風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

そしてアメリカ~経済

2017-11-15 16:23:08 | 永遠の旅人
 海外に出ると、経済のことを考えさせられる。
 先ずは物価だ。誰しもスーパーやコンビニに足を運んで、つい価格比較をしてしまう(笑)。20年ほど前に駐在していた頃は、日本と比べてアメリカの物価は格段に安く、その分、品質も悪いという生活実感があったが、最近はそうでもない(品質が良くなったという意味ではない 笑)。とりわけ今回は大都会にいるせいか、ホテルの宿泊費もレストランも高く、近所のセブンイレブンに行っても、CVSのようなファーマシーに行っても、安いとは思わなくなった。
 アメリカでは健全なインフレが続いているからだろう。スタバのコーヒー(グランデサイズ)は、駐在から帰国した前後の17~18年前は1.5ドル程度だったが、今は2.7ドル、年々2%強上がっている計算になる。一方、日本ではこの20年間、デフレが続き、日米の物価は逆転してしまったような気がする。
 アメリカで、ナショナル・ギャラリーやスミソニアン博物館のように高品質な展示が無料で提供されるのは、国家の補助と寄付の文化があるからだろう。結果として(極端な話だが)借金漬けの国家運営が続くわけだが、健全なインフレのおかげで、言ってみれば20年前の借金は半額になる計算だ。アベノミクスがインフレ~投資~成長の好循環を目指す所以でもあろう。
 こうしてインフレについても考えさせられ、世界広しと言えども日本だけがデフレに苦しむ異常な状況にあることに気づかされる。そのメカニズムはよく分らない。もともと多くを求めない、モノを大切にする国民性で、リサイクルの考え方が普及し、人口減少と相俟って消費全体が伸び悩んでいること、そんな中、冷戦崩壊以降は中国や東側諸国を巻き込んだ真のグローバリゼーションが進展し、ものづくりが労働力の安い場所に移転し、製品・サービスを低価格で提供する企業努力が続けられていること、他方、規制緩和は進展せず既存領域に拘わっていること、金融危機をきっかけに韓国で断行されたようなドラスティックな業界再編が日本では見られず、相変わらず一つの業界に複数企業がひしめき合って体力勝負が続いていること、業績が悪くなっても表立って雇用整理できないために、賃金水準を切り詰めてでもボトムラインを守ろうと頑張り過ぎること・・・等々、日本に特殊な要因が複雑に絡み合っていることだろう。相変わらず開かれた労働市場がないために、同一職種で(政府が期待するようには)同一賃金が成り立たず、雇用逼迫のときでも賃金水準が上がることはない(雇用のミスマッチがあるとする見方もある)。
 こうして経済のダイナミズムに思いを馳せる。移民の国アメリカは今もなお人口が増え続け、経済成長が続く一方、日本は人口が減り続け、経済成長も低レベルだ。しかし、GDPの規模は、もちろん人口に影響を受けるが、むしろイノベーションとの相関、つまり生産性の向上が重要だとも言われる。実際のところ、アメリカの製造業は廃れたと言われ、確かに家電や繊維などかつての面影はないが、化学・薬品や宇宙工学などの付加価値が高い分野は伸びており、全体のパイも増えていて、案外、底堅いし、所謂AGFA(Apple、Google、Facebook、Amazon)をはじめとしてイノベーションを牽引する企業群が多いのは周知の通りだ。
 かつてアメリカ人の同僚は、アメリカの強さは、移民の国として世界中から英知を集めて活用できることだと豪語したものだが、今となっては否定できない。世界共通言語である英語によって敷居を下げ、自由競争を基盤として人や技術や企業や業種・業態の変革のダイナミズムが巻き起こり、基軸通貨ドルがグローバルな経済活動を支え(ときにその利便性を逆手にとって経済制裁に利用され)、こうした普遍性のゲームのルールが変わらない限り、アメリカの強さが続くことは間違いない。日本は独自の強さを発揮し続けるしかないのだが。
コメント
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