かれこれ15~20年前、アメリカに住んでいた頃、車の選択肢は実質的に日本車かアメ車しかなく、韓国車は見かけることすらなく想像の外にありました。テレビも、選択肢は日本メーカーに限られたもので、私はマレーシア製のソニー・トリニトロンを購入しました。ところが5~10年前、マレーシアやオーストラリアに住んでいた頃、車は日本車でしたが、選択肢として、韓国車が、国産マレーシア車より値段は高い(日本車よりは安い)けれども、国産マレーシア車より品質が良い(日本車よりは悪い)ので、射程に入りつつありました。現にシドニーでは、日本車を購入するまで、経費削減のためではありましたが、レンタカーはHyundaiにしたものでした。それが家電製品になると、品質的には既に日本製とそれほどの遜色はなく、現実的な選択肢として、テレビはサムスン、洗濯機はLGを購入しました。まさに2000年を境に、韓国の製造業が躍進し、日本の製造業が相対的に地盤沈下したのを象徴するエピソードです。
6日前に韓国・珍島沖で転覆した旅客船「セウォル号」沈没事故のお陰で、南シナ海上空で消息を絶ったマレーシア航空(MH370便)の失踪事件は、すっかり霞んでしまいました。そして、この韓国の旅客船沈没事故によって、折角、イメージ・アップして来た韓国の品質が、いろいろな意味で疑問符が付きつけられているように思います。
これまで報道されたところでは、沈没原因は、まず第一に、「高速航行中の急な針路変更」にあるとされ、しかも「現場は韓国でも有数の潮流の速い海域で、その難所を経験1年余りという3等航海士が操船」するという「未熟な操船技術が急旋回に至った可能性が高い」ということであり、さらに船は「日本から購入後、収容人員を増やすために5階部分を追加する形で改造」され、「貨物や旅客が高層階に収容されることで航行中の船体の重心が変わり、航行が不安定になった可能性」があり、「過積載だった」との情報や「操舵装置に異常があった」との報道もあって、こうした「複合的な要因によって韓国史上最悪の沈没事故が引き起こされた可能性が高まっている」ということです(いずれも産経Web 21日)。そして、被害が拡大しているのは、いわば人災の要素が強く、客船の運航会社が「乗組員に定期的に義務付けている避難訓練などをほとんどしていなかった実態」が浮上し、「ずさんな安全管理態勢」のためと見て、捜査が本格化されるようです(同22日)。
それだけではありません。被害者の家族が怒鳴り散らす様は、韓国では夫婦喧嘩でも通りに出て相手のことを大声で詰り自己の正当性を主張するものと聞きますので、さして驚きませんが、重大事故にも係らず、重大事故であるが故に、大統領のパフォーマンスはやや異様に映ります。国民の激しい怒りの矛先が政府に向かうことを避けたい大統領は、船長らが乗客を救助せずに退避したことは殺人と同様の行為だと厳しく非難し、最高刑が無期懲役の特定犯罪加重処罰法(船舶事故逃走罪)という厳罰で臨むほか、官僚の不作為も非難するなど、政治の非は何ら認めることなく周囲に責任を押し付けるばかりの対応には、やや違和感を覚えます。
しかし、何かと法律論より国民感情が優先されるかの国では、かつて金泳三大統領の時代に、500人以上が死亡したソウル市内の百貨店崩壊事故で、在任期間中の大事故の記憶と結びつけられ、金泳三大統領人気は韓国民の間で今も低いままだそうで、朴槿恵政権にとっても今回の事故は命とりになりかねませんし、よりによって25日からオバマ米大統領訪韓を控え、神経を尖らせるのは分からないではありません。
こうして見ると、韓国では、百貨店崩落だけでなく、橋が突然崩落するといった、日本では俄かに信じられないような事故が起こるものです。折しもWEDGE最新号では、「英知25人が示す『日本の針路』」というメイン・テーマの陰で、「世界で悪評 『韓国クオリティ』」という記事が掲載されています。インドネシアに、韓国鉄鋼大手ポスコが韓国外に初めて設置したという一貫製鉄所の高炉で、稼働直後の昨年12月に爆発事故が発生し、業界関係者によると被害額は最大5000億ウォン(500億円弱)にのぼるとの見方が出ているそうですし、李明博大統領がセールスをリードし、60年保証が話題をさらった、アラブ初の原子力発電所としてアラブ首長国連邦に設置される原発4基では、仕事の粗さが目立ち、基礎工事で打設したコンクリートが所謂「シャブコン」状態で強度不足であり、UAE側が工事のやり直しを命じたほか、韓国製機器の品質保証に改竄が発覚したそうで、韓国国内の原発でも、性能確認試験の成績書が偽造された機器が使われたことが発覚して大問題になっているのと、同根の内容だろうと報じています。