビリアのティータイム』に書き記していらっしゃいます。
http://bougainvillea330.blog.fc2.com/blog-entry-311.html#comment22

この映画と出会い、最初の10分ぐらいを観ただけで、これはもう絶対にたくさんの人たちに観てもらいたいと思いました。
その際に、時間の無い方のために言葉を書き起こしたかったのですが…以下の理由でなかなか叶わずにいました。

『肩甲骨の痛みがなかなか取れないのですが、そんなことは言っていられない状況なので、伴奏バイト曲の集中初見練習を開始しました。
今日は雨が上がりましたが、気温が高いままの、これはいったい何の季節だ?というような生暖かい空気を、強風がびゅうびゅうとかき回しています。
美しい色づいた葉っぱが、すっかり落ちてしまいませんように。

さて、ぜひこのドキュメンタリー映画を観てください。
本当は、翻訳してくださった文章をすべて、ここに書き写したものと一緒に掲載したいと思い、ずっと保存しているのですが、
体調を崩したり、やっとマシになってきたかと思ったら、100ページ以上の音符を初見読みして、それを今日からのリハーサルで弾かなければなりません。
なので、全く時間が見つけられません。

ひとまずここに掲載しておきます。
Miguel Marquesさんが、今年の7月30日に、ユーチューブの画面に公開してくださったものです。
言葉のひとつひとつに、わたしたちが知らなければならないこと、学ぶべきこと、勇気づけられることがしみこんでいます。
ぜひ、時間を作ってご覧ください』

その後、ひろみさんが、このブーゲンビリアさんのこと、そして、書き起こしをしてくださったShanti Phulaさんのことを教えてくださいました。
この書き起こしは、登場人物の顔写真と映像のタイムラインと共に為されていて、とても分かりやすいものになっています。
わたしも前半の部分を書き起こしましたが、Shanti Phulaさんの書き起こしを、ここに転載させていただきます。
文字の強調をしたい部分が山盛りでしたが、あえて今回はしませんでした。




ポルトガルで高い評価を得ているドキュメンタリー作家/映画監督 ミゲル・マルケス(ミゲル・マルケス)による自主製作映画(2012年)。

この映画を通して、アイスランドの市民革命<鍋とフライパン革命~Pots, Pand and Other Solutions>を、草の根レベルでリードした人たちの思いを知ることができます。

2008年。
経済危機の大打撃を受けたアイスランドでは、経済のみならず政治も崩壊し­、あらゆる社会システムが機能しなくなっていました。
食料配給への長い列。
暴力的なデ­モ。
絶望。

未曾有の危機に瀕した人々は、あらゆるものの本質的な問題に正面から向き合い、
草の根­パワーによって、既存の経済制度、政治制度、民主主義制度を大きく変えていきました。­
まさに無血の市民革命。

彼らの方向感覚・バランス感覚・精神性・知見・方法論を知ることができる本作は、
より­良い未来やシステムを模索する人たちに、知識・知恵・勇気・ひらめき・プラスのパワー­を与えてくれる、言葉の玉手箱

革命そのものにも、この映画にも、この映画を見て、社会システムのあり方や民主主義につ­いて考えることにも、無限の価値があります。

市民革命を経たアイスランドでは今、失業率は劇的に下がり、投資も戻り、経済指標も回­復しています。
本物の民主主義が根付いた社会では、自由な発言ができる社会では、人々­の生活は安定していくものなのです。

私たち1人1人が真実を知る努力をし、考え、そして行動に移していけば、未来は変えら­れる。
未来を明るくしていける。



↓以下、転載はじめ

0:00~

今のシステムってさあ、民主主義からかけ離れちゃってるよね。
政党政治でさ、国は統治されてるけどさ、議会で討論されてることってさ、一般市民にとって良いことがないんだよね。


民主主義の名の下にやってきたけど、システム自体が民主主義じゃないんだよ。


2008年の経済危機の後、ボクたちの政治体制そのものが、どうやら終わりにきちゃったっていう感覚があった。
怒ったり、抗議したり、大騒ぎしたり、そういう「システムを停止させるようなことって必要ないよね」って思ってる人も実は多くて。
やんなきゃならないのは、次にどうするかを考えることだからさ。


