風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

アジア点描

2013-12-19 23:44:11 | 永遠の旅人
 先週は、日替わりで、マニラ、ホーチミン、ハノイ、バンコク、ジャカルタに出張しました。夕方のフライトで移動し、ホテルは寝るだけで、朝、チェックアウトし、昼間、打合せの後、再び夕方のフライトで移動するという強行軍で、何が辛いと言って、晩飯を機内食で済ませることほど空しいことはありませんでした(苦笑)。
 初日のマニラでは、日曜の昼下がりに到着してから夕食までの時間を、マカティ中心部にあるホテル横のショッピング・モールを散策して過ごしました。シンガポールやマレーシアと比べても遜色がないほど巨大なものでしたが、シンガポールやマレーシアと違って、出入り口で金属探知機による持ち物検査があり、また、モール内は人通りが少なくないのに、個々の店内はガラガラというアンバランスなのは、どうやら買い物もせず通路でぼんやり佇んでいる人が多くて、穿った見方をするならば、一流のブランド店で買い物が出来るのは一部のお金持ちに限られ、大多数の人々にとっては、まだまだ憧れのファッショナブルな場所なのではないか・・・と思いました。
 次の訪問地ベトナムでは、やけに街中にバイクが一杯・・・と思ったら、バイク普及率は世界トップだそうです。昔、中国が自転車天国で、いつの間にかバイク、さらに車社会になったのになぞらえれば、その発展段階が想像されます。3000万台といいますから、人口8800万人のベトナムの三人に一人が保有している計算で、そんな喧騒の中を、会社専属ドライバーは、急な発進や急な車線変更を避けながら、阿吽の呼吸で流れるように運転します。混沌の中に見る秩序ありげな動きは、日本人にはなかなかマネ出来そうにない芸当です(因みに会社の規定によれば駐在員の運転は禁止)。それから、ネット・ユーザーも同レベルの3300万人、普及率は38%と言われます。中国と同じ共産党独裁の国ではあるものの、中国が外資系のGoogleなどのサービスを制限しているのに対し、ベトナムでは原則自由で、検索エンジン市場ではGoogleが95%を占める、といったところは明らかに中国と異なりますが、いざGoogle.comを見ようにも繋がらず、Google.com.vnにre-directされてしまうということは、やはり何らかの監視が行われているということなのでしょうか???
 続くタイ・バンコクは、ご存じの通り、混乱冷めやらぬ中での訪問でした。かつて反政府デモ隊が空港を占拠した記憶が蘇り、ちょっと心配(ある意味で期待?)されましたが、バンコク行きフライトは外国人で一杯でしたし、街も普段と変わる様子は見られませんでした。この国はクーデターに慣れているだけあって、反政府暴動などモノともしないと見えます。こうして見ると、日本は、どの政党が政権を担当しようが、誰が総理大臣になろうが、反政府デモやら暴動が起こることはまず考えられない・・・ということは、民主主義の歴史が長く政治的に安定している証左か、はたまた国民が政治に期待せず倦んでいることの表れか・・・。
 最後のインドネシアにしても、いずれ劣らぬアジアの成長市場で、街のど真ん中に工事現場やら工事途中の残骸が放ったらかしになっており、社会的な安定・清潔・高品質・高齢と言うより、変化に満ち、お世辞にも清潔と言えず安普請なところもありますが、若さ溢れる活気を感じさせます。一人当たりGDP3,000ドルは、ようやく個人消費が盛り上がり、コンビニ出店が検討される発展段階にあります。人口も2億4千万と、ポテンシャルを感じさせます。
 因みに、タイの一人当たりGDPは5,000ドル(人口6千9百万)、フィリピン2,000ドル(人口9千3百万)、ベトナム1,200ドル(人口8千8百万)と、人口がそれなりに多いだけに、規模の経済も期待されます。他方、都市国家のシンガポール43,000ドル(人口5百万)は別にして、既にアジアの優等生のマレーシア8,400ドル(人口2千8百万)はそこそこ豊かでも人口が少なく、タイ周辺で期待されるミャンマー700ドル(人口4千8百万)はそこそこ人口があっても貧しく、カンボジア800ドル(人口1千4百万)、ラオス1,000ドル(人口6百万)など、成長期待はあっても経済規模は知れています。そしてこれらの国全てに(都市国家シンガポールを除いて)共通して言える課題は、10,000ドルを越えらるかどうかという、中所得の罠が待ち構えていることでしょう。ごちゃごちゃ数字を挙げましたが、要は、失われた20年を経てなお、1億3千万近い人口を抱えながら平均43,000ドルもの高水準を維持する日本は、日本を離れてアジアから眺めてみると、社会的な自由と洗練さとを含めて、その底力を否応なしに感じさせられ、大いに誇って良い、逆に自信を無くす必要など毛頭ない、とつくづく感じさせられます。
コメント
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