とうとう守山区での井戸掘りは不成功に終わった。5mから6mまで掘れたなら、水があることは確実な土地なのに、川原にある漬物石くらいの石が多くて、掘り進められなかった。とはいえ、実際に作業したのは依頼主と息子さんで、私たちは手伝いをしただけだった。
でも先輩は、「本当に悔しい」と肩を落とす。私たちとしては、井戸掘りを成功させられなくて申し訳ない気持ちで一杯だった。私たちに人智と時間の余裕があれば、もう少し役に立ったかも知れない。鉄管で掘る経験が1度でもあれば、いやインターネットにある「鉄管で井戸を掘る」動画を見ていれば、また違ったかも知れない。
とにかく撤収となった以上、グズグズ言うのは止めよう。依頼主は「ああしてみよう、こうしてみようと考えながら作業して、楽しかったです」と言ってくれた。私たちがチェーンブロックを使って、鉄管を抜いているのを見ていた隣りの家の主人が、枯れてしまったミカンの樹を指さして、「それでこの樹も抜いてくれんかね」と言われた。
ここでの最後の仕事とばかり、撤収の後でミカンの樹を根こそぎ抜いた。見事にチェーンブロックの力が発揮され成功した。隣りの家からは飲み物をいただき、井戸掘りの依頼主からも「最期に成功して気分よかった」と笑顔をもらった。どんな些細なことでも、成し遂げることには喜びがある。
先輩は「死ぬまでやる」と意気込むが、腰が痛くて立っておられない。けれど、確かに私たちが経験した井戸掘りを後輩たちに伝えていきたいと思う。そんなに金がかからず、時間も労力も必要としない井戸掘りを何とか伝授していけたらと思う。まだ私たちが元気なうちに、次世代に伝えていきたいものだ。
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