デモやストが制限されて勤労意欲が比較的高いと言われるベトナムで、韓国サムスン電子が建設を進める新工場では大規模な暴動が発生し、重傷者が出る事態となっているそうですし、トルコが次期主力戦車「アルタイ」を、外国戦車をベースに国内開発することにして、パートナー企業として韓国現代ロテムを選んだところ、開発が遅れに遅れ、しびれを切らせたトルコ政府は今後の提携先として三菱重工業に関心を示していると報じています。
再び旅客船沈没事故に戻りますと、朝鮮日報などが、平成21年11月13日に三重県・熊野灘で起きたフェリー「ありあけ」の転覆事故で、運航会社が「セウォル号」を24年まで日本の国内定期船フェリー「なみのうえ」として使用していたマルエーフェリー(鹿児島県)で、造船所も同じでありながら、救出劇の手際が良かったことを取り上げ、「セウォル号」の安全管理態勢のお粗末さを批判しています。過剰品質とまで言われかねない日本ですが、社会の隅々まで行き届いている品質の良さは、私たちが気が付かないところで、私たちの生活の安全・安心を担保していることに気付かされます。以下に産経Webの記事を引用します。
(引用)
23年2月に公表された日本の運輸安全委員会の調査報告書によると、「ありあけ」は積み荷約2400トンを積んで航行中、左後方から高さ約6・9メートルの波を受けて左に急旋回。船体は右に傾き、積み荷を固定していた鎖も連鎖的に破断し積み荷全体が右に寄った。その直後、左後方から再度、高波を受けて右に傾き座礁した。
2つの事故について、朝鮮日報は「最初に傾いた原因は異なっても、その後の経過は『セウォル号』の事故とよく似ている」との専門家の見方を紹介。ただ、決定的に違うのは「ありあけ」事故では、死者を出さなかったことだ。
旅客定員は426人だが、閑散期のため事故当日の乗客は7人だけだった。船長は船体が傾くとマニュアルに従って海上保安庁に救助を要請、乗務員には人命救助に向け早く客室に行くよう指示した。
消防用のホースで甲板に引っ張り上げられた乗客はヘリで救助。最後まで船に残った船長と1等航海士らは、浸水が続いたため救命ボートを降ろして海に飛び込み、全員救助された。
韓国メディアでは「ありあけ」の船長がとった非常時の行動と対比させることで、真っ先に脱出した「セウォル号」の船長の無責任さを際立たせている。
(引用おわり)
6日前に韓国・珍島沖で転覆した旅客船「セウォル号」沈没事故のお陰で、南シナ海上空で消息を絶ったマレーシア航空(MH370便)の失踪事件は、すっかり霞んでしまいました。そして、この韓国の旅客船沈没事故によって、折角、イメージ・アップして来た韓国の品質が、いろいろな意味で疑問符が付きつけられているように思います。
これまで報道されたところでは、沈没原因は、まず第一に、「高速航行中の急な針路変更」にあるとされ、しかも「現場は韓国でも有数の潮流の速い海域で、その難所を経験1年余りという3等航海士が操船」するという「未熟な操船技術が急旋回に至った可能性が高い」ということであり、さらに船は「日本から購入後、収容人員を増やすために5階部分を追加する形で改造」され、「貨物や旅客が高層階に収容されることで航行中の船体の重心が変わり、航行が不安定になった可能性」があり、「過積載だった」との情報や「操舵装置に異常があった」との報道もあって、こうした「複合的な要因によって韓国史上最悪の沈没事故が引き起こされた可能性が高まっている」ということです(いずれも産経Web 21日)。そして、被害が拡大しているのは、いわば人災の要素が強く、客船の運航会社が「乗組員に定期的に義務付けている避難訓練などをほとんどしていなかった実態」が浮上し、「ずさんな安全管理態勢」のためと見て、捜査が本格化されるようです(同22日)。