ものすっごく重大なことです。
山のような書類があって、お互いに助け合って自分たちのことをやる、もう重大極まりないことです。


アイスランドの大学ってヒドイもんよ。
私は法学を専攻しているけど、大学では税金の還付方法を教わってるわ。
法律家の卵に、いかに税金を払わないようにするかを教えるのよ。
論文、税制、お金、それが今の大学よ。
私たち、おかしな方に向かってるよねって言う人もいるけど、笑われて、バカにされて、聞いてもらえないのよ。

3:08~

教育ってさ、「誰か」が作ってるものなんだ。
政治体制を支えてる人たちは、その「誰かが作った」教育を受けた人たちなんだよ。
ボクはさ、看護士とか、タクシードライバーとか、セールスマンとか、社会の中で実際に働いているような人たちがさ、
体制側にいればいいなと思うんだよ。
だって、国民の大多数は、社会で働いているんだからさ。


戦争ってさ、世界を所有している人たちと、世界を支配している人たちとの間で起こされてるんだよね。
で、残りの人たち、大衆、市民は、場合によっては自分たちのことを、持たざる者、何も言えない者だと思ってるんだ。


NATO会議での一幕です。
私の属する委員会の最後のセッションで、ウィキリークスで明らかになったサイバー犯罪についての報告がありました。
匿名での内部告発、危険な兆候についての報告です。
報告書の責任者が言うには、サイバー犯罪が行われている回線では、戦争が演じられているのだと解するしかなく、
それに対して、「現実の世界大戦を宣戦布告することも可能だった」というのです。
どの回線でそのようなことが行われていたのか、尋ねてみたところ、
「NATOのインターネット回線で、サイバー犯罪を行っているような人たちを怒らせることになるから、答えたくない」と言ったのです。

■管理人より。
8の女性は、NATOの委員会で起きたことを話されています。
あまりにも高度に、政治的・軍事的・犯罪的な内容をはらんでいるので、訳しながら怖くなりました。
 

5:05~

体制崩壊っていうのは、世界の状況によってのみ起こるんじゃなくて、アイスランドの状況によっても起こるんだよね。
ここアイスランドの状況といえばさ、政治の腐敗やら汚職やら、そんなのばっかりさ。


銀行はずっと前に倒産してしまって、ところが(アイスランドは)オランダやイギリスからお金を借りて、アイスランド救済口座に入金しようとしたのよ。
すべてがダメになったら、この(外国からの)借金は全部、アイスランド国民の借金になるのよ。
それはまったく公正じゃない!
考えてみたら、銀行のシステムってあまりにもバカげていて、こんなシステムがこれからもずっと続くなんて考えられないし、
ヨーロッパに常識ってものがあるなら、銀行は全部つぶして、もう一回最初からやり直すはずだと思ったわ。
1(アイスランド)クローナを借りたいのなら、現金を受け取るべきよ、投資にまわすんじゃなくて。

5:58~

体制側はメディアも支配していたのでね、私たちは真実を報道してもらえない状況にありました。
彼らが何を言ったか、何を言わなかったか、そういうことですよ。


何もかも秘密にされてて、本当の数字がどうなのか、まったく分らなかったんだ。
全てにおいて、何をどうすればいいのか、見当もつかなかった。
右派政権が腐敗したときには、もうどこもかしこも腐敗ばっかりで、左派政権になったらもう、お手上げ状態になっちゃったんだよ。

6:34~

4年毎に選挙があって、違う政党に投票できるんだけど、どこに投票しようが、政権を取るとどこも同じになっちゃう。
選挙そのものが機能不全なんだよ。


生身の人間が、食べ物の配給に並んでいるんだよ。
次は自分かも、だよ?
財務大臣は、150億アイスランドクローナを、ケフラビクの小さな銀行に融資したんだ。
そして、その銀行は倒産。
何で財務大臣がそんなことをするんだ?
国民が食料配給の列に並んでるってときに、国民の150億クローナを、ただの民間銀行につぎ込むなんて。
つまり、汚職だよ。

※ Bankrupt Transport Companyの前オーナーだそうです。
日本の破産管財人に近いお仕事かもですが、詳細は不明です。
※ ケフラビクは、アイスランドの首都レイキャビクから西に約50kmに位置する、人口1万人ほどの都市。


7:27~

IMF(国際通貨基金:International Money Fund)ってのは、(アイスランドのためになることではなく)自分らがやりたいことをやるだけの組織だからね、
反対運動ってのは、IMFに抗議するものだったんだけど、IMFに対抗するために作られた新政府は、以前やろうとしていたこととは逆のことをやっているよ。


