巨人の自力でのCS進出が消滅した。Aクラス入りを狙うという低い目標設定は屈辱的で、今年も巨人は弱かった。ここ数日で朝晩はすっかり秋めいてきたが、私の心の中はずっと以前から秋風が吹き晒している(笑)
坂本は復帰すれば存在感が大きく、三塁コンバート後は更に調子を上げてきたが、菅野は復帰後も調子がピリッとしない。若手の台頭がいまひとつ安定しない中で、一年を通してベテランが力を発揮できなかったのが、今の巨人の弱さだろう。若手の実力者も期待通りの働きが見られなかった。クローザーの大勢はWBCのジンクス?で、調子が上がらないままだったし、岡本も見掛けはHRキングが確実だが、41本塁打にしては93打点と物足りないのは、本人だけのせいではなく1・2番が固定せず安定しなかったせいでもあるが、仮にチャンスが巡って来ても得点圏打率.241では4番としての迫力に欠ける。チーム本塁打数はリーグ断トツで、本塁打を畳み掛ける大味の試合は出来ても、1点が遠い試合が多かった印象がある。
巨人は過去、二年連続でBクラスになったことが一度だけある(2005年の堀内監督が5位、引き継いだ原監督が翌2006年に4位)そうだが、原監督は、我慢して若返りを図って来たとは言え、このまま浮上しなければ、昨季の4位に続いて同一監督で二年連続Bクラスという球団史上初の汚点を残すことになるという。このチーム事情からすれば本望なのかも知れないが・・・
そんな傷心の私を癒してくれたのは、今年も、海の向こうの大谷翔平だった。WBCの活躍のあと、2年連続の開幕投手など、投打でフル回転したメジャー6年目は、しかし、レギュラーシーズン25試合を残したところで打ち止めとなった。数字を並べてみれば、あらためて目を見張るものがある。特に打者として135試合に出場し、497打数151安打、打率.304、44本塁打、95打点、20盗塁、三年連続規定打席に到達し、初のシーズン3割をマークした。OPSに至っては現時点で両リーグトップの1.066である。投手としては23試合132イニングを投げ、10勝5敗、防御率3.14、167奪三振、WHIP1.06、被打率.184と決して悪くはなく、大リーグ史上初の「2年連続2桁勝利&2桁本塁打」「10勝&40HR」を達成したが、規定投球回到達には30イニング足りなかった。選手の貢献度を表す指標「WAR」では、両リーグトップの「10.0」をマークし、ア・リーグでは2位のシーガー(レンジャーズ)に3もの差を付けて断トツだ。チームとしては、地区優勝・プレーオフ進出の可能性は完全消滅し、ア・リーグ西地区4位も確定している。ジ・アスレチックの記者は「野球界のために、これがオオタニとエ軍の決別であることを願う」と題する記事で、「エ軍は彼をだめにした。勝ち越しシーズンを一度も経験させられなかった。彼にはもっといい場所が相応しい」と書いた。確かに感覚的には今年15勝くらいしていてもおかしくないほどの活躍だったと思う。
暗転したのは8月23日(日本時間24日)のことだった。投手として先発したが、右肘に異変を訴えて2回途中で緊急降板し、試合後の検査で、右肘内側側副靱帯損傷と診断された。その後、打者に専念していたが、9月4日(同5日)の本拠地・オリオールズ戦前に行った屋外でのフリー打撃で右脇腹に張りを訴えた後、11試合連続で欠場し、15日(同16日)の試合序盤に大谷がロッカーを整理したことが話題になった。翌16日(同17日)に15日間のIL(負傷者リスト)入りが発表され、大谷の夢のようなシーズンが終わった。16-17日(同17-18日)はパーカー姿でベンチに登場し、戦況を見つめる姿が明るく朗らかに見えるのが却って痛々しかった。この日からの敵地での遠征には帯同せず、19日(同20日)に手術を受けて無事成功したようだ。
身体はひと回りもふた回りも大きくなったが、あの超人的な活躍は、想像する以上に身体への負担が大きいのだろう。慶友整形外科病院(群馬県館林市)の古島弘三・副院長は次のように述べておられる。彼の溢れる才能はさすがの彼の身体能力をも超えている、あるいは身体が受け止め切れないと言うべきなのだろうか。
(引用はじめ)
今回はいろんな要素が重なって故障が起きたと思う。
まず、ほぼ毎日出場する中で蓄積した疲労が大きい。投手でなく野手で出場しても、バットにボールが当たる瞬間にグリップを握って力が入る。練習でも負荷はかかるから、疲労が回復しないまま積み重なる悪循環になっていたのではないか。
多投していたスイーパーを含むスライダー系の球種にも原因があるとみている。他の球種と比べて前腕の内側に負担がかかりやすい。直球も球速160キロ台を計測するだけに、他の投手よりも負荷はかかりやすい。
肘全体にかかる力のうち、骨が2割、筋肉が3割、靱帯が5割くらいで支えているとされている。疲労によって筋肉の力が弱まれば、その分靱帯に負担がかかる。元々柔軟性があり、体の使い方が上手な大谷選手でなければ、もっと早くに痛めていただろう。
(引用おわり)
実は、遡ること20日前の8月3日(同4日)の試合で、右腕と指の痙攣により4回でマウンドを降りると、試合終了直前、ベンチに座っていた大谷は、茫然としたまま瞬きを繰り返し、その目は潤んで、今にも涙がこぼれ落ちそうなのをこらえていたそうだ。その感傷的な様子がSNSにアップされると、“大谷が泣いた”と話題になったという。本人は既にこのとき、思うところがあったのかも知れない。
ここに来ての大谷ロスは大きいが、二年振りのMVPと日本人初の本塁打王に期待したい。
巨人の話に戻ると、それでも後半には辛うじて先発投手で山崎伊織、野手で門脇や秋広など、期待の芽が出て来た。浅野という若武者も元気一杯。二度あることは三度あるのではなく、三度目の正直となることを(私の心の平穏のためにも 笑)切に願う。