風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

G7の宴のあと

2021-06-20 19:40:02 | 時事放談
 G7首脳会議、NATO首脳会議、米露首脳会談と、バイデン大統領には本格的な外交デビューとなり、高齢で認知症の疑いがあるとは言え、さすが経験豊富な政治家なだけに、無難な滑り出しを見せたと言えそうだ。そして、トランプ前大統領の頃のドタキャンなどを思えば、所謂「外交」が機能することが示されたことには、ある種の感動を覚える(笑)。
 それと言うのも、議長国のジョンソン英首相は記者会見で「G7がすべきなのは民主主義と自由と人権の利点を世界に示すことだ」と総括し、日本の報道を見る限り、うまく行ったように受け止められているが、参加国の間で「中国」を巡って温度差が見られたのは否定しようがないからだ。マクロン仏大統領は記者会見でわざわざ「G7は中国を敵視する集まりではない」と語ったし、Voice of America(6月12日付)は“G-7 Split on Biden’s Anti-China Push”との見出しで、「イタリア、ドイツやEU代表は反中推進に消極的で、むしろ中国に協力的な傾向にあるが、(中略) 日本は最もどっちつかずで躊躇している(アンビヴァレントだ)」と解説した。それでも首脳宣言としてカタチが整えられた。
 もっとも、G7サミットの共同宣言で初めて「台湾海峡」に言及されたと報じられたが、5月の日EU首脳会議の共同声明で既に言及されていた。また、冷戦時代に旧・ソ連に対抗する軍事同盟だったNATOの首脳宣言で中国が「体制上の挑戦」と明記されたのは画期的なことだと報じられたが、昨年11月に出された『NATO 2030』で既にそのように明記されていた。その意味では、全く目新しいわけではなかったことになるが、日米や日韓の2プラス2会合、日米首脳会談、日EU首脳会議などを通して、着実に合意が積み上げられた上での「集大成」だったことは、やはり評価されてもよいのだろう。
 とりわけ日米両首脳にはそれなりのご苦労があったようだ。巷(同行記者団の間)では、G7サミット期間中に日米首脳の会談や立ち話を行う準備が進められていたにも係わらず、なかなかそれがセットされず、疑問に思われていたようだ。公式発表によると、スガ総理とバイデン大統領が協議を行ったのは、中国について討議する会議の合間のおよそ10分間だけで、しかも断続的に行われたということだった。この時間についてスガ総理は後に「作戦会議のようだった」と表現された。つまり、日米二人の会談よりも、各国首脳(特に親中派と目されるイタリアやドイツ)を説得するための根回しやその擦り合わせを優先して行っていたと見られている。
 こうした宴のあとで、折角の成果に自らミソをつける輩がいる(笑)。G7首脳宣言の第5項「開かれた社会の価値と役割に関する共通の声明で一致した豪州、インド、大韓民国及び南アフリカの首脳の参加を得た」と記された韓国で、毎度の無粋なハチャメチャ振りには、鼻白むと言うよりも、なんだか不憫で同情してしまう(笑)。
 先ず、韓国青瓦台の国民疎通首席秘書官は、テレビ番組に出演したとき、文在寅大統領がG7首脳会議に出席したことについて、「今回のG7首脳会議に招待された4カ国のうち、インド、オーストラリア、南アフリカ共和国は議長国の英国と関係がある英連邦諸国のため、韓国が事実上唯一の招待国であり、2年連続でG7首脳会議に招待された」 「韓国が事実上、G8に位置付けられたとの国際的な評価が出ている」と自画自賛したそうだ。国民疎通首席秘書官なるものを名乗る以上、飽くまで国民に向けて、支持率低迷する文政権の成果を誇示したかったのだろうが、日本でも報じられて疑問視されることまでは考えが及ばないのだろう。
 また、G7サミットの団体写真で文在寅大統領が最前列に立ったことについて、「韓国の地位が最上位ランクに位置づけられた」と(無邪気に)広報されたらしい。そこで、ご丁寧にも一部メディアが英国のG7主催側に問い合せたところ、「大統領を前列に、総理は後列に配置した」、すなわち「大統領制」と「議院内閣制」に区分して配列したに過ぎないことが判明した。因みに、G7サミットに出席した大統領は米・仏およびゲスト国家の韓・南アの4人で、主催国・首脳のジョンソン英首相を囲むように写真に収まったという次第だ。
