米大統領選の討論会があったが、上智大の前嶋和弘教授は、二人の話は「終始全くかみ合わず」、今回の討論会は「大統領選の行方を変えることはなく」、今後の展望については「大接戦になるだろう」と総括された。
昼のNHKニュースは、ハリス氏から歩み寄って握手し、トランプ氏は討論会中、ハリス氏の顔を見ることがなかったと伝えた。CNNは「トランプ氏のチームと共和党員が司会者を非難し始めている」と伝えた。「司会者はトランプ氏の発言について事実確認をしている一方でハリス氏についてはしておらず、ハリス氏にはより柔らかい質問をしていると主張している」のだそうで、これは「トランプ氏の支持者らが、トランプ氏がこの討論会で『勝利』したと考えていないことの表れ」だと指摘した。確かにいつもの根拠のないハチャメチャな自信満々さが感じられない。
先週には、トランプ氏とバンス副大統領候補は、民主党候補側から「weird(変な人)」呼ばわりされて、予想以上に感情的に苛立っているとの観測記事もあった。
そもそも相手にレッテルを貼って喜んでいたのはトランプの方だった。
- Crooked Hillary(邪悪なヒラリー)
- Low energy Jeb(低エネルギー・ジェブ)
- Lying Ted(嘘つきテッド)
- Sleepy Joe(寝ぼけジョー)
- Crazy Kamala(クレイジー・カマラ)
- Laughing Kamala(爆笑カマラ)
まるで小学生である(微笑)。不動産ビジネスあがりで、価値よりディールを好み、「アプレンティス」なるリアリティ番組で、型破りで独善的で過激で詰めが甘く論理に飛躍があり予測不可能な言動で名を売って、大阪弁で言うところの「いきり」そのものである。「いきってる」というのは「粋がる」「調子にのる」「格好つける」というほどの意味で、ヤンキーのお兄ちゃんが使う以外には主にそのような小学生に与えられる称号で、だいたい周囲から浮いている(微笑)。
これまで言論空間ではトランプ氏に関してもっともらしく複雑な人格分析が競われて来た。複雑な形容詞なら、本人は褒め言葉と受け止めるかもしれない(そこが「いきり」の本領)が、それに比べて、「weird」は素朴な庶民感覚そのままに、小難しい論理や子供じみた感情は抜きに、何の誤解もなくストレートで、それだけに威力があるのかも知れない。まあ、本人は攻撃好きだが逆に攻撃されることに慣れていないだけかも知れない。
国取り合戦で言えば、ブルー・ステイト(民主党優位)とレッド・ステイト(共和党優位)を除くスウィング・ステイト(接戦)7州が帰趨を握ると言われる。同様に政策論争で言えば、それぞれの岩盤支持層の間にある無党派層の取込みが焦点だと言われる。ハリス氏個人は、移民政策では急進左派サンダース氏より左寄りの寛容な姿勢を示し、気候変動対策案「グリーン・ディール」の起案者の一人だったが、バイデン政権が推進して来たような、より穏健な政策を主張するのだろう。民主党内では、必ずしもハリス氏を支持していなかったが、トランプ氏に大統領の座を渡すくらいなら、一致団結した方がよい、というような流れが出来たが、この感覚を無党派層にまで広げられるかどうかが鍵になるのだろう。