始めるときは独りっきりさ。
ちょっとエキセントリックに響くけど、そうじゃないんだ。
生活を良くしていくために、自分自身のために闘ってるわけさ。
そうやって始めていくと、同じことを考えていた人たちが、皆集まってくるんだよ。  

政治ってさあ、一つのシステムが数十年続いちゃうと、同じ家系や同じグループばかりに権力が集中しちゃって、変化を嫌うようになるんだよ。
※ Hörður Torfasonさん(ゲイ活動家 歌手 作曲家 詩人)


すべての政党が、同じようにダメだとは言わないわよ。
ただ、政治家は、私たちが考えないように仕向けてくるのよ。

みんな、「政治家に一切合財まかせればいい」って思ってるでしょ。
それはあんまり良い考えじゃあないわ。
ちゃんと自分で考えていかないと、とんでもないことになるもの。

社会や、民主主義や、地域の人たちに関わっていくことを、誰かにまかせてしまうっていうのは、社会に対する裏切りだわ。

まかせたら最後、まかせられた人たちは、マフィア化していくのよ。
もっと権力を得るにはどうすればいいか、そのための資金作り、人材選び、組織作りばかりが、重視されるようになるのよ。

9:33~

2008年の経済崩壊以来、投票者の50%が、他の政党、既存の政党ではないところに投票したい、と思っていたよ。
既存政党にはないものを持った政党に。
投票行動も活発だった。
投票すべきか否か、誰に入れるか。
議会の信用度は、10%もなかったね。
アイスランド人の9%が信用してたかな。
大多数のアイスランド人は、選挙で選ばれた議員が、銀行の負債利子の面倒ばかりみてるって考えてたよ。
ナンセンスだよ、まったく。


一般の消費者として、民主主義の消費者として、ボクらはあんまり良い消費者ではなかったね。
政党政治ってのがどういうものなのか、今までどんなことをしてきたのか、誰しもがみんな、あまりにも忘れやすいんだよ。
政党のことを、サッカーチームみたいにとらえてるもんだから、選挙も何かこう、ファン投票みたいだしさ。
それは絶対にやっちゃいけないことだって、学ぶ必要があると思う。

10:50~

政治家に質問すると、どう答えていいかわからないくせに、ウソをついてまで答えようとするんだよね。
とにかく、適当なことばっかしゃべるのさ。
権力の座に居座るためにね。
政党集会にやってくるのは身内ばかり。
いわゆる利権集団。
これが政治のシステムなんだよ。


善意の人が、善意をもって、善意を成し遂げたいと思って、政党に加入するのを見てきたけどさ、
みんな2-3年もすると、なぜか突然、バカバカしいことばっかりに終始するようになるんだよね。
善政を行う方法はたった一つ、その政党と手を結ぶしかないって、思うようになるからなのさ。

11:44~
自分が政治に携わるなんて、絶対に絶対にないわ。
だって、自分の魂が腐っていくなんてイヤだもの。
この組織のために働く気になったのは、4ヶ月間だけっていう期限付きだったからよ。
それなら参加できるし、普通の人間でいられると思えたわ。

(革命後の)民主主義では、可能な限り直接的に、権力が分配されたのよ。
個々人が、権力に執着しないように考えられたわ。
だから、汚職はほとんど起こらないはずよ。


例えば、6歳から8歳くらいの子どもが10人いるとして、その子たちを1つの部屋に集めて、部屋のテーブルにはチョコレートケーキを置いて、こう言うのさ。
「このケーキはこのままにしておいてね、私は30分ほど部屋を離れるけど」
どうなると思う?

だけど、あなたがそこに腰を下ろして、こう言ったらどうなる?
「ケーキは食べちゃだめよ。そっとしておいてね」

見ていれば、子どもたちは、ケーキに手を出したりはしないさ。

12:57~

何かの病気、例えばガンがあったとして、それをただ一人に与えたら多分死んでしまうけど、
100人で分け合ったら、ちょっとは傷つくとしても死にはしないわ。

権力も同じなのよ。
沢山の人に分配すれば、痛みも少なくなるわ。

権力がとても良いもの、手に入れたいと思うのと同時に、それが疫病のようなもの、欲しくないものと感じられるなら、
組み合わせ的に、とても正しいものになるのよ。

ところが権力は、「強欲」と結びついてしまっていたわ。
最悪の組み合わせよね。

望むのなら、50年ごとに、経済危機に陥ることだってできるわ。
地獄に行って、帰ってきて、また地獄に行って…。

次の世代の人たちを、同じように苦しめることもできるけど、変える事も可能なのよ。
とても根本的な変化でなくてはならないわ。
ある意味では哲学的よ。

それには、賛成するだけではダメなのよ。
新しい人たちが、同じことをするだけだもの。
それじゃ意味ないでしょ?

