高校の時の新聞部の仲間に、「できたら本葬に参加して」と連絡しておいた。最近は、通夜には多くの人が参列するのに、本葬になると少ない傾向がある。現職ではないから、参列者が少ないことは予想された通りだった。新聞部の仲間は5人来てくれたから、亡くなった友だちを加えれば6人で、いつもこのメンバーで行動していた。
そうは言っても、決して群れていた訳ではない。ひとり一人かなり個性が強かったし、考え方も違っていた気がする。最も過激だったのは、声がでっかくて身体の小さい男で、亡くなった男は中庸を守っていたというより、学校から目を付けられるようなことは避けていた。一家の長男だったが一番下で、親に迷惑をかけられないと思っていたのだろう。
新聞部のマドンナに、「初恋の人の棺に花を添えてあげたら」と私が言うと、「初恋の人じゃーないわよ」と言う。「あなたの初恋の人ではないかも知れないけど、彼はあなたが好きだったよ。ボクは彼からあなたが『好きだから、間を取り持って』と言われ、ボクも好きだったけど、男の友情として身を引いた」と話した。実際、その後、ふたりは交際していた。
葬儀が終わって、近くの店で5人で食事をした時、マドンナから後日談を聞いた。亡くなった友だちから交際をやめると手紙が来たと言う。そればかりか、その後、ふたりの同級生の女性と付き合っていたようだ。マドンナが駅の待合室でバスを待っていた時、彼と彼女が電車から降りてきて、彼女の家へ歩いて行った。そしてしばらくすると、彼はひとりで駅まで戻ってきたが、待合室のマドンナに目を向けることもなかったと言う。
けれど、彼が結婚したのは全く別の女性だった。ニヒルでちょっとシャイで、格好つけていたけれど、真面目な性格だったが、意外に恋は多かったのか。そんな友だちの話で盛り上がった。3度も結婚している仲間は、「オレはカミさんから『優しい過ぎる』と言われてフラれた」と告白する。マドンナが、「そうよ、優しいだけではダメよ」と断言する。それでいて、仲間が高校時代好きだった女性の電話番号を教え、「病気だから、元気づけてあげて」と言う。
「ひとり亡くなったから、これで新聞部の集まりは終わりにしよう」と私が提案するが、「やれるうちはやろう」と否決された。いつまで続くかな?