国際交流フェスタの時、「とにかく来てくれ」と頼まれて出かけた。DVD映画の担当だったが、操作は知らないのでただその場にいればよかった。私の他にも頼まれた数人いた。つまり、サクラとして呼び出されたのだ。DVDはインド映画で、私をはじめみんな始めて見るものだった。この日の作品は2本ともストリーらしいものはなく、同じような場面が何回となく映し出され、上映時間は3時間と長くてウンザリだった。
1本は喜劇で、歌と踊りが全編の半分を占め、残りは香港映画のカンフーを取り入れたアクションと西部劇を思わせる馬車の追走シーンなど、多国籍のごちゃ混ぜだった。もう1本は、娘が嫁入りするまでを描いたもので、一族の絆とともにそれぞれが抱える家族の一人ひとりを追ったものだった。日本の小津安二郎風の家庭劇だが、かなりドロドロと描いている割にはスローテンポで眠くなってしまった。
ボランティアスタッフには地元の名産「イチジクドレッシング」が無料配布された。私と同じDVD担当の中に高校生がいた。彼は遅れてきたので「まだドレッシングはもらっていない」と言う。「じゃあ、受付でスタッフである名札を見せて、もらっておいで」と教えた。しかし遠くから見ているとどうもお金を払っている様子だ。戻ってきた彼に、「無料でもらえなかったの?」と言うと、「ええ、名札は見せたけど、『400円です』と言われたので払いました」と答える。「そうか、まあ寄附したと思えばいい。その代わりにコーヒーをご馳走するよ」と慰める。
高校生に、「そういうのを日本の諺でなんって言うか?」と出題するが、彼は「わかりません」と答える。すると物知りの先輩が、「『情けは人のためならず』。可哀想だから助けてあげるのではなく、自分が助けられることになる、つまり自分のためというわけだ」と教えた。高校生はきょとんとしていた。けれどまあ、大きくなれば諺の意味を理解する体験もあるだろう。