14:07~

「市民運動(Citizen's Movement)」は、いくつかの草の根グループが、集まって作られたプロジェクトなんだ。

経済危機以来、「選挙による市民政党のようなものを作るべきだ」って考えはじめた草の根のグループがあってさ、
そいつらが結束して、「市民運動(Citizen's Movement)」になったんだよ。

ええと、経済危機が2008年だったから、2009年3月の終わりに、公式にスタートしたんだっけかな。

「市民運動(Citizen's Movement)」では、議論に議論を重ねていったね。
議論の的になったのは、ボクらの共通の政策となるべきものは何か、共通の目標は何か、共通の展望は何か、
どうすればボクたちが、団結していけるのかってこと。
※ Jon Thor Olafsson
市民運動(the Citizens' Movement)メンバー
"The Game of Politics”著者



公正さを求めるために、最初はみんな、ノーと言っていたわ。
政治には関わりたくない、アイスランド議会の議員にはなりたくないって。

私たちは政治を変えたいのであって、政治家になりたいわけではなかったのよ。

社会が、私たちを後押ししてくれたわ。
何かをしろって。
それが市民運動。

市民運動では、色々成果をあげていたけど、だけど結局、選挙が始まったときには十分な時間がなくて、
選挙には勝てたとしても、政策なんてなかったのよ。

市民運動(the Citizens' Movement)には、ピラミッドモデルは採用したくなかったの。
みんなが平等でいるためには、リーダーは必要ないもの。
1人のリーダーがみんなを率いていくなんて、望んでいないの。
1人1人がリーダーであってほしいのよ。

市民運動のメンバーは、多種多様よ。
左寄りの人、右寄りの人、中間の人、無政府主義の人まで。

望めば誰でも、市民運動の運営に参加できるわ。
16人の運営者名簿があったとしたら、男性、女性、男性、女性、となっているわ、平等にしたいから。

すぐにでも運営に参加したいって人が、2人同時にいたときは、コインを投げて決めるのよ。
あるいはまあ、そういうときは女性にするかしらね。
そのほうが簡単だもの。
※ Cilla Ragnarsdottir
市民運動(the Citizens' Movement)メンバー
美術史家
 

17:17~

市民運動(Citizens' Movement)には、3つの方針があってね。

1つ目は、経済危機を引き起こした人たちには、責任をとってもらうこと。

2つ目は、家計を公正に立て直すこと。
記録によると、政府も銀行もこうすると、悪くなるって知っててやっちゃってたんだよね。
腐敗したグループが、分裂したりくっついたりしたのは、失敗だったね。
だけど、是正されていくはずさ。

3つ目は、こんなことが2度と起きないようにすること。
新しい組織を作って、法律を変えるってことさ。

18:25~

(改革を)可能にするコツは、(市民運動の)活動家になることよ。
議会の内側にいるときも、私たちの使命を忘れてはならないの。
そのために、とても重要な取り決めが3つあるのよ。

1つ目は、
国民との合意によるアジェンダによって、私たちは、最長8年間しか存在できないということ。
注)この女性は国会議員らしいので、議員は最長8年しか務めることができない、という意味だと思われます。

2つ目は、
どんな議題についても、市民運動のメンバー同席で、会議をしなくてはならないということ。
市民運動のメンバーに、議題が解決したかどうかを確認してもらって、私たちが何も不正をしていないことが明らかなら、チェックリストを完了させて、解散しなければならないの。
私たちにリーダーはいないの。
そして、それがとても重要なの。
職務を履き違えないで済むし、スポットライトを浴びる「主役」みたいな人がいないから、脇役もいない。
だから、私たちみんなが、人として等しく価値があるって感じることができるのよ。

そして3つ目は、
国会議員とか、若者の市民運動なんかも含めて、政界にいた人は、「市民運動:Citizens' Movement」の運営には関われないってことよ。

19:39~

私たちは皆、アマチュアよ。
思うに、そこがいいところなのよ。
私たちは政治家ではないし、政治家のようだとも思っていないわ。

アイスランドの憲法によると、国民は、議員に従うように定められているわ。
ただ従うように。
それは確かよ。

ただし、議員にモノ申すことだけはできる。
市民運動のメンバーが、「それには同意できない、質問したい、議員をコントロールしたい」と言えば、議員はやりたかったようにはできなくなるのよ。

運動が広がっていって、議員の間にも拡散していくのは、当然の成り行きだわ。

ただ、急ごしらえの組織だから、これからどんなふうにやっていくか、まだまだ話し合われていないことが とてもたくさんあるのよ。

いくつかの地方選挙があったわ。
新しい政党が作られて、運営されて、いたるところにやってきたわ。
そう、新しい人たちが、市議や町議になっていったのよ。
※ Margret Tryggvadottir
アイスランド国会のメンバー、出版業



ベストパーティは、相対的に新しい概念だよ。
創立者で、現市長のJon Gnarrが、フェイスブックで「参加したいか?」って聞いてきたんだ。
「もちろん、で、何をしなくちゃならないんだ?」と返したら、
「何もしなくていいさ。なんか面白くなりそうだからさ」
だってさ。

ベストパーティの人間の大半は、アーティスト。
僕たちは、選挙の前から、こんな感じになってたね。
党の人間は皆、ありふれた普通の人たちさ。
政治的背景があってやってる人はいないよ。
だから、何もかもが新鮮だったね。

選挙が終わって一ヶ月後に、自覚したんだ。
ぼくたちが市議会に当選したのは、嵐がおきたからだって。
※ Karl Sigurosson
Chairman of the City of Reykjavik,
Best Party
レイキャビク市議長
ベストパーティ


23:25~

みんなの不満が高じて、民主主義のための団体『ALDA』が作られたんだ。

2008年の、経済危機のときの新政権が、システムを変えていかないことに、ものすごく失望した人たちがいてね、僕も含めてね。

新政権は、IMF(国際通貨基金)の言うことに従って「再調整」し、「再構築」し、そして、以前と全く同じシステムを「再制定」したにすぎなかったからね。

それは、多くの国民が、新政権が、経済的・政治的改革をしてくれるだろう、もっと民意が反映されるようになるだろうと期待してたんだけど、何一つ変わらなかった。

どうすれば僕たちの社会を、もっと民主的にできるのか、観念的なものに留まらない、実践的な民主主義の方法を、見つけ出そうよってことになって、
国際的な視野を持った人たちが、集結して立ち上げたのが『ALDA』。

僕たちには、この実社会で試されたことがある実例が、必要だった。

憲法制定会議を設けるというのは、2009年の「鍋とフライパン革命」要求項目の1つだったから、
『ALDA』はまず、憲法制定会議、あるいは評議会に提案できるグループの立ち上げに、取り組んでいったんだよ。

例えば、選挙で選ばれた議員の中に、一般市民の中から、無作為に抽出した人たちを加えるというのは、『ALDA』のアイデアなんだ。

カナダのブリティッシュ・コロンビア州の「試み」を、導入してみようっていう「試み」さ。
かの州では、一般市民からランダムに抽出した160名が、新しい選挙法を策定していったそうなんだよ。

無作為に選ばれた代表者のほうが、大義と一般市民に忠実だ、という傾向があるんだよね。
特定のグループや、企業の利権のために働くようなことが少ないってこと。
単純に、一般市民なわけだから。

既存の経済システムや政治システムが、どこかしら破綻してるっていう認識は、一般にもかなり浸透してきたと思うよ。

次にやらなくちゃならないのは、フツーの人たちが、社会問題を論ずる場に参加できるような、環境作りをしていくことじゃないかな。
意思決定過程を可視化させるとか、公開討論の場を作るとか、フツーの人たちの考えをシステムに反映させられるような、双方向的なシステムを作るとか。
※ Kristinn Mar Arsalsson
The Democracy Group ALDA


26:33~

本物の民主主義っていうのは、毎月国民投票をするとか、かかる問題について賛成か反対か表明するとか、そういうことじゃないんだよ。
そういうふうにだけやっていくと、民主主義システムそのものが、とんでもなく危険なものになってしまう。

フツーの人たちは、問題の本質は何なのかとか、どこがポイントになるのかとかを確認するっていう、ある意味面倒くさいことをやらなくてもいいから、
テレビや新聞なんかを見て、賛成するか反対するかだけになっちゃう。
今までそうだったよね。

