バイデン政権では、コロナ禍対応や経済復興などの内政を重視するため、外交は秋口ぐらいまでは進展しないだろうと見られていた。しかし、中国との関係は座視できないようで、2月のQuad会合、3月の日米や米韓の2プラス2、米中外交当局トップのアラスカ会議、そして先ごろの日米首脳会談と、中国に対する厳しいスタンスを明確にしている。副大統領だったオバマ政権時代の対中姿勢の記憶や、ご子息の中国とのビジネス関係の噂など、バイデン大統領が中国に対して宥和的になり得る要素があることが懸念されていただけに、とりあえずその不安を払拭したというところだろう。問題は、米中の緊張が高まる中での日本の立ち位置である。
安全保障はアメリカに依存し、経済は中国に依存することから、米中双方との良好な関係に腐心するのは、何も韓国に限ったものではない。もっとも日本は韓国ほど中国に寄っていないが(笑)、二日前の日経が報じたように、キャンベル氏(米国NSCインド太平洋調整官)が首脳会談直前に極秘来日し、日本側に台湾問題でより踏み込んだ対応を迫った(武器を供給できるなどと明記する「台湾関係法」に倣った法整備を日本に促した)とされ、中国寄りとのイメージ払拭がスガ首相訪米の隠れたテーマだったようだ。
日本のメディアは、共同声明で台湾に言及するのが、佐藤首相(当時)とニクソン大統領(同)の会談以来、52年振りということに注目した。実際、その書きぶりを見ると、そもそも「台湾」ではなく「台湾海峡」と、これまでも日中首脳間で言い習わされた言葉を踏襲し、「台湾海峡の平和と安定」とは、既に3月の2プラス2で発表されたものであって、今回追加された「両岸問題の平和的解決」とは、もともと中国政府がスローガンとして来た表現であることから、日本の首相が台湾に関して言及したこと以外に、目新しい要素はなかったというのが真相のようだ。
こうして想定の範囲だったことから、中国の反応が当初、さほどでもなかったことは、遠藤誉さん(筑波大名誉教授)も伝えていた。CCTV国際チャンネルでは、4月17日の昼のニュース番組(中国時間12:00~12:30)が、共同声明発表後、最初の報道だったようで、そこでどのように扱われるか、数十年来この番組をウォッチして来た遠藤誉さんは注目されたが、共同声明の話題に入ったのは30分番組の27分を過ぎた頃で、「やっと来たと思って力を入れたところ、なんと1分半ほどで終わったしまった」と感想を述べておられて、「中国は今般の日米首脳会談共同声明に対して本気では怒っていないな」と結論づけられたそうだ。
そうは言っても、共同声明について、日本語訳では様々な問題が羅列されるばかりだが、英文を見ると、「台湾海峡の平和と安定」の前に、先ず「地域の平和と安定」を維持するために日米の「抑止力」の重要性が述べられる構造になっており、このあたりが中国の癇に障ったのではないかと解説する向きもある。日米両国首脳は、中国に対する懸念とともに「中国と協働する必要性」についても表明するなど、慎重な言い回しを心掛けていたものの、日本としては一歩、踏み込んだ対応と、アメリカからも中国からも受け止められたことは間違いないし、実際にそうなのだろう。
日本独自の防衛努力を謳ったのはその一例だし、これまでのように中国に対して曖昧な態度をとり続けるのは許されず、バイデン政権が、中国とは経済、科学技術、安全保障、人権などで競争・対立する関係だが、パンデミック、気候変動、核不拡散など米国に利益になる分野については協力も必要だと言うように、日本でも是々非々の対応が求められることだろう。例えば新彊ウィグルの新彊綿を巡って、ユニクロは今のところ曖昧な態度に終始しているが、H&MやNIKEは、人権問題への関心が薄いと欧米NGOから追及され、いざ人権問題に触れ新彊綿の取り扱い中止を宣言すると中国の不買運動に晒されるというように、欧米的な価値観と中国的な価値観との間で踏み絵を迫られたり、日本政府としても人権問題で欧米に同調して制裁に踏み込まないことが問題視されたりする局面が想定される(実のところ、資産凍結や渡航制限などの制裁は、日本が科したところで効果は疑問なのだが)。安全保障面でも、アメリカが第一列島線沿いに中距離ミサイルを配備するにあたっては、協力を求められるだろうし、台湾有事にあたっては、日本の関与が求められるだろう。これは政治の問題だけではなく、私たち日本人の覚悟の問題でもあろう。
