電車に乗ると、昔は文庫本を読むのが常だったが、今は人間観察を楽しんでいる。若い人はもちろん年寄りも、ほぼ全員がスマホを操作している。ゲームをしているのか、通信をしているのか、私には分からないが、指が素早く動いている。周りの人を気にする様子はないので、私はひとり一人をじっくり観察できる。
見ていて、若い人の指は誰もが細くて長いことに気が付いた。そして指が異常に白い。男も女も、手が白くてきれいだ。指だけを見ていると女性かと思うような男性もいる。手がとても白くてきれいなので、顔も色白なのかと思うと、ちょっと違ったりする。私たちの若い頃も、こんなにみんなきれいな手をしていたのだろうか。
日本人は平均的に、色白になっている気がする。それにしても若い人で、文庫本など読んでいる人はいない。本を読んでいるのは中年以上で、スマホを操作していない人はイヤホーンで何かを聞き入っている。友だち同士でない限り、昔も今も乗客は孤独だけど、何か昔とは違う気がする。電車の中で恋が芽生えることはもう、無いのだろうか。
コンビニの女性店員がニコニコと接してくれたのを勘違いして、セクハラ行為を働いた男がいたが、今日も書店で本を買った時、私が持っていた別の書類を見て、若い女性店員が「そちらもご一緒に入れましょうか」と笑顔で言った。それだけのことなのに、何故か優しい人だと思い嬉しくなった。こんな年寄りでも男性とみてくれていると勝手に勘違いしてしまったが、「お気をつけて」と言われて、年寄りへの配慮なのだと気が付いた。
街をスタスタと歩く若者に比べ、年寄りは歩き方が遅い。自分では背筋を伸ばして歩いているつもりだが、ひょっとすると背中が丸くなっているのかも知れない。歳を取らない秘訣は恋をすることだという。そういえば友だちの中でもいつも女性にアタックしている男は元気がいい。先日の宴会に来なかったから、次回はきっと恋の話で盛り上がることだろう。