ボクたち「Citizen's Foundation Iceland」は、非営利団体で、目標とするところは、フツーの人たちと政治家をつないでいくってことなんだ。
フツーの人たち、一般市民の言うことを、政治家に聞いてもらうようにするんだよ。

先のレイキャビク地方選挙では、ボクたちは、ウェブサイト「Better Reykjavik」を立ち上げたんだけど、これは成功だったね。
ウェブサイト「Better Reykjavik」には、たくさんの人が参加してくれたし、ボクたち自身も新しい政党を立ち上げたし、
問題の核心を見極めたうえで、誰に投票すべきかを決める一助にもなったからね。

ボクたちの活動の中で特筆すべきは、今まで政治問題というと、複雑すぎて何が何だか理解できないって言われていたところを、
フツーの人たちの生活感覚で、伝えているってところだと思うんだ。

選挙は4年に1回あるけど、それはまあ裏を返せば、ボクたちは4年に1回を除いては、何の意見も言えないってことでもあった。
そうじゃないんだよ。
フツーの人たちが問題をシェアして、解決できるシステムがあって、それがちゃんと機能していて、大勢の人が問題解決に取り組んでいるなら、
大衆(フツーの人たち)よりうまく問題を解決できる個人(政治家)、なんていないんだよ。

知恵は、大衆(フツーの人たち)に備わっているんだ。
フツーの人たちが、積極的に政策決定に参加できる、そうするために、何が問題の核心なのかを理解できる、そんなシステムが必要なんだ。
フツーの人たち自身の生活に、関わってくる問題っていうのはつまり、社会全体の問題ってことだからね。

政策を決定していくためには、話し合う必要があるよね。
優先順位は間違ってないよねって確認しながら。
もしどこか間違っていたとしたら、また話し合いで解決するのさ。
そして、政策を実行するためには、行動計画も必要になってくる。
そこでまた話し合って、調整して、何かしら支障があったらまた話し合って、誰しもが納得するような行動計画にしていくってわけさ。

まあ、現実的には、8割9割の人が賛成する行動計画が作られたのだったら、それはボクたち「Citizens Foundation」の目標が達成されたってことになるね。
※ Gunnar Grimsson
Citizens Foundation
 

30:12~

アイスランドの現行憲法は、デンマークの憲法なんだ。
アイスランドが、共和国として独立したとき(1944年)に与えられた、デンマークの古い憲法なんだよ。
ボクたちにとっては、あくまで一時的な憲法であるはずなんだ。

Constitutional Societyの基本概念は、政府を支配するとかじゃなくて、ボクたち自身の憲法を書きあげていこうとするものなんだ。
この分野は、政治家と学者の専売特許だったからね。

Constitutional Societyは、特定の政治的立場をとらないってことで、早くに一致してね。
だから、(憲法改正について)この修正はOKとか、これはダメとか、意見することはしないんだ。
ボクたちはただ、国民が、憲法について話し合うようになることを望んだわけだけど、これはホントに賢い選択だったと思うよ。

憲法についての意見は、絶え間なくあるんだけど、支配者っていうのは、憲法改正をやりたがらないものだからね。
正しい方向へ向けて、少しだけ背中を押してあげることが求められているのさ。
ボクたちはとても丁重な態度で、ボクたちの方法を押し進めていったんだ。

憲法は、アイスランドの一般市民が作ることになるだろうね。
主権は一般市民にあるんだから、適切ではない憲法があるなら、それはハッキリさせたほうがいいんだよ。
こういった(憲法改正の)プロセスすべてに参加するチャンスが市民に与えられると、降ってわいたみたいに、何千ものコメントが寄せられるようになったんだ。

もちろん、一般市民が興味を示してくれたってことも素晴らしいんだけど、
憲法改正すべき点について、委員会が、市民の意見を真面目に聞くようになったってところも、とても良かったと思うよ。
意見を出す、それに答えるっていうやりとりを見ていくのは、とても喜ばしいことだよね。
※ Dadi Ingolfsson
The Constitutional Siciety
 

32:11~

★Constitutional Council という市民団体で、私たちは、育ちや視点が全く違う人たちと、討論を重ねることにしたの。
人によって、モノの見方ってホントに違うのよね。

解決策は、多数決では決めないことにしたの。
少数派の人たちの意見をきいていったの。
討論に討論を重ねて、フィードバックがあって、矛盾を見つけ出そうとして、
「あなた、さっき言ってたことと相反するわよ」
なんて調子で。