 さらに、日本の対応にも難癖をつけた。韓国の外交当局者が、「日本側が(韓国軍の)恒例の東海領土守護訓練を理由に、実務レベルで暫定合意していた略式会談に応じなかったのは残念に思う」とチクったことが報道されたのである。そのような事実はないと、加藤官房長官は即座に否定した。察するに、ちゃぶ台返しの徴用工判決や慰安婦判決をきっかけに、安倍政権末期からスガ政権にかけて、日韓首脳の接触を避けられていることに対して、残り一年の任期を切った文政権は、宿願の南北融和を進めるためには、アメリカ大統領の歓心を買わなければならず、そのアメリカ大統領は日米間の結束のために日韓の反目を苦々しく思っているから、仕方なしに日本に擦り寄って対話しようとしているフリを演じているのだろうが、日本から相手にされないために、イラついているのだろう。日本も、せめて国際会議の場くらいは、出会いがしらの略式会談に応じるくらいは大人の対応として認めてもよいように思うが、まあ、文政権が日本にしでかしたことの重大さが腹に据えかねるスガ総理の気持ちは国民として分からないではない。
 さらに付け加えると、政権末期にはこうしたハチャメチャ振りが酷くなる。残り任期一年を切った文大統領は、南北和解の悲願を達成したいのであろうが、それはレガシーを残して、歴代大統領のように悲惨な末路を辿るのをなんとか避けようとしているとする解説がある。そういう側面もあるのかも知れない。しかし、日本政府は、今の文政権については見切りをつけているのだろう。と言うのも、事情通によると、日本はアメリカに対して水面下で、「韓国の主張を認めれば、日韓請求権協定が破壊される。それは戦後秩序の破壊にもつながる。この問題で、米国が仲介するというなら、日本の立場を支持すること以外にない。折衷案を出すというなら、仲裁しないでほしい」と働きかけ、アメリカも理解を示しているらしいからだ。文大統領としては身から出た錆びと言えようか。
 もはや日本人の想像を絶するような、こうした韓国のウソ・ハッタリは、何も今に始まったことではなく、過去、一貫している。徴用工も慰安婦も竹島も、今では歴史認識問題として一括されるが、そこでの論理は、自ら「正義」を体現することが何よりも重要であって、個々の事実は捨象してでも正当性を主張し続ける儒教的な考え方に起因する。そういう意味で、韓国は中国と同じ儒教圏に属し、思考も近くて、それを称して私は、中国のプロパガンダ(中国共産党の宣伝)であり、韓国のファンタジー(お花畑の自己満足)と揶揄してきた。さらに、韓国には歴史的・地理的に(時代によって)中国・日本・ロシアといった大国に囲まれて苦労した結果、生き残りの術として培われて来た「事大主義」(大につかえる)が作用している。逆に言うと、それなりに経済的には大きくなった韓国ではあるが、抜け切らない「小国意識」がイタズラしているのである。極東の片隅の貧国が発信する韓国語の新聞記事であれば、誰も気にしなかったであろうが、今やロシア並みの経済規模を誇り、情報はネットで縦横無尽に駆け巡る。韓国にしても、また中国にしても、その体格に相応しい責任ある発言と行動を期待したいものだと思う。
 韓国は、G7首脳宣言の第5項「開かれた社会」声明で「中国」を明示しているわけではないので、G7の結果に中国牽制の性格はないと強弁しているようだ。韓国は、安全保障を依存するアメリカと、経済を依存する中国との間で、バランスを取る綱渡り外交を自慢するが、これではアメリカからは信頼されないだろうし、中国からは、自由・民主主義国の輪の中の弱い鎖として、揺さぶることができると足元を見られていることだろう。日本人は、もはや呆れて接ぐ言葉はないが、決して韓国自身のためにはならないことだと、また、これでは自称「G8」の名が廃ると、お節介ながらも付言しておきたい。
 こうした韓国の微妙な心情を、文政権に最も近いハンギョレ紙の記者コラムが余すことなく伝えている(下記※)。韓国を扱う日本メディアの態度には、常に「上から目線」・・・道徳性と実力で優位な立場に立つ者が自分より劣った者に教えようとするような態度・・・があると痛感する、という文章から始まるものだが、おいおい、そりゃ逆で韓国自身のことではないのかと、ツッコミを入れたくなる(笑)。これまで何度か本ブログでも紹介したことだが、我が家がマレーシア・ペナンに駐在した時、子供が通うインターナショナル・スクールで知り合った韓国人のお母さんと親しくなった私の家内は、「日本人って野蛮で残酷じゃないのね」と、実に2000年代後半の現代に、「真顔で」言われたのである。韓国における歴史教育のなんと罪深いことだろうか。日本に常に虐げられて来た、という意味では、日本人として大いに反省しなければならないのは事実だが、その反動で、実力では勝てなくても道徳的には上だと自負するのを唯一の頼りとして来たのは、韓国ではなかったか。このハンギョレ記事は日本語サイトなので日本人に向けたメッセージであろうが、なんと卑屈を装った(ご自身では気づかない)居丈高な論考であろうか。韓国の方々には、もう少し客観的に現実を直視せよと伝えたい。

(※)「日本は『感情に流される国』になりたいのか」(Hankyoreh紙2021年6月16日付)
   http://japan.hani.co.kr/arti/politics/40289.html
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする