わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸108(楽吉左衛門)

2012-05-05 22:43:45 | 現代陶芸と工芸家達

楽焼の呼び名は、京都聚楽弟造営に因んで、聚楽焼と言われていた焼き物が豊臣秀吉(1536~1598)や

徳川秀忠(1579~1632)から、「楽」の印を拝領しそれを作品に捺した事ことに由来すると言われています。

楽家は千家十職のひとつで、楽焼の茶碗を造る茶碗師で、代々受け継がれて来た名前です。

現在十五代が当主になっています。

1) 十四代楽吉左衛門(らく きちざえもん)覚入 : 1918年(大正7) ~1980年(昭和55)

 ① 経歴

  ) 京都の楽家十三代の長男として生まれます。(楽喜慶)。

     1940年 東京美術学校彫刻科を卒業します。

     1945年 終戦となり復員し、十四代を襲名します。(先代は前年に逝去しています。)

      戦後の混乱期でもあり、茶道も低迷期を迎え、楽焼の需要も衰退していました。

     1954年 高松宮妃殿下より、「楽」の文字と大小の印を拝領します。

     1960年 京都伝統工芸家協会が結成され、会員になります。

      この頃より、高度成長期に突入し、好景気が続き需要も伸びると共に、作品も充実して行きます。

      1964年 大阪高島屋で寿楽展示(永楽善五郎との二人展示)を開催します。

      1967年 東京日本橋三越で、「楽代々展」(楽家、日本陶磁協会、日本経済新聞社共催)を

      開催します。その後も、金沢大和や東京池袋西部での「人間国宝と巨匠展」、「現代百碗展」や

      京都、岡山での「一楽二萩三唐津展」(朝日新聞社主催)など多くの展示会に出品しています。

      1978年 樂家歴代史料を基に「樂美術館」を、京都市上京区油小路中立売上るに開館します。

      同年文化庁より技術保存無形文化財に認定されます。

  ② 十四代楽吉左衛門の陶芸

   ) 楽茶碗の造り方

     茶碗の成形は、轆轤などの回転盤を用いずに、机上に置いた板に、茶碗1個分の土を載せ、

     その板を回しながら、手捻りで大まかな形を作り、その後各種の箆(へら)や指を使って仕上げる

     技法をとっています。土は長時間(先々代が仕込んだ土)寝かせた白土を使用している様です。

   ) 黒楽、赤楽茶碗を主体にした作品を作っています。

     a) 赤楽茶碗は800~900℃の温度で、一度に数個の作品を焼きます。

     b) 黒楽は窯の中に据えられた匣(さや)の中に入れて、1個づつ焼きます。

     c) 黒楽の焼成の仕方

      イ) 素焼きし刷けで黒釉を施した茶碗を用意します。

      ロ) 内窯(屋内に設置された窯)に木炭を仕込み点火し、数時間掛けて温度を上昇させます。

      ハ) 用意した茶碗は窯の脇に置き、余熱しておきます。

      ニ) 所定の温度に成ったら、匣の蓋を取り長い鋏を使って、匣内の五徳の上に作品を置き

        蓋を閉め、更に木炭を供給して、「ふいご」で風を送り急激に温度を高めます。

     ホ) 焼成時間は、25~50分程度との事で、匣の中の作品の火色と、釉の熔け具合を見て

        「ふいご」を止め、匣上の炭を払い蓋を外して、火鋏で茶碗を取り出します。

     へ) 自然冷却で冷やすと、ゆっくり黒い釉が現れます。

     ト) 助力者は、「ふいご」の操作、炭入れ、匣の開け閉めなど担当し、約十人程で焼成するそうです

   d) 作品: 「黒楽茶碗・林鐘」(高8.8 X 径11.6 X 高台径5.3cm)(1959)楽美術館。

      「黒四方茶碗・翠鳳」(高9.3 X 径11.69 X 高台径5.1cm)(1978)。

      「黒流釉茶碗・雄峯」(高9 X 径12X 高台径5.7cm)(1976)。

      「赤砂釉楽茶碗・東風」(高9.1 X 径12 X高台径5.6cm)(1979)楽美術館。

       赤砂釉とは、釉の中に小砂を混ぜ、「ざんぐり」した釉肌にします。三代の道入(のんこう)の

       創作と言われています。

      「赤楽茶碗・烏帽子」(高9.2 X 径12.2 X 径6.3cm)(1976)。

      「黒平茶碗・潮騒」(高6.5 X 径14 X 高台径6.4cm)(1975)楽美術館。

      「薄青香炉釉平茶碗」」(高6.1 X 径13.6 X 高台径6cm)(1976)。

      「紅葉画白茶碗・秋索々」」(高9.2 X 径12.2 X 高台径5.5cm)(1965)。

      「薄赤桃形茶碗・若紫・」(高8.8 X 径11 X 高台径6.8cm)(1956)。

  ) その他の作品

     ・  「赤砂釉四方水指・夜星」 」(高16.2 X 径14.5 cm)(1975)。

       「焼貫水指」」(高17.7 X 径20.5 cm)(1972)楽美術館。

        焼貫(やきぬき): 大きな作品を焼く時、茶碗を焼成する際に、使用した匣は打ち壊し

        取り除き、徹底的に高い温度で焼き貫きます。そうした作品を焼貫と呼んでいます。

     ・ 「飴釉手付花入」」(高20.5 X 径11 cm)(1973)。

    ・ 香合の作品: 「赤楽大黒天香合」(高6 X 径8cm)(1971)。

      「白楽鵜香合」(高6.1 X 径8cm)(1970)。 「赤楽雛香合」(高8 X 径8.2 cm)(1956)。 

2)  十五代(本名:光博): 1949年(昭和20) ~

    十四代の長男として京都に生まれます。

京都府立朱雀高校卒業。東京芸術大学彫刻科卒。ローマ・アカデミアに留学しています。
 
1981年 十五代を襲名します。
 
日本国内外で数々の賞を受賞し、単なる職人としてではなく「陶芸作家」としての評価も高く、
 
樂焼を海外にはじめて紹介する等、国の内外においても現在活躍中です。

 次回(松林豊斉)に続きます。

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