風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ロンドン五輪・おわりに

2012-08-20 00:08:25 | スポーツ・芸能好き
 今年は、会社の夏休みがオリンピック後半と重なったせいで、普段通りの生活を続ける家族をよそに、いい気になって夜更かしをして、暑いというより熱い夏になりました。お蔭で時間感覚はすっかり狂ってしまいましたが、日本選手の活躍に大いに勇気づけられ、甲子園といいオリンピックといい晴れの舞台に至る道をドラマ仕立てにして盛り上げようとする報道にすっかり乗せられて、歓喜と感動の涙で、ぼんやり曇った魂がちょっとは浄化されたような晴れ晴れとした感じがしています。いくら雰囲気に騙されていると分かってはいても、少なくとも選手の競技そのものは真実の姿ですから。故・水野晴夫さんに倣って・・・いやあスポーツって本当にいいものですね。
 前回・前々回の場外戦ついでに、最後はアメリカに関するものです。最もほっこりした場外戦(?)と言うべきは、あるラジオ番組でライアン・ロクテ選手が発した言葉に、WSJ紙のインタビューでマイケル・フェルプス選手が応じたものです。ロクテは、(“水泳選手って、プールでおしっこしないんですか?” と聞かれて)「私たちはいつもしています。それは塩素の水に浸かった時に、反射的にやってしまうことなんだと思います。現にロンドンオリンピックのプールの中で、用を足しました。試合中ではなく、ウォーミングアップの時ですけどね」と語り、フェルプスは、(ライアン・ロクテ選手はこんなことを言ったそうですが、フェルプス選手はどうですか?と聞かれて)「みんなプールでおしっこしていると思いますよ」「プールでおしっこするのは、ちょっと馬鹿げたことですが、よく泳ぐ人なら結構普通のことです。私たちが2時間プールの中にいる時は、わざわざおしっこするためにプールから上がりませんよ。プールの壁に寄りかかっている時に、用を足すのです。まあ、塩素で消毒されるから、そんなに体には悪くないでしょう」 まあちょっとレベルが違いますが、小学生の頃、ぶるぶるっと震えながらも用を足す快感とともに、プールに黄色い液体が拡散することへの罪悪感が、頭の片隅に引っかかっていましたが、40年の時を経て、やや解放されたようでした(ロケットニュース)。
 さて、今回のオリンピックは、開会式一週間前にロンドンを訪れて、その熱の余り高くないことを感じ取って、いざネットで調べてみると、事前の盛り上がりに欠ける要素ばかりが引っかかって、どうなることかと案じられましたが、蓋を開けたら熱戦の連続で、平和の祭典として、大いに成功したのではないでしょうか。日本のテレビでは日本人の活躍を中心に、かつてボストン滞在時にアトランタ五輪を見たときには「U・S・A」の連呼に圧倒され、またシドニー滞在時に北京五輪を見たときにはオーストラリア人の活躍の映像ばかりでがっかりさせられる(北島選手の金メダル授与の直前に、あろうことか映像が切り替えられたりもしました)など、小さ目のナショナリズムが高揚するからこそ、オリンピックは盛り上がります。勿論、そこはオリンピックで、見る側もスポーツマンシップそのままに、競技者として他の出場選手に敬意を表し、素晴らしいパフォーマンスを見せた勝利者を素直に賞賛することが重要です。
 そうした中で、ホスト国のイギリスの運営や会場の雰囲気が素晴らしかったというコメントを見かけました。閉会式でロゲIOC会長がボランティアへのねぎらいの言葉をかけたように、「持続可能性」をテーマに、北京五輪のようにお金をかけらないと公言しつつ、みなさんに五輪を楽しんで貰おうという気持ちが溢れていたとか、試合の展開に合わせて、拍手や溜息やブーイングや足踏みなど、観客があらゆる表現方法で試合に参加するというように、「スポーツ観戦力」が高い大会だったと評価するものでした。こうして見ると、テニスの試合はウィンブルドンで、サッカーはウェンブリーで開催されて、競技のステータスを上げたことや、ボランティアがプライドをもちつつフレンドリーに対応したこと、更には開会式や閉会式で、中世から産業革命を経て現代に至る歴史絵巻を見せつけたように、歴史上で圧倒的な存在感を示すことに加え、今なお、エリザベス女王やジェームス・ボンドやポール・マッカートニーやスパイス・ガールズなどのアイコンを抱えることなど、いわばイギリスという国の歴史的・文化的な厚みが、今回のロンドン五輪を背景で支え、格調高い大会として成功に導いた原動力になったのではないかと思います。
 五輪会場が置かれたロンドン東部は、有害物質で土壌が汚染された工場跡地であり、低所得者や失業者が多く暮らす貧しい一帯とされていました。そこを丁寧に除染し、この地域への交通機関を整備し、大型ショッピングモールをつくるなど、周囲を一変させた上、今後は、選手村を住宅施設とし、会場を各種スポーツ施設に転用するなど、オリンピック・パークの再開発計画が、ロンドンが五輪招致で訴えてきたところでした。さて、日本は、東京五輪誘致のために、何を訴えるのでしょうか。
コメント (2)
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