それだけではありません。被害者の家族が怒鳴り散らす様は、韓国では夫婦喧嘩でも通りに出て相手のことを大声で詰り自己の正当性を主張するものと聞きますので、さして驚きませんが、重大事故にも係らず、重大事故であるが故に、大統領のパフォーマンスはやや異様に映ります。国民の激しい怒りの矛先が政府に向かうことを避けたい大統領は、船長らが乗客を救助せずに退避したことは殺人と同様の行為だと厳しく非難し、最高刑が無期懲役の特定犯罪加重処罰法(船舶事故逃走罪)という厳罰で臨むほか、官僚の不作為も非難するなど、政治の非は何ら認めることなく周囲に責任を押し付けるばかりの対応には、やや違和感を覚えます。
しかし、何かと法律論より国民感情が優先されるかの国では、かつて金泳三大統領の時代に、500人以上が死亡したソウル市内の百貨店崩壊事故で、在任期間中の大事故の記憶と結びつけられ、金泳三大統領人気は韓国民の間で今も低いままだそうで、朴槿恵政権にとっても今回の事故は命とりになりかねませんし、よりによって25日からオバマ米大統領訪韓を控え、神経を尖らせるのは分からないではありません。
こうして見ると、韓国では、百貨店崩落だけでなく、橋が突然崩落するといった、日本では俄かに信じられないような事故が起こるものです。折しもWEDGE最新号では、「英知25人が示す『日本の針路』」というメイン・テーマの陰で、「世界で悪評 『韓国クオリティ』」という記事が掲載されています。インドネシアに、韓国鉄鋼大手ポスコが韓国外に初めて設置したという一貫製鉄所の高炉で、稼働直後の昨年12月に爆発事故が発生し、業界関係者によると被害額は最大5000億ウォン(500億円弱)にのぼるとの見方が出ているそうですし、李明博大統領がセールスをリードし、60年保証が話題をさらった、アラブ初の原子力発電所としてアラブ首長国連邦に設置される原発4基では、仕事の粗さが目立ち、基礎工事で打設したコンクリートが所謂「シャブコン」状態で強度不足であり、UAE側が工事のやり直しを命じたほか、韓国製機器の品質保証に改竄が発覚したそうで、韓国国内の原発でも、性能確認試験の成績書が偽造された機器が使われたことが発覚して大問題になっているのと、同根の内容だろうと報じています。デモやストが制限されて勤労意欲が比較的高いと言われるベトナムで、韓国サムスン電子が建設を進める新工場では大規模な暴動が発生し、重傷者が出る事態となっているそうですし、トルコが次期主力戦車「アルタイ」を、外国戦車をベースに国内開発することにして、パートナー企業として韓国現代ロテムを選んだところ、開発が遅れに遅れ、しびれを切らせたトルコ政府は今後の提携先として三菱重工業に関心を示していると報じています。
再び旅客船沈没事故に戻りますと、朝鮮日報などが、平成21年11月13日に三重県・熊野灘で起きたフェリー「ありあけ」の転覆事故で、運航会社が「セウォル号」を24年まで日本の国内定期船フェリー「なみのうえ」として使用していたマルエーフェリー(鹿児島県)で、造船所も同じでありながら、救出劇の手際が良かったことを取り上げ、「セウォル号」の安全管理態勢のお粗末さを批判しています。過剰品質とまで言われかねない日本ですが、社会の隅々まで行き届いている品質の良さは、私たちが気が付かないところで、私たちの生活の安全・安心を担保していることに気付かされます。以下に産経Webの記事を引用します。
(引用)
23年2月に公表された日本の運輸安全委員会の調査報告書によると、「ありあけ」は積み荷約2400トンを積んで航行中、左後方から高さ約6・9メートルの波を受けて左に急旋回。船体は右に傾き、積み荷を固定していた鎖も連鎖的に破断し積み荷全体が右に寄った。その直後、左後方から再度、高波を受けて右に傾き座礁した。
2つの事故について、朝鮮日報は「最初に傾いた原因は異なっても、その後の経過は『セウォル号』の事故とよく似ている」との専門家の見方を紹介。ただ、決定的に違うのは「ありあけ」事故では、死者を出さなかったことだ。
旅客定員は426人だが、閑散期のため事故当日の乗客は7人だけだった。船長は船体が傾くとマニュアルに従って海上保安庁に救助を要請、乗務員には人命救助に向け早く客室に行くよう指示した。
消防用のホースで甲板に引っ張り上げられた乗客はヘリで救助。最後まで船に残った船長と1等航海士らは、浸水が続いたため救命ボートを降ろして海に飛び込み、全員救助された。
韓国メディアでは「ありあけ」の船長がとった非常時の行動と対比させることで、真っ先に脱出した「セウォル号」の船長の無責任さを際立たせている。
(引用おわり)