「タメ口」という文字を最近よく目にする。「タメ口」って何か、知らなかった。対等あるいは同じという意味の「タメ」に、口ぶりの「口」を付けたものという。「タメ」は元々は賭博用語で、これを不良少年らが好んで使ったことから一般化したらしい。実際にはどういう言葉を指すのかと思っていたら、小学生から高校生まで、日常的に使っている。今日も運動場で少年野球クラブが練習をしていたが、コーチのすさまじい注意が飛んでいた。
「お前らー、何やってんだ、バカかあー」。小学生の女の子が男の子に向かって「うるせーんだよ」と言っているのを聞いたこともあるし、気をつけて聞いていると、小学校の女の先生も野球クラブのコーチのような話し方をしている。私たちの子どもの頃は、男の子の中には乱暴な言葉遣いをする子もいたけれど、いくら友だち同士だからでも、「お前」とか「貴様」とは言わなかったように思う。友だちを呼ぶ時は「クン」「サン」付けだった。
ところが私の娘たちはダンナを呼ぶ時に、「クン」を付ける。「クンではなくて、サンの方がいいのではないの」と私が注意すると、「サンよりはクンの方が親しいのよ」と言う。最も親しい呼び方は呼び捨てだとも言う。娘に自分の名を呼び捨てられたならギョッとしてしまう。そう言えば、最近は女の子がわざと男のこのような言葉を使う。逆に、男の子のなかにはテレビに出てくる「オカマ」の言葉遣いを真似る子もいる。
敬語や謙譲語の使い方とか、男言葉とか女言葉とか、日本人は言葉を大事にしてきたけれど、その言葉遣いが変わってきたことは確かだろう。それを「乱れている」と言う人もいるけれど、私は言葉が時代と共に変化するのは仕方のないことだと思っている。男女平等などと主張しなくても、男の子が女言葉になり女の子が男言葉になりつつあると誰かが指摘していた。言葉に厳格だったNHKでもやたらと、たとえば昼のスタジオなら「昼スタ」と短くする風潮にある。
先日、高速道路の料金所でお金を払った時、係りの人から「アリガトウ」と言われた。年齢は私と同じくらいかもう少し若い、定年退職後に働いているらしい感じで、元校長というような堂々とした恰幅の人だった。おせっかいな私は車を降りて、「その言葉遣いは間違っていますよ」と言いたかった。お金をいただく側は「アリガトウゴザイマシタ」と丁寧に言わなくてはならない。コンビニやファーストフードの店員さんの方が若いのにキチンと対応できている。
もうすぐ3歳になる孫娘の最大の遊び相手はiPadで、難なく操作して遊んでいる。夢中になっている時に声をかけても見向きもしない。この孫娘は言葉もよく知っているが、「イヤ」と言い出したらテコでも動かない。こんな風にiPadで知識を増やしていくのはいいが、果たして正しい言葉遣いが出来るのだろうかと心配になる。子どもが言葉を覚えるのは、子どもの身の回りにいる人たち、とりわけ母親や父親の会話から自然と身に付けていくものだ。子どもの「ごっこ遊び」を聞けばその家の様子がよく分かる。孫娘は明日、遊びに来るらしい。