来週行う井戸掘りに向けて、道具の点検をした。長い間使っていなかったのでサビ付いていた。サビを落として油を塗り、刃はグラインダーで磨いてもらうことにした。何があって何が足りないのかを確認しておかないと、現場に行って作業が出来なくなっては、依頼主から「この人たちで大丈夫か」と思われてしまう。
井戸掘りの手順についても、先輩から言われて受け身でやってきたので、なんとなく覚えているに過ぎない。何カ所かで井戸掘りをしてきたのに、作業中の写真も完成した写真も数少ない。作業しながら記録を残すのは難しいと今更ながら気が付いた。午前中で作業が終わり、みんなで一緒に昼飯を食べた。すると、新しくメンバーになった後輩のケイタイが鳴った。
カミさんから「お昼ご飯は食べるの?」という問い合わせだ。どこのカミさんも「食べるなら早く知らせてくれないと作れないからね」と、ダンナのことより食事作りが気になるようだ。カミさんが介護施設に入っている先輩が「心配してくれるだけ幸せですよ。元気なうちに夫婦喧嘩でもいいからいっぱい会話しておくことだね」と言う。
「朝から晩までひとりで暮らしていると、何にもしたくなくなる」とも言う。「医者から『趣味とか好きなことはないかね?』と言われて、『どうしてですか?』と聞くと、『このままではウツ病であなたまで倒れてしまうよ』と注意され、できるだけ外に出よう、人と接するようにしようと思った。みなさんとやらせてもらい感謝しとる」と先輩は言う。
今年は地域の役を引き受けたことも先輩を元気にさせた。「隣の奥さんが、『煮物をしたから』と持ってきてくれたりして、ご近所のありがたさに今頃になって感謝している。働いている時は仕事一筋だったし、ご近所のことは女房任せだったから顔もよく知らない程だった」と。「地域で助け合うことが一番いいですよ」と相槌を打つ。ひとりで飲む酒は美味しくないけれど、仲間でワイワイやりながら飲めば楽しさも違う。
家に帰り、ひとりでルーフバルコニーに出て、咲き終わったチューリップを鉢から取り出し、土の入れ替えの作業にかかる。しばらくすると、風が強くなって土ホコリが目に入って痛い。今日はこれまでと3鉢で終えた。