米時間19日(日本時間20日)のマーリンズ戦で、大谷翔平選手が自身初の3打席連続HR を含む6打数6安打10打点4得点2盗塁の大暴れで、待望の「50-50(50本塁打&50盗塁)」を達成し、記録を「51-51」まで伸ばした。場所は、昨年のWBCで侍ジャパンが準決勝と決勝を戦い、大谷選手が胴上げ投手となったローンデポ・パークだった。地元ドジャー・スタジアムではなかったが、これも何かの因縁だろうか。
それにしても、記録を狙う緊張のキの字のカケラも見せなかった。このあたりはイチローにも似て、数字は結果として後からついて来るものでしかなく、あくまで自分が納得する野球が出来るか、勝利に貢献出来るか、が重要のようだ。私のような素人からすれば、それだけで偉大なる境地だ。残り10試合のどこかで畳み掛けるかも知れないと、心の片隅で思わないではなかったが、まさかこんなに早いタイミングで、さっさと方をつけてしまうとは思いも寄らなかった。いつも良い意味で裏切られてしまう、凄い選手だ。
実力通りの記録づくめで、1試合で5安打以上、複数本塁打&複数盗塁を記録した初めての選手だそうだ。1シーズンで少なくとも1本塁打&1盗塁した試合数を13として、伝説のリッキー・ヘンダーソンが持つ史上最多記録に並んだそうだ。ナショナル・リーグのHR王も間違いなさそうだ。かつては9月に入れば勝負してもらえない場面が多かったものだが、今回は打つことに専念しているから伸び伸びと走って盗塁も多くて、相手投手にしてみれば、勝負を避けたところでスコアリング・ポジションに置くことになるから痛し痒しで、勝負せざるを得ないのかも知れない。これほどHRの機会が多い中で、これほど盗塁が多いというのは、あらためて驚きである。
私が敬愛する江川卓氏によると、投手目線で打球の角度を見れば、これはセンターフライだと分かるらしいが、それが大谷選手の場合はホームランになるのだそうで、それだけスイング・スピードが速いのだろうと解説される。MLBでは余り内角を攻めなくて、大谷選手のホームランも真ん中やや外寄りが多いらしく、江川氏が得意とするインハイにどう対応するのか、投げてみたいと語っておられた。そう思わせる打者のようだ。
これでドジャースは今季のポストシーズン進出を決めた。大谷選手はこの日がMLBで865試合目、これはポストシーズンに出場したことがない現役選手、また負傷者リスト(IL)に入っている選手の中で、最多なのだそうだ。大谷選手としては記録よりこちらの方がよほど嬉しかったようだ。世間では個人の記録に湧くが、一人、大谷選手だけが冷静にポストシーズンを見据えているのかもしれない。勝つということ。これこそ野球少年の原点ではないか。大谷選手が記録以上に愛される所以だろうと思う。気が早いが、一人の偉大な野球少年のワールドシリーズでの躍動を今から楽しみにしている。