安全保障はアメリカに依存し、経済は中国に依存することから、米中双方との良好な関係に腐心するのは、何も韓国に限ったものではない。もっとも日本は韓国ほど中国に寄っていないが(笑)、二日前の日経が報じたように、キャンベル氏(米国NSCインド太平洋調整官)が首脳会談直前に極秘来日し、日本側に台湾問題でより踏み込んだ対応を迫った(武器を供給できるなどと明記する「台湾関係法」に倣った法整備を日本に促した)とされ、中国寄りとのイメージ払拭がスガ首相訪米の隠れたテーマだったようだ。
日本のメディアは、共同声明で台湾に言及するのが、佐藤首相(当時)とニクソン大統領(同)の会談以来、52年振りということに注目した。実際、その書きぶりを見ると、そもそも「台湾」ではなく「台湾海峡」と、これまでも日中首脳間で言い習わされた言葉を踏襲し、「台湾海峡の平和と安定」とは、既に3月の2プラス2で発表されたものであって、今回追加された「両岸問題の平和的解決」とは、もともと中国政府がスローガンとして来た表現であることから、日本の首相が台湾に関して言及したこと以外に、目新しい要素はなかったというのが真相のようだ。
こうして想定の範囲だったことから、中国の反応が当初、さほどでもなかったことは、遠藤誉さん(筑波大名誉教授)も伝えていた。CCTV国際チャンネルでは、4月17日の昼のニュース番組(中国時間12:00~12:30)が、共同声明発表後、最初の報道だったようで、そこでどのように扱われるか、数十年来この番組をウォッチして来た遠藤誉さんは注目されたが、共同声明の話題に入ったのは30分番組の27分を過ぎた頃で、「やっと来たと思って力を入れたところ、なんと1分半ほどで終わったしまった」と感想を述べておられて、「中国は今般の日米首脳会談共同声明に対して本気では怒っていないな」と結論づけられたそうだ。
そうは言っても、共同声明について、日本語訳では様々な問題が羅列されるばかりだが、英文を見ると、「台湾海峡の平和と安定」の前に、先ず「地域の平和と安定」を維持するために日米の「抑止力」の重要性が述べられる構造になっており、このあたりが中国の癇に障ったのではないかと解説する向きもある。日米両国首脳は、中国に対する懸念とともに「中国と協働する必要性」についても表明するなど、慎重な言い回しを心掛けていたものの、日本としては一歩、踏み込んだ対応と、アメリカからも中国からも受け止められたことは間違いないし、実際にそうなのだろう。
日本独自の防衛努力を謳ったのはその一例だし、これまでのように中国に対して曖昧な態度をとり続けるのは許されず、バイデン政権が、中国とは経済、科学技術、安全保障、人権などで競争・対立する関係だが、パンデミック、気候変動、核不拡散など米国に利益になる分野については協力も必要だと言うように、日本でも是々非々の対応が求められることだろう。例えば新彊ウィグルの新彊綿を巡って、ユニクロは今のところ曖昧な態度に終始しているが、H&MやNIKEは、人権問題への関心が薄いと欧米NGOから追及され、いざ人権問題に触れ新彊綿の取り扱い中止を宣言すると中国の不買運動に晒されるというように、欧米的な価値観と中国的な価値観との間で踏み絵を迫られたり、日本政府としても人権問題で欧米に同調して制裁に踏み込まないことが問題視されたりする局面が想定される(実のところ、資産凍結や渡航制限などの制裁は、日本が科したところで効果は疑問なのだが)。安全保障面でも、アメリカが第一列島線沿いに中距離ミサイルを配備するにあたっては、協力を求められるだろうし、台湾有事にあたっては、日本の関与が求められるだろう。これは政治の問題だけではなく、私たち日本人の覚悟の問題でもあろう。