風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

韓国は大丈夫か

2019-03-16 13:49:41 | 時事放談
 朝鮮半島は、休戦協定が締結されてから過去65年もの間、北朝鮮をぐるりと取り囲む形で、地続きの中国、ロシア(旧・ソ連)、韓国、海を挟んで米国、日本と、所謂六ヶ国協議を構成する、世界の名だたるxx大国!(xxは超だったり軍事だったり経済だったりする 笑)が、所謂Status Quo(現状維持)、あからさまに手出しすることなく、お互いに睨みあい牽制し合いながら、不思議な安定を保ってきた。ところがここ二~三年内にお坊ちゃんの火遊びによって揺らぎが始まり、この一年弱の間に権威主義のリーダー同士が白々しくも薄気味悪い歩み寄りを見せて、俄かに地殻変動に近い動きが始まったという意味で、その動静は甚だ興味深い反面、毎度のことながら繰り返される蛮行と言うより愚行と言うべきことには、やや辟易するところもある。中でも韓国というプレイヤーの動きが奇妙で、懸念される。
 産経電子版(久保田るり子さんコラム)によると、ハノイ会談から5日後の韓国・国会で康京和外相が、米国が北朝鮮に何を要求したかを「把握できていない」と答弁して、韓国世論を驚かせたそうだ。米国の信用を失いつつあると聞いているが、韓国政府は、この段階でも米国政府から会談の詳細を伝えられていなかったことになる。前回ブログでも触れたように、今月4日に開かれた韓国・国家安全保障会議で、文在寅大統領が関係部局に「南北協力事業を速やかに準備してほしい」と、ハノイ会談の結果を踏まえれば頓珍漢とも思える指令を出したのも、そのせいかと頷ける。今週になって、韓国の外務省と統一省が今年の業務計画報告を発表したらしいが、外務省報告では米朝首脳再会談を「合意には至らなかったが、非核化をめぐり生産的な議論がなされ理解が高まった」「今後の交渉と金正恩委員長のソウル訪問などで、完全な非核化と恒久的平和定着の画期的な進展が期待される」と甘い評価をした上、「米朝の文在寅大統領に対する揺るがぬ信頼を基に主導的役割を担う」と、米朝対話再開に腕まくりする文在寅大統領の見立てには危うさすら漂う。統一省報告に至っては、米朝首脳会談の決裂が反映されず、事前報告をほとんど修正しないまま正式報告としたらしい。
 そんな前のめりの文在寅政権を見かねた最大野党で保守派の「自由韓国党」羅卿●(=王へんに援の旧字体のつくり)(ナ・ギョンウォン)院内代表が、12日の国会演説で、文在寅大統領が金正恩氏の「首席スポークスマン」と呼ばれるような恥ずかしい話は聞きたくない、などと演説して、議場は騒然、周囲ではもみ合いも起きて、大統領府は「国家元首だけでなく朝鮮半島の平和を願う国民への冒涜だ」と強く反発して羅氏に謝罪を要求し、与党「共に民主党」も「国家元首冒涜罪に相当する。国会倫理委員会で審議する」と激怒したという。このあたりは、去年9月、文大統領が国連演説等で、金正恩委員長のことを「若く極めて率直で礼儀正しい」と持ち上げ、「経済発展のために核兵器を放棄すると私は信じている」と発言したことを受けて、米ブルームバーグ通信が皮肉交じりに文大統領を「金委員長を賛美する事実上のスポークスマン」と書いたのが元ネタで(FNNによる)、私もブログに書いたし、当時、多くの韓国メディアも取り上げたので韓国ではよく知られた話のようだ。与党議員に至っては、羅氏を「頭が空っぽ」「ナチスよりも深刻」「民主主義に対する挑戦」などと口を極めて罵倒したという。因みに天皇陛下の謝罪を口走った文喜相・国会議長の容貌を思い出し、羅氏とはどんなイカツイおっさんかと思いきや、野党の実力者ではあるが、元裁判官という経歴や美貌が話題になるほどの、一見かよわき女性である。韓国人は激しいねえ・・・。
 日本は、こうした韓国政界の左・右(進歩派・保守派)対立の煽りを食らっていることにも、前回ブログで触れたが、産経・論説委員の河村直哉氏が、韓国の経済史学者・李栄薫(イ・ヨンフン)氏の著作『大韓民国の物語』(前書きの日付は2007年)を紹介する話が、前回ブログとも符合する。韓国の政治指導者は大韓民国がまっとうに建てられた国ではないと思っているようだ、と李氏は書く、として、以下のように続ける。
 「彼らはいったい何を言おうとしているのでしょうか。その批判の前後をよく聞いてみると以下の通りです。…日本と結託して私腹を肥やした親日勢力がアメリカと結託し国をたてたせいで、民族の正気がかすんだのだ。民族の分断も親日勢力のせいだ。解放後、行き場のない親日勢力がアメリカにすり寄り、民族の分断を煽った、というのです」
 とんだ「とばっちり」だが、なんとなく韓国人らしいと言えばそう言えなくもないし、文在寅大統領が「親日の残滓清算」と連呼するのは、まさにこの文脈にあることが分かる。韓国で左派と言えば民族派なのだ。また、韓国人にとって、約束したことを守るより、正義を守ることが大事だと説く識者がいて、まさに徴用工問題や慰安婦問題はその通りだが、問題は、自分たちに都合のよい、上に引用したような文脈に沿った正義を主張する点だ。これじゃあ国際合意もへったくれもあったものではない(徴用工問題は日韓基本条約の問題そのものだし、慰安婦問題もオバマ大統領の仲介で国際社会も歓迎した国際合意のはずだった)。
 二ヶ月ほど前、日経ビジネス・オンラインの鈴置高史さんの長期連載コラムが終った。その最終回に、韓国の識者から年末に貰ったというメールの内容が引用されていて、今も印象に残る。

