中学からの友だちがブログに、よく昔のことを書いている。それを読んでいたら、いろんなことがあったのだと思い出した。私たちの高校には郷土研究クラブがあって、その部長を務めていたのは同じ中学の卒業生だが、中学の時に話した記憶が無い。
卒業アルバムを見たら、クラブにはずいぶんたくさんの部員が写っている。部室は私がいた新聞部よりも奥にあって、一度くらいは覗いたと思う。何年生だったか覚えていないが、部長だった彼から誘われて、二度も鍾乳洞探検を経験した。
初めは豊橋の山奥にあった、「蛇穴」と呼ばれていたところだった。私が彼に言われて用意したのは縄で、入口付近に結びつけ、懐中電灯を持った彼の後ろをゆっくり下っていった。縄が無くなると入口に戻って、改めて無くなったところの目立つ石に結びつけて進んだ。
2度目は滋賀県の醒ヶ井にある「河内風穴」で、こちらも同じようにして探索した。2度とも一緒に行ったのは私だけだったので、部員が少ないのだと勝手に思っていた。それにしても彼はなぜ、そんな鍾乳洞を知っていたのか、なぜ探検に私だったのかと思う。
彼から3度目の誘いがあったのは、高校3年の卒業間近な時だった。1学年下の放送部の女生徒の家に、「一緒に行ってくれ」と言う。彼がその子が好きだと分かっていたので、ひとりでは行きにくいからと頼まれたら断ることは出来なかった。
学校の先生の娘さんと聞いていたが、立派な家で通された和室の客間も厳かな雰囲気だった。彼女がたててくれたお茶を飲んだ。何の話をしていたのか全く覚えていない。帰る時になって、彼女が私にそっと近づいて、「今日はありがとうございました。私が卒業するまで待っててください」と言う。
えっ、どうして?それを言うなら彼にだろう。私は何も言えずに「さようなら」とお辞儀をした。私は初恋の人に振られたばかりだったが、何だか、彼に申し訳ない気がした。彼は嬉しそうに後ろを振り返って手を振っていた。彼と彼女がその後どうなったのか、私は何も知らない。