7月で3歳になる孫娘が昼から来ると言うので、午前中は植木鉢の土の入れ替えを行った。鉢の土を出して、チューリップの残っている根を取り除き、これにバーク堆肥や腐葉土を混ぜ合わせて新しい土をつくるのだが、この作業は実に骨が折れる。適当にやればいいのだが、やり出すとどうしてもトコトンやってしまうので、1つの鉢の土の入れ替えに40から50分もかけることになる。この作業が終わると次に、種を蒔いて育てたサルビアの苗を植えつける。友だちが「サルビアは発芽率が低い」と教えてくれたのに、毎年そこそこの苗が育つので、今年も出来ると侮ったのがいけなかった。
種蒔き床のつくり方が粗雑だったのか、蒔き方が悪かったのか、それとも今年の天候のせいだったのか、確かに発芽率が悪い。それに発芽したばかりの芽をテントウムシに食べられたりして、よい苗は数が少なかった。まあそれでも、20鉢は植えられそうだ。そうなると残りの鉢に何を植えたらよいかと考えなくてはならない。黙々と同じ事を繰り返すだけの仕事がしたいと、介護の仕事の人は言うけれど、何も考えずにひたすら同じ事を繰り返すのにも苦労はある。介護のように人相手ではないから気配りは要らないが、それでも土中のミミズを殺さないようにとか、根を腐らせる菌がいないかと、見張らなくてはならない。
単純で寡黙な作業の最中は、遠い昔のことや、あの時にああ言ったのはどういう意味なのかとか、明日からのことなどの妄想が駆け巡り、私はこうした単純作業が苦にならない。それでも3時間も続けるとさすがに腰が痛くなる。お昼ご飯を食べて、横になっていたらいつの間にか眠っていた。3歳になる孫娘は午後2時半過ぎに母親である長女とやって来た。長女は自分の仕事がしたいのだが、孫娘が離れないので、ジジババに孫娘と遊んで欲しいというのである。「パパちゃんとブランコに乗る」と言うので、ご指名とあっては仕方ないとふたりで公園へ出かけた。
お目当てのブランコのところに来ると、隣のブランコに男の子がやって来た。その子が「何歳?」と孫娘にたずねる。「3歳」と孫娘はサバを読む。「ぼく、5歳。8月5日で6歳になる」と男の子は言い、「可愛いね」と孫娘に言うが、これは駆け引きなのか無視。孫娘がシーソーに向かうと男の子は先回りして、「乗ってもいいよ」と上げ下げしてくれる。そればかりか、「森に連れて行ってあげる」と今度は公園の中の丘になった林へと手を引いてくれる。初めての場所なので孫娘は戸惑っていると、「抱っこする」と言って、いきなり抱きかかえて丘を登ってくれた。いくら3歳近く歳が離れていても、まだ女の子を抱っこするのはしんどいはずなのに。
公園にいる間、男の子はずーと傍にいて、時々手をつないだり、孫娘が嫌がるのもかまわずに何度も抱っこしたり、孫娘が「帰る」と言うと「もう帰るの」と口惜しそうだった。結局、彼のおかげで長い時間、公園で遊ぶことが出来て、私は大いに務めを果たすことが出来た。それにしても男の子は5歳にして女の子のご機嫌を取る為に並々ならぬ努力をしなくてはならないようだ。にもかかわらず、3歳の孫娘は全く意中にない様子だった。