(引用)
・この国は激動の真っただ中です。朴槿恵女史は1年9カ月間牢屋に繋がれていますが、文在寅大統領も遠からずして、その後を追うかもしれません。
・ソウル都心は連日、文大統領退陣を叫ぶデモで交通はマヒ寸前です。保守団体は文在寅を金正恩の手先と糾弾し、朴槿恵の弾劾無効と復権を叫んでいます。
・文在寅支持だった民主労組など左派団体まで経済失政をとりあげ反政府の示威行動に走っています。
・金正恩のソウル訪問を歓迎する集会を開く親北団体があり、これに負けじと保守団体も親米パフォーマンスをくり広げる。ソウルはデモ満開です。
・というのに警察は違法なデモを規制せず傍観しています。デモ鎮圧の責任を追及されるのが怖いのです。
・今の状況は約60年前の1960年、李承晩政権が学生デモで倒れ、民主党政権が出現した時に酷似しています。
・デモで政権が転がり込んだ民主党政権は、失政の連続と南北和解を唱える左派の蠢動で混乱に陥りました。結局は朴正熙少将が軍事クーデターを起こし、韓国は開発独裁政権に移行しました。
・現在の状況は当時にそっくりに思えてなりません。しかしクーデターを起せるほどの主体はいまのところ見当たらないのです。
・保守は分裂、左派も利権争いで内輪揉め、軍は骨抜きにされ、マスコミも国民から信用されていません。
・いろいろ書きたいことがありますが、物言えば唇寒し――。これ以上はやめます。新年の韓国は韓流ドラマよりもっと劇的に展開するでしょう。
(引用おわり)

 日本ではまず報道されることがない、韓国の日常が綴られている。韓国は、先進国ヅラしてはいるものの、民主化してまだ30年にしかならない、政治的にはとても成熟したとは言えない国だ。これまで歴代・大統領が政権末期にスキャンダルが露呈して不幸な末路を辿ったのは、まさに左・右(進歩派・保守派)対立で「恨」の罠に陥るからだが、文在寅大統領は就任からわずか1年半余りでスキャンダルが噴出していると言われる(ここでは触れないが、元・在韓国特命全権大使 武藤正敏氏による)。ただ、今後の朝鮮半島情勢を占うに、韓国が米・中いずれに寄るかは、日本の安全保障に直結する話である。いろいろ腹立たしいことが多い隣人だが、だからと言って日本の政府のように突き放したままでは余りよくないのではないかと、朝鮮半島情勢をつらつら考えるにつけ、最近はちょっと考えを改め始めている。
コメント
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