風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

マスターズでもらい泣き

2021-04-16 02:39:58 | スポーツ・芸能好き
 松山英樹選手が、ついにマスターズで優勝した。
 やるとすれば松山英樹だろうと、2017年6月に全米オープンで2位タイに入り、世界ランキング2位に駆け上って、誰もが期待したものだった。あれから4年、この3年8ヶ月の間は、ツアー優勝から遠ざかっていた。日本人男子として初めてPGAツアーのメジャー大会を制しただけでなく、メジャー4大会の中で最後発ながら「ゴルフの祭典」として憧れのマスターズである。過去85年もの間、AON(青木功、尾崎将司、中嶋常幸)をはじめ33人の日本人ゴルファーが挑み続けて、そのたびに跳ね返されて来た高い壁に、延べ132度目、松山自身にとっては10度目の挑戦にして、初めての優勝だった。
 中継したTBSでは、優勝が決まって、小笠原亘アナが声を震わせながら、「松山英樹、マスターズを勝ちました。ついに日本人がグリーンジャケットに袖を通します・・・日本人が招待を受けて85年、ついに、ついに世界の頂点に、松山、立ってくれました」と快挙を伝えて、55秒もの間、後に放送事故と呼ばれるほどの沈黙が続いた。ひとしきり感動に浸った後、「10年の道のりは決して平たんではありませんでした・・・大学生で震災を経験し、東北の皆さんが背中を押してくれました・・・10年です・・・ついにアジア人としての、途方もない高い壁と思われていた、このマスターズの壁を、松山英樹は、今日、乗り越えました・・・おめでとう・・・そして、有難う・・・」と言葉を詰まらせながら続けて、「中嶋さん」と、隣に座る解説の中嶋常幸さんに語り掛けると、「はい」と返事があったものの、「やってくれました」と話を振っても、すぐには言葉にならず、「・・・すみません・・・後半、苦しかったから・・・本当に良かった・・・」とボロボロの涙声を絞り出し、小笠原アナから「この偉業の凄さを分かっているからこそです」と涙声でフォローされて、ネットでは「もらい泣き」がトレンド入りした。私もYouTubeで何度も繰り返し見て、その度にもらい泣きした。
 中嶋さんがそう語ったように、4打リードで迎えた最終ラウンドは安心して見ていられると思われたし、前半9ホールが終わった段階では5打差に広げて独走かとも思われたが、ゴルフの神様は、簡単には勝たせてくれなかった。サンデー・バックナインと呼ばれる後半、15番では池ポチャがあり、最終ホールはボギーとなって、あがってみれば1打差で辛うじて逃げ切る形だった。さすが、「世界一美しく、難しい」と言われるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブである。アメリカ南部ジョージア州の広大な果樹園を切り拓いてつくられたコースは、ジ・オープンとは対照的にラフがなく、フェアウェーが広い一方、あさっての方角に向かって打つこともあるような起伏に富むグリーンは、ボールを遠くまで飛ばすパワーと繊細さが求められるショートゲームこそゴルフの醍醐味という、大会創立者の球聖ボビー・ジョーンズの思いが込められていると言われる。
 松山は、身長181センチ、体重90キロと、欧米人と比べても引けをとらないほどの堂々とした体格で、ひと回りもふた回りも大きくなった。ドライバーの飛距離が伸びたし、アイアンは、プレイヤー仲間からマシンと呼ばれるほど、正確でブレが少ない。今回はパットも良かった。何より、これまで感情の起伏が激しかった彼が、「余り波を立てず、余り怒らずできた」と振り返ったように、適切な「アンガーマネジメント」ができるほどに精神面でも成長したように見える。プロになって初めてコーチをつけたことが奏功したに違いない。
 ワシントンポスト紙は、「マツヤマは日本スポーツ界の最高階級に到達した。ショウヘイ・オオタニ、ナオミ・オオサカ、ユヅル・ハニュウとともに位置する、世界で最も輝ける舞台の1つだ」と報じた。どうでもいいことだが、松山英樹も、大谷翔平も、羽生結弦も、血液型はB型のようだ(大坂なおみは不明)。因みに、メジャーリーグでも日本人が通用することを見せつけた野茂英雄、野手のイチロー、水泳の北島康介などもB型のようだ。いや、B型だからスポーツが得意というわけではないが、海外で活躍できるのは、マイペースを貫く個性派で、長嶋茂雄さんのように一発の集中力が凄いとされるB型の特性が遺憾なく発揮されているのかもしれない。
 最終18番ホールのグリーン上で、早藤キャディーがピンをカップに戻した後、帽子を脱いで、コースに向かって軽く一礼したところを、ESPN局は動画でツイートし、CBS局はハートマークを添えて「Respect」とツイートするなど、日本人らしい礼儀正しさと感謝の気持ちを表す立ち居振る舞いが話題になった。これにも胸が熱くなり、思わず涙してしまった。
 ストレスフルなwithコロナの生活で、ひとしきり涙して、薄汚れた魂が浄化されたようだ(笑)
コメント
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