こういうのが、公正な政治なのよ。
平和な社会を欲するなら、あなた自身が変わらなきゃ。
そして、平和に関する問題に、取り組んでいかなきゃ。

すべての抗議に対して、それをリスペクトしつつ、取り組んでいく方法を模索しなくちゃならないの。
反対意見を排除するような人のレベルに落ちないでね。

最初はとても難しかったわ。
私たちは、知識も考えもまとまっていなくて、それらを1つのラインに沿って整理していくなんて、
「何やってるのか分らないわ」って言いながらの作業だったわ。

でも、今は違うの。
私たちは今、フツーの人たちを信頼できているの。

突然、何千もの人たちが、憲法を書くようになったのよ。
それは良いことだった言えるわよね。

私自身は、人権、天然資源、自然権、環境保護 が専門なの。
最も興味をもっている得意分野は、人権と環境保護に関する法律。

私たちは、自然保護に向けて、先進的で抜本的な立場をとろうとしているのよ。
ご存知かしら、アイスランドの美しい自然は、アイスランドのエネルギーに狙いをつけたアメリカの、大きなアルミ会社に破壊され続けていたの。
アイスランドの高原が犠牲にされるなんて、恐ろしい話だわ。
自然そのものが持つ、「自然権」を守ろうとする目的においては、とても根本的なところを押さえている、ボリビアとエクアドルの憲法を参考にしているの。

人間がどのようにして自然を利用するかではなくて、なぜ自然が守られなければならないのかについて、踏み込んでいるの。
そこには、人間が自然から利益を得ようなんて発想がないのよ。

だから、アイスランドの憲法に、『自然は特別な権利を有している、自然は全ての命の源である』って掲げたの。
※ Katrin Oddsdottir
Member of The Constitutional Council,
Lawyer
 

34:34~

★The Constitutional Councilの2番目のグループは、国会、大臣、裁判官といった、システムそのものについて話し合っていったんだ。

国会の権限を増強しよう、大臣や裁判官からもっと独立させよう、としたんだ。
大臣が、裁判官の人選を行っていたから、つながりを断ち切ろうとしたんだよ。
これからは、国会が、裁判官の人選から任命するところまでを、受け持つことになるだろうね。

ボクが参加していた3番目のグループは、選挙の方法、民主主義と外交問題についてをテーマとしていてね。
一番の目玉は、選挙方法についてなんだ。

アイスランドには政党があって、有権者もいるけど、政党にも立候補者にも、何も意見できないんだよ。

政党は、お品書きを手渡すだけ。
美味いか不味いか、いちかばちかのお品書きさ。
そして有権者はみんな、好みの前菜を選ぶことくらいしか、許されていないんだ。

政党も立候補者も選べますよって言われても、裏を返せば、それが選挙(という民主主義システム)の限界でもあるんだ。
※ Lyour Arnason
Member of The Constitutional Council,
Physician,
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36:18~

★新しい憲法に提案したのは、国会を通った法律に対して、有権者の10%がノーと言えば、国民投票にかけるという法律なの。
誰しもが、そうなることを望んでいたわ。

次に、有権者の2%の同意があれば、国会に、議案を提出することができるの。
例えばあなたが、動物の権利について審議して欲しければ、有権者の2%の同意があれば、国会では、それを審議しなければならないの。

主権在民/国民主権なわけだから、私たちは、権力を、市民の手に戻そうと努力しているのよ。

モンテスキューの三権分立、いわゆる司法・立法・行政について取り組んだところが、一番の山場だったわ。
富の力をどうするかを考えなきゃならないってことに、とてもたくさんの人が気づいていたの。
例えば、富の力は、メディアを通して、影響力を発揮するわよね。
富の力がどんなふうに、公的な力に作用していくのかについて検証していったわ。
そして、政党は、一定額以上のお金を受け取ってはいけないという条項を付け加えて、誰が誰にお金を渡したのかが、分るようにしていったのよ。

メディアに関しては、メディアのオーナーは、(権力から)独立していなくてはならないし、ガラス張りでなければならないわ。
以前のように、大金持ちが、こっそりメディアを所有して、自分たちの利益代表者が、最も人気があるように見せかけるなんてこと、できなくなったのよ。

このつづきはまた、わたし自身で書き起こしてみようと思います。時間と体力の余裕ができるまで待ってください。
コメント (2)
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