10月11日(祝日)、私が所属している茶道・上田宗箇流井原遠鐘クラブの研修旅行があり、初めて参加いたしました。井原文化教室、岡本社中との合同企画で、参加者は総勢20名でした。事務局に確認したところ、井原遠鐘クラブとしての研修旅行は、平成11年以来、実に11年ぶりとのこと。前回は、宗箇山登山だったそうです。
今回の研修旅行の最初の訪問先は、現在、陽明文庫・国宝展が開催されている広島県熊野町の「筆の里工房」でした。入口を入るとフロアーには、受付、ミュージアムショップなどがあり、展示場はその下、1階になっています。傾斜地を利用して建てられているため、入口は2階になっているようです。
学芸員の方に案内されて1階に降りると、まず迎えてくれるのが、世界一大きな筆、ギネスに申請したそうですが、どうも筆とほうきの区別がつかないらしく、認めてもらえなかったそうです。材料は馬の尻尾だそうですが、実際、筆として人間が使えなければ筆とはいえない、私にはそういう気がしました。
特別展では、陽明文庫収蔵品の中から、藤原定家の書など国宝8件、重要文化財9点を含む計50点が展示されていました。書にはまったく、うとい私には、達筆がどういうものかまったくわからなくなりました。
しかし、江戸の時代からどうして、山間部の熊野町に筆という産業が発展してきたのか、興味あるところです。筆の材料はイタチ、タヌキ、馬、ヤギ、鹿、リスなど獣の毛を使用していますが、そのほとんどを中国やアメリカ、軸は岡山県や島根県から仕入れているそうです。つまり熊野産のものは何もないということです。農繁期に大阪・奈良などで筆や硯を買って売って歩く、これが熊野と筆とのかかわり合いです。このあたりは、近江商人と似ていると思いました。それから、藩や県が振興を推し進め産業として根付いたということでしょう。 種類も、毛筆用から、画筆、化粧筆と種類は様々です。今では全国の80%から90%を熊野産が占めているそうです。たかが筆といっても高価なものは数十万もするそうですから驚きですね。