「メンタルが弱いのね」と、テレビを見ていたカミさんは言う。カミさんはメンタルに強いかもしれないが、私はスポーツ選手ほどのメンタルも備わっていない。ソチでのオリンピック競技を見ていて、期待の日本人選手がメダルに手が届かない原因を分析しているのだ。どこのテレビ局も日本がメダルを幾つ持って帰るかと話題にしていた。有力な選手のインタビューでは3位以内に入ることが当然のような扱いだった。
選手のみなさんも、「メダルをとって帰ります」とか、「頑張って、一番キレイなメダルを目指します」とか、言っていた。まるで、戦場に行く戦士のような決意表明だった。言葉にすることで自らを叱咤しているのだが、たかがスポーツではないか、そんなに悲壮感いっぱいにならなくてもいいのではないか、「頑張ってきます」くらいでいいよと思う。どうみても周りの期待に押しつぶされてしまいそうだった。
スケートフィギアの浅田真央さんや鈴木明子さん、ジャンプの高梨沙羅さん、スケートスピードの選手など、期待が大きかっただけにとても緊張している様子だった。適当な緊張感は大きな力になるけれど、過度の緊張は身体を硬直させるようで、スムーズな動きができないばかりか、ミスが出たりもする。「普段の練習どおりにできれば、必ず上位にいけたのに」と、カミさんはメンタルの弱さを指摘するのだ。
「ハングリー精神が足りないね」と言うけれど、ハングリーではないのだから仕方ない。日本人選手で最初にメダルに輝いた、スノーボードのハーフパイプの平野歩夢さんと平岡卓さんのインタビューを聞いても、ハングリー精神は感じられなかった。むしろ10代の2人は、「ヤッテヤッタゼ」といった雰囲気だった。中学生と高校生らしく、「ス」とか「自分的には」とか、若者言葉が溢れていた。それでも「両親や応援してくれた皆さんに、感謝します」と結び、日本人の謙虚さを見せてくれた。
そういう謙虚さは大事だと思うけれど、これがまた選手のみんなが言い出すと、まるでそう言いなさいと統制されているのかという印象になる。スポーツなのだから、勝ちもあれば負けもある。全力を尽くせばそれでいい。国を背負っているような使命感よりも、楽しんでやって欲しいと私は思う。上村愛子さんの試合後の言葉はとても爽やかな印象だった。