風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

安倍改造内閣

2014-09-06 21:27:11 | 時事放談
 安倍改造内閣の支持率は、日経新聞によると60%(8月下旬比+11%ポイント)、読売新聞によると64%(8月上旬比+13%ポイント)に上昇したそうです。読売新聞は、女性の閣僚への積極登用や主要閣僚、党役員人事で重厚な布陣としたことへの評価が支持率を大きく押し上げたと見ています。
 女性閣僚5人というのは、2001年4月の小泉内閣発足時と並んで過去最多となり、成長戦略の柱に掲げた「女性の活用」を率先した形です。それだけでなく、慰安婦問題が誤報に起因することがはっきりしたところで、中・韓のプロパガンダもあって日本で女性の社会進出が遅れている、ひいては女性蔑視の国との世界の疑念に変わるところがなさそうであることから、安倍さんにとっては、中・韓のプロパガンダに対抗し、世界の見方を変えるための戦略的な意味合いをもつ、象徴的な人事だとも言えます。
 因みに、米WSJ紙は、主要ポストに幾人かの改革論者を起用した首相の決定は前向きだと言いながら、コラムのタイトルは「ささやかな内閣改造」として、今回の変化は、約束した「第三の矢」、つまり構造改革が近く果敢に実施されると示唆するには十分ではないと、批判的だったようです。
 中国では、日本の対中投資が大幅に減るなど、風向きが予想を超えて変わりつつあることを懸念してか、あるいはもはや反日を掲げる必要もないくらい、党内を抑える自信が芽生えたせいか、習近平国家主席は3日の「抗日戦争勝利記念日」の演説で、歴史問題で日本を批判しつつも、両国の関係修復に前向きな言及をしました。そんな中国の外務省報道局長は4日の定例会見で、自民党の幹事長と総務会長に「親中派」とされる谷垣禎一氏と二階俊博氏がそれぞれ就任したことを問われ、「日本の内政問題」と断りつつ、「もし、両氏の就任が安倍政権の対中関係に影響を及ぼすなら、積極的な影響であることを期待する」と述べたそうです。
 総裁経験者・谷垣氏の党幹事長就任という異例の人事の裏には、11月のAPECに向けて雪解けムードを醸成し、中国も注目するような配慮が、安倍さんの視野に入っていたのかも知れません。実は、日刊紙各紙がノーマークの中、首相と菅官房長官が直談判し、「総裁まで務めた方に失礼を承知でお願いしたい」と熱心に口説いたのは、党内を「財政再建派」「経済成長重視派」に分裂させる芽を早期に摘むことが狙いだったと言われます(Web産経)。消費増税の三党合意を結んだのは当時の総裁・谷垣氏だったからだそうですが、同時に、石破氏による「ポスト安倍」への動きを大幅に鈍らせる効果もあって、それやこれやで、谷垣幹事長人事は、「長期政権を築いた佐藤栄作級」との評価もあがっているようですが、どうでしょうか。
 しかし私にとっての最大の関心は、石破氏の地方創生担当相就任でした。正式要請がない段階で安全保障法制担当相への就任を拒否する意向を示し、幹事長続投の希望をあからさまに語るのは、「人事権者である首相に公然と盾突いたに等しい」などと批判されました。結局、地方創生担当相という新しいポストに落ち着き、地方の人口減少対策や地域活性化に向けた法整備に取りかかるそうですが、期待されます。早くも、今秋の福島、沖縄両県知事選や来春の統一地方選を見据えたバラマキ政策を牽制する声が報じられますが、いい加減、政局ではなく政策を真剣に論じて欲しい。かつて田中元首相が日本列島改造論をぶちあげ、経済成長で生まれた余裕資金を公共事業を通して地方に還流し、日本全土で高速道路網が整備されました。多くの無駄もあったのは、良くも悪くも中央主導で行われた結果でしょう。そして、竹下首相のもと、バブル経済のさなかの1988年から翌89年にかけて各市区町村に地域振興に使える資金1億円を交付した「ふるさと創生一億円事業」も敢行されました。そのまま預金して15年間で6千万円の利子を得た自治体があった一方、映画祭を開催したり、音楽イベントを開催する運営会社を設置したり、日本一長いすべり台を作成したり、村営キャバレーを運営したりした例もあり、私ははっきりと無駄だと思っていましたが、結構、活用されている自治体もあるという話を聞きました。所謂ヒモ付きではなく現場の創意を活かした結果だというわけです(その点では竹下氏を評価すべきかも)。石破氏には、各省庁にまたがる関連事業の一元化と効率化に向けた「政策を束ねる指導力」(菅官房長官)が求められるとされますが、そうした中央省庁の無駄を排し意思統一するとともに、日本において中央と地方の関係はどうあるべきか、各地方はそれぞれにどうあるべきか、議論を促し、日本固有の強さである現場力を引出し、創意工夫によって、各地方が生き生きとするような施策を後押しして欲しい、そして、より根本的・中長期的には、橋下さんを凹ました各種勢力を抑えて、再び地方分権に向かう議論を促して欲しい、と思います。
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