わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 5 土(粘土)に付いて 5

2014-10-12 22:39:28 | 素朴な疑問
疑問8 粘土の「結晶水」とは?

 ① 粘土には「結晶水」も存在しています。これは、焼成によって蒸発しますので、天日干し

  程度では、無くなる水分とは別のものです。「結晶水」は、分子やイオンと共有結合を作らずに

  結晶中に含まれる一定量の水の事です。但し、この言葉は現代の無機化学では既に廃れている

  との事ですが、便利な言葉なので、焼き物の世界は、普通に使われています。

 ② 加熱する事で「結晶水」は少しずつ失われます。

   350℃程度から失われ始め、450~700℃程度で完全に無くなります。

   尚、陶芸で使用されている、一般的な粘土では530℃程度が一番、蒸発が盛と言われています。

   上記温度範囲は、粘土の種類によって左右されます。

 ③ 又「結晶水」が失われ事で、結晶構造が変化します。

   粘土は、固くなりはじめ、水を加えても元の粘土に戻らなくなります。

   詳細は後日お話します。

疑問9 肉が厚い程、焼き物は丈夫か?

 ① 確かに完全に焼き上がった作品では、肉厚の厚い程、機械的強度が強いのは事実です。

   但し、焼き上がるまでの過程では、肉が厚い事は問題です。特に乾燥時に偏肉と呼ばれる、

   一部のみが肉厚の際には、「割れ」などを引き起こしなす。

 ② 肉の厚い場所は、周囲の肉厚が薄い所より、乾燥が遅くなります。即ち周囲の土同士は乾燥し

  収縮して行く段階で、互いの土の引っ張り合いを演じます。肉の厚い部分は、乾燥が遅く周囲

  から引っ張られます。その結果、乾燥時に「ひび割れ」を起こします。特に底部分は乾燥が遅く

  「底割れ」を起こし易いですので、乾燥時に注意する必要が有ります。作品は上部から乾燥が

  始まりますので、均一に乾燥できる様に、時々作品を伏せて乾燥させる事も多いです。

 ③ 肉の厚い土は、薄い部分より収縮量が大きくなり易いです。又、先に縮んだ部分から形が変化

   します。その為、乾燥の差と共に作品が歪み易くなります。

 ④ 肉厚の厚い作品は、表面は乾燥している様に見えても、内部までシッカリ乾燥しているとは

  限りません。乾燥が不十分の場合、素焼きの焼成で、水蒸気爆発を起こします。

  この爆発で作品は粉々になってしまい、周囲の作品にも悪い影響を与えます。

  それ故、肉厚の厚い作品は時間を掛けて、じっくり乾燥させる必要があります。

 以上の事から、作品が焼き上がるまでは、肉厚が厚い程丈夫とはいえません。なるべく作品全体の

 肉厚を一定にする方が無難なです。

疑問10 土を寝かすとは?

 ① 焼き物では「土を寝かせて使え」と言われています。採取した土で坏土(はいど)を作ります

  が、作った土を直ぐに使うのではなく、数ヶ月~数年の間放置し、成形し易い土にしてから使用

  します。この数ヶ月~数年の間、土を放置する事を「土を寝かす」と言います。

 ② 単に放置するのではなく、乾燥しない様に濡れた状態にして置く必要があります。

  その為、土に覆いを被せ、時々水を打ち乾燥を防ぎます。又ビニール袋などで密封しては効果が

  ありません。必ず空気に晒す(さらす)必要があります。

 ③ 「土を寝かす」目的は、土に粘りを増し、成形時や感動時に土の切れを予防する為です。

  大皿など口径の大きい作品では、成形時に口径を広げる際、口縁に切れが発生する事があり

  ます。即ち、土を長期間放置する事で、微生物やカビ、苔などが発生しその生成物が土に粘りを

  与えると言われています。この生成物は有機物ですから、素焼きなどの焼成時に燃えて仕舞い

  ますので、「土を寝かす」のは、当然乾燥までの効果しかありません。

以下次回に続きます。

コメント
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