5月28日から公開されている映画の原作を読みました。最近は映画をほとんど見なくなった私が、「東京島」といい、本作といい、原作を読むのは、ひとえに、出張の機内で読んで、現地駐在員に進呈するのにちょうどよい軽さだと思うからに他なりません。しかし、この本は文庫で500頁を越える厚さで、北京や上海が予想以上に近かったために、情けないことに読み切れずにわざわざ持ち帰って読むハメになりました。
映画化されたキャッチコピーは「大阪全停止。その鍵を握るのは、トヨトミの末裔だった。」
その設定の奇抜さが命とも言える作品です。著者自身のふるさとであり、著者自身も語っているように、所謂「吉本」が築き上げたイメージに乗らないように、マスコミやテレビのバラエティで強調されている大阪色に染まらないように(文藝春秋のインタビュー)、描くことにはそこそこ成功しており、実はその媚びない抑制した姿勢こそが設定の奇抜さを支えるベースとしての雰囲気を醸し出し、その肩の力の抜け加減に好感が持てます。
大阪にもいろいろあって、大阪の下町育ちで、こってり系の根っからの大阪人もいれば、私のように九州で生まれながらモノゴコロつく頃から大阪にいて、大阪近郊のベッドタウン、いわば周辺で巨人ファンを標榜しながら吉本の息遣いを感じて育つというような、あっさり系の大阪人が多いのもまた現実です。それは東京も同じことでしょう。いずれにしても、人々は移ろい行くけれども、その人々の思いが長年にわたって雨水とともに染み込んで形作る土地柄、その土地から汲めども尽きぬ湧き水のように湧き上がる精神のようなものがあり、その中心地に近づくほどに根強いパワーがあります。
大阪の土地柄は、本書でも述べられている通り、江戸時代、天領でありながら武士が1%にも満たなかった町人の町としての面目です。おかみの権力をものともせず、天皇さんと呼んで権威にもなれなれしい、日本では珍しいくらい東南アジア的な喧騒に充ち満ちた、アクの強い町。高校・大学と、JR京都線や阪急電鉄京都線を通学に使っていた私にとって、就職して初めて使った東急東横線やJR山手線のホームで整然と列をなして順番を待つお行儀の良さは驚嘆に値しました。
この作品は、そんな大阪という土地柄の深層心理をモチーフにしています。受け継がれるものの不思議、時に受け継ぐことの馬鹿馬鹿しさ、その精神が衰えているのではないかという危惧、そのパワーを信じたい思いが、奇想天外なストーリーの中にそこはかとなく感じられます。それぞれの登場人物の名前に歴史上の人物を連想させ、辰野金吾という建築家にまつわるウンチクを語らせて、伏線となし、大マジメにふざけながら、うまくその境界を泳いで、エンターテインメント小説に仕立てています。ちょっと冗長過ぎるところで、★一つ減。
映画化されたキャッチコピーは「大阪全停止。その鍵を握るのは、トヨトミの末裔だった。」
その設定の奇抜さが命とも言える作品です。著者自身のふるさとであり、著者自身も語っているように、所謂「吉本」が築き上げたイメージに乗らないように、マスコミやテレビのバラエティで強調されている大阪色に染まらないように(文藝春秋のインタビュー)、描くことにはそこそこ成功しており、実はその媚びない抑制した姿勢こそが設定の奇抜さを支えるベースとしての雰囲気を醸し出し、その肩の力の抜け加減に好感が持てます。
大阪にもいろいろあって、大阪の下町育ちで、こってり系の根っからの大阪人もいれば、私のように九州で生まれながらモノゴコロつく頃から大阪にいて、大阪近郊のベッドタウン、いわば周辺で巨人ファンを標榜しながら吉本の息遣いを感じて育つというような、あっさり系の大阪人が多いのもまた現実です。それは東京も同じことでしょう。いずれにしても、人々は移ろい行くけれども、その人々の思いが長年にわたって雨水とともに染み込んで形作る土地柄、その土地から汲めども尽きぬ湧き水のように湧き上がる精神のようなものがあり、その中心地に近づくほどに根強いパワーがあります。
大阪の土地柄は、本書でも述べられている通り、江戸時代、天領でありながら武士が1%にも満たなかった町人の町としての面目です。おかみの権力をものともせず、天皇さんと呼んで権威にもなれなれしい、日本では珍しいくらい東南アジア的な喧騒に充ち満ちた、アクの強い町。高校・大学と、JR京都線や阪急電鉄京都線を通学に使っていた私にとって、就職して初めて使った東急東横線やJR山手線のホームで整然と列をなして順番を待つお行儀の良さは驚嘆に値しました。
この作品は、そんな大阪という土地柄の深層心理をモチーフにしています。受け継がれるものの不思議、時に受け継ぐことの馬鹿馬鹿しさ、その精神が衰えているのではないかという危惧、そのパワーを信じたい思いが、奇想天外なストーリーの中にそこはかとなく感じられます。それぞれの登場人物の名前に歴史上の人物を連想させ、辰野金吾という建築家にまつわるウンチクを語らせて、伏線となし、大マジメにふざけながら、うまくその境界を泳いで、エンターテインメント小説に仕立てています。ちょっと冗長過ぎるところで、★一つ減。