中学3年の時の担任が、クラス誌を作ってくれた。卒業する時に第1号が、高校時代に第2号が、そして大学を卒業する21歳の時に第3号が作られたと思う。先日、整理していたら金属製のあられの箱の中に第3号があった。誰か第1号・第2号を持っていないかと聞いたけれど、誰も持っていなかった。第3号を眺めているうちに、担任の思いが伝わってきて、複製本を作ろうと思い立った。知り合いの印刷屋さんに相談したら、「このままの形で残せますよ」と言う。
その複製本が出来上がってきた。あの頃、先生はガリ版で仕上げ、ご自分で製本もされたのだろうか。1文字1文字、全て先生が鉄筆を握って書いたものだ。そればかりか、編集も実にキチンとされていて、無駄な余白は一切ない。縦書きを基本にしているのに、横書きのページもあり、それが見事なほどきれいに収まっている。さすが数学の先生と言うべきか、先生の几帳面さがよく分かる。一つひとつの見出しには飾りも入れてあり、手書きでこれだけのものを作った、時間と情熱に圧倒される。
第3号の中身を見ると、巻頭言と見出しページがあり、クラス会の思い出、大学の紹介、中学を卒業してすぐに働いた友だちの対談、先生が受け持った私たちや後輩たちとの座談会、随筆、詩、短大へ進み結婚を夢見る女の子との座談会など、幅広い。先生はみんなを呼んでは話を聞き、それを整理して書き上げ、クラスのみんなにこれを配ることで、お互いがいつまでも身近に感じられるようにと思ったのだろう。実際に読み返してみると、一人ひとりが鮮明になってくる。先生の話しぶりも甦ってくる。
先日、大府にいる友だちに電話して「『麦の歌』を複製したからみんなのところに配りたい。付き合ってくれ」と言うと、快く引き受けてくれた。今、我が家には車が1台しかないので、カミさんが使用する時は遠慮しなくてはならない。彼に車を出してもらって、何件か回りたいし、できれば高校へ出かけていって、彼が編集していた文芸部の機関誌『くちなし』が残っているか、確かめて来たいとも思っている。