雨が上がるとビックリするほどの生暖かさに包まれた。春の空気である。土の香なのか草木の匂いなのか、冬にはなかった匂いが漂っている。行き交う人が「暖かくなりましたね」と言う。見上げると桜の枝先も心なしか膨らんでいるような気がする。「いや、まだ春は先だよ」と先輩が言う。「もう1か2回、寒さが来る。寒の戻りというやつだ。春はそれからだから、やはり今年の桜は遅いと思う」。そうなのか、春になれば何もかもよくなると思うから、ついもう春になったと喜んだけれど、もう少し待たなくてはならないようだ。
直径が50センチはある大きな鉢の水仙はまだ咲かない。葉はよく茂っているのに花の茎が見えない。その鉢の傍を毛虫が1匹、蠢いている。体長は4センチくらい、全体は黒いが背の真ん中に赤い線が入っている。ヤマスミレの葉を食い尽くしてくれる毛虫だが、殺す気にはなれなかった。先の先輩の話では、気温が15度を超えると虫の活動が活発になるという。確かに、昨日から今日にかけて気温は15度を超えたのではないだろうか。すると毛虫はいつ孵化したのだろう。この毛虫も蛾になるためにはサナギになるはずだが、それはいつどこで行うのだろう。
私は先輩が「1日に10人の人と話し、100ページ本を読み、1千字の文字を書き、1万歩を歩く」ことを日課としていると聞き、それなら1日に1千字を書くことなら自分にもできると思いブログを始めた。中学からの友だちもブログをやっていると言うので、お互いに続ける約束をした。彼は生真面目な性格なのか、1日も欠かしたことがないが、私は旅行や飲み会などがあれば休んでいる。友だちのブログを読むと、おおらかな人物と思っていたけれど意外に神経質な面もあることに気付いた。彼は私のことをどう見ているのだろう。自分の姿は自分ではよく分からない。毛虫もまさか自分が空を飛ぶようになるとは思っても見ないだろうが、虫も先が読めたら面白いだろう。
1日に1千字のつもりが、パソコンが変わってから2千字になってしまった。2千字はちょっと多い気がする。自分が新聞を作っていた時は、1つのコラムは600字としていた。気安く一気に読める文字数は、600から800字くらいが適している。書く人は「原稿用紙で1枚半です」と聞くと、そのくらいならと思うようだ。しかし、実際に書き始めると「この文字数では足らない」と言う。そこで添削するので、簡潔な読みやすい文章になる。1千字ならば、余計なことも書けるので書きやすい文字数だろうと思う。ところが今、倍の2千字になっているのは、簡潔な文章を書く力が落ちた結果だ。
長い文章のよい点はヘンなコメントが来なくなったことだ。流し読みしていく人が減ったのだろう。誰でもコメントを寄せてくださっても構わないのに、近頃はコメントを寄せてくれる人がいない。これもちょっと寂しいものだけれど、こんなにも長い文章を読むのは骨が折れるのかも知れない。それでも最近、閲覧者数が1千を越えたり、訪問者数が3百を超えたりすることがある。いったい誰が読んでくれているのだろうと不思議に思う反面で、これは止められないなと気持ちを引き締めている。