先輩が、「コロナ鬱が流行っているそうだ。誰にも会わず、やることもない、そんな日常が続いているのが原因だ」と言う。彼は積極的に家を出て、買い物をしたり、街中を散歩したりして気分を変えていると話す。私はほとんど家から出ない。
朝、ルーフバルコニーに出て花を見て回り、水遣りをする以外は部屋に籠っている。睡眠時間は毎日、8時間を超えているのに、昼食後は1時間ほど昼寝をしてしまう。それなのに、本を読んでいると睡魔に襲われる。
身体のどこが悪いということは無い。右肩から首にかけて痛い。けれど、いつもいつも痛い訳では無く、動かしたりした時に痛みを感じる程度だ。それもやり切れない痛みでは無い。気になるのは首の骨がコキコキと鳴ることと、咀嚼が遅くなったことだ。
人は歳を取ると、若い時とは違うことが起きるし、気力が漲ってこない。もう充分に生きたから未練は無いが、もし、迎えが事前に分かるなら、「最後の恋」が訪れて欲しい。小説を読んでも、科学書を読んでも、「男と女は分かり合えない」とある。
確かにそうだろう。自分の妻や子でも分かっていることは少ないし、分かっているつもりでいるだけだろう。だから小説家は小説が書ける。それはよく分かる。何も全てを分かる必要は無いのだ。愛することに報いを求める必要は無いのだ。夢を追いかければ、鬱も吹っ飛ぶだろう。