もうすぐ3回忌を迎える友だちのカミさんから頂いた年賀状に、「新聞部に入部したのは主人にとって、かけがえのない日々だったと思います。なかなか会えにくい状況ですが、お会いできたらいいなと思っています」と、私ともうひとりの名前が書いてあった。
2019年2月10日、彼女から電話をもらった時はビックリした。友だちは随分前に脳梗塞を患い、半身マヒの身体になってしまった。それでも新聞部の集まりには参加してくれていた。桑名でやった時が最後だったが、その時も彼のカミさんが車で送迎してくれた。
私たちが出会ったのは高校1年の時だから、もう60年も前になる。高校に入学したら新聞部に入ると私は決めていたが、実際に部室に行ってみると1年生は私の他には4人しかいない。2年生も生徒会の役員になってしまい、人数が足りなかった。
1年の私のクラスに、よくしゃべる男がいた。その席の前に、無口だが賢そうな男もいた。ふたりに「新聞部に入らないか?」と誘ったところ、快く入部してくれた。それが彼との付き合いの始まりだった。無口な男は孤独を楽しむようなダンディーな面と、人の良さを持っていた。
私たちはとても仲良しになっていたので、夏休みに本宮山のくらがり渓谷へみんなで出かけた。ところが途中で大雨になり、道も分からなくなってしまった。発案者の私は岩の上で一人ひとりの手を取り、みんなを導いた。私は初めてマドンナの手が柔らかいことを知った。
ところが友だちから、「オレ、マドンナが好きだ」と告白され、我らが友情のために、私は身を引いた。大学の時は、東京の彼の下宿に泊めさせてもらった。私があまり酒が飲めなかったので、「口に指を入れて吐き出せばまた飲める」と彼は教えてくれた。
そんな無茶苦茶が彼の命を縮めた。組合の書記長を引き受けるような男ではなかったのに、彼の中の男気がそうさせたのだろう。私には慎重な男のように見えたけれど、みんなのために頑張ってしまう熱い魂が燃えていたのだ。明日、彼のカミさんとどんな話ができるか